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第7話

驚いたことにそのマトリョシカの中は空っぽだった。 店内が薄暗いというのもあるがそのマトリョシカの中はまるで底が見えないほど真っ暗である。暗すぎるのである。 蓋を開け、下半分だけのマトリョシカを顔にすこし近づけたその時、真っ暗闇の中にポツンと小さな光が生まれたかと思うと、その光はたちまち大きくなって目を開けていられないほど眩しくなった。 閉じた瞼をとおして、光がだんだんと薄くなっていくの感じた。なんだったんだ、まったく。 目を開くと私は何もない真っ白な部屋に1人で座っていた。一体全体何が起きたのか分からない。 私はどこか知らない場所にワープでもしてしまったのか。とりあえずあたりを見回してみる。 作りは6畳ほどの部屋で壁も床も天井も綺麗な真っ白である。窓はなく、部屋にはあるものといえば私が今座っている脚の長い椅子、うすく黄色がかった古い木のドア、そして白地に少しの黒色の組み合わせの洗濯機が1つあるだけである。 洗濯機は何かを洗濯しているのか、心臓の鼓動のように一定のリズムで動いている。 どうやら携帯電話も財布もバーに置いてきてしまったらしくポケットには今日の昼に行ったカフェで使おうと貰ったが実際には使わなかったガムシロップが1つ入っているだけであった。 この部屋の中にはもはや特に観察するようなものもなく、この現状をどうにかするにはこのドアの向こうに行ってみるしかないようである。 普通、いきなりこんなような場所に何も持たずに飛ばされてしまったら人は焦るだろう。 しかし私はあの堕落しきった日常にうんざりしていたためか、新しいゲームを買ってもらった子供のように少しワクワクしているぐらいであった。 私はドアに一歩づつ近づき、ドアノブを力を込めて回し、外に押し出した。
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