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第8話
ドアの外は暖かく太陽がポカポカとしていた。
幼稚園児がクレヨンで思い思い描いたようなパステルカラーの世界が広がっていて、先の方には市場でもあるのだろうか、人の活気がうかがえる。
ドアを外側から見ると驚いたことに、ドアは建物にくっついているわけでなくドアだけで独立して忽然と立っていたのだ。ドアの裏側をのぞいてみたが特にこれといった何かがあるわけでもない。
ドアを再び開いて中を覗くと、そこには先程と変わらない真っ白な部屋があり脚の長い椅子があり、洗濯機が鼓動をたてている。
ともあれ道の先に人がいるということは確かであるので進んでみることにした。
私が立っていた場所はいわゆる歩道から少し外れた場所で、歩道と見える場所はしっかりと舗装されていて、そのまわりには並木が続いている。
一歩進むごとに市場の方から聞こえる活気を強く感じるようになってきた。周りを見渡しながら歩いていると何かにつまづきこけそうになってしまった。しかしその時私の目に驚きのものが映し出された。
道路の割れ目から生えている植物から硬貨のようなものが生えてるのである。
膝を地面につけ、その植物らしきまのを摘み取り見てみた。茎の部分はたしかに植物である。しかしその上に生えているのは花ではなく硬貨だ。
模様こそ日本円ではないが触った感じも見た目もまるでどこかの国のお金である。あたりをもう一度見渡してから、硬貨の部分だけを切り取りポケットに入れておくことにした。
ようやく人が集まる場所の入り口らしき場所に辿りついた。
マトリョシカを覗いていきなり飛ばされた世界だなのだから、そこにいた人影は有象無象の姿をした宇宙人であった。なんて事も想像していたが、そこにいたのはいたって普通の人間。
それも皆、どこか幸せそうである。フワフワと言えばいいのかキラキラと言えばいいのか、とにかく私がいつも駅やら大学やらで目にしている、充実していようといまいと関係なく死んだような目をした人達とはまるで違う。そんな目を幸せそうな目をした人間達であったのだった。