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第13話「生成」
ウルは外へ飛び出す。
メイルは「やれやれ」と言うものの、引き止めはしなかった。
「出てこいって! 俺が相手になってやる!」
「バカ! わざわざ相手を呼び出してどうする。今の僕たちに、あの男と戦う術はないんだぞ」
「さっき話してたじゃないか。コアだ、修業だって」
「まだ僕はできない」
「早くしろって。いつまた現れるか知れねえ」
「簡単に言うんじゃない。そんな簡単じゃないぞ、核 は」
「何弱気になってんだって。昨日、俺に偉そうに言ってただろう。『僕に不可能はない』って」
「うるさい。事情が変わったんだ」
「ふーん。安い自信だな。本当にプライドが高いだけの口だけ野郎だったわけか」
メイルの拳が、ウルの目前で止まる。ウルは微動だにせず、メイルは力を抜いてはいない。メイルの拳を止めたのはダイだった。
「怒りに任せて力を振るう。正直、彼の言う通りだ」
「ダイ!」
「相手の動きを封じるのが、俺の核 の能力。その気になれば、お前の心臓に穴を開けることだってできる」
ウルが先ほど使っていた棒を得意気に振り回すダイ。彼の目は本気だった。メイルは奥歯を噛み締めながらも渋々引き下がる。
「悪いね、俺の弟子が。詫びをする」
「いいって。俺にも落ち度はある。お互いカッとなっちまっただけって。ありがとう、友達を止めてくれて」
ウルが頭を下げた。それを見たダイは面を食らった。同い年の人間に頭を下げられたことなど初めてだったからだ。対応に困ったダイは思わず頭を下げる。
そんな二人を見て、カッとなっていた自分が恥ずかしくなるメイルであった。
※ ※ ※
宿で眠っていたティタだったが夕方には目を覚まし、ショウのコーヒーを飲みながら寛いでいた。
「すっかり元気そうで何よりだよ。お嬢ちゃんに万が一があったら、ワシは生きた心地がせんもんの」
「大袈裟だよ、ショウさん。私、結構身体は丈夫なんですから」
ティタはコーヒーを飲み終えると身体を動かし始める。じっとしているのが苦手な性分なのだろう。
「実はね、私、夢を見たんだよ。階段が無くて困っているところに私が現れて、ちょちょいのちょいで階段を作っちゃうの。夢とはいえ、感謝されるのは嬉しかったよ」
(階段を作った……じゃと!?)
ショウはティタの手を握りしめて考える。ティタの瞳は変わりなく眩しい。
「お嬢ちゃん。もしかしたら……もしかしたらじゃ!」
「はい?」
何かを確信したショウは、ティタの手を握ったまま外に出る。おもむろに石を拾うと、ティタに石を差し出した。
「な、何ですか?」
「お嬢ちゃん。この石を砂利にしてみるのだ」
「へ? いきなり何を?」
「さあ、騙されたと思っての」
ティタは石を握りしめる。ショウの言っていることには意味がある。そう信じて。
ティタの掌に違和感が生まれる。さっきまでとは違った感触が。
「こ……これって!?」
パラパラと落ちていく細かい石。ショウに言われた通りにティタは実行できたのだ。
「成功じゃよ、お嬢ちゃん! それがお嬢ちゃんの核 の能力――生成じゃ!」
「生成?」
「一から、新たな一を作れる能力。お嬢ちゃんは石から砂利を作り出したじゃ。これからもっと修業を重ねれば、もっともっと凄いものを生成できるのじゃ!」
「私の……能力!」
ティタとショウは両手を繋いで喜びあう。そんな二人は、きっと端から見れば祖父と孫だろう。
夕陽が優しく二人を照らしていた。
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