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第5話
マトリョシカは私をじっと見つめている。目が合った気がしたのは気のせいだろうか。そんなことを考えているとマスターが話しかけてきた。
「それ、気に入ったんですか?」
「あ、いえ、まぁ置いてあったんで。」
マスターは手に持っていたシェイカーを一度棚に置き、鼻の頭を少し触ってから話し始めた。
「僕はね、マトリョシカが好きなんです。だからこの店の名前にもなっているのですが。
マトリョシカは一番外側にある人形開ければその中からまた人形が、そしてその中にはまた人形、さらにその中にも人形、というようにいくつも人形が重なっているのは知っていますね?私はどうもね、これが僕たち人間のように感じるんですよ。
最初は1人の人間でも、思い切って蓋を開けてみれば他の誰かと繋がることができる。そしてその誰かも他の誰かと繋がっている。そしてその誰かも。そんな風に感じるんです。
だから僕はこうして自分の蓋を開けて人と関わる仕事をしているんです。
蓋を開けて中に入っているものは、その人の人間性なのか宝物なのか、はたまた記憶なのか。それは人によって違うと思いますが、蓋を開き、心を開くとことで何かを見つけることができ、何かを得ることが できると思うんです。」
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