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第11話「目を開ける者、閉じる者」
一夜明け、ティタはショウと共に建物の屋上へと来ていた。
「高い場所の風は気持ちいいの。そうは思わないかね? お嬢ちゃん」
「はい。なんというか、風に新鮮さを感じます」
「ほう。面白い例えをするの。ワシにもいい感性があれば、いい例えができるのだが」
蓄えている髭を触りながら考えるショウ。
風を受けるたびにティタの茶髪が揺れる。静かに時間だけが過ぎていく。
「あのー」
「……おっ!? こりゃあすまない。お嬢ちゃんの修業のために来たのにの」
「私は何をしたらいいの?」
「お嬢ちゃん、目を閉じて。立ったままだよ」
「わ、分かりました」
ショウに言われた通り目を閉じる。彼女の視界は真っ暗になり、情報は音だけになる。
「お嬢ちゃん、何か見えたかね」
「い……いえ……何も見えないです」
「そう。それが当然の結果じゃ」
「え?」
ショウの考えが分からず困る。
その様子を見ながら、ショウは笑みを浮かる。
「そのまま両手を合わせてごらん」
言われるがままに両手を合わせるティタだが、状況は一切変わらない。いくらショウの指示とはいえ、訳の分からないことを続ければ疑問が湧く。
「この行為は修業になってるの?」
「どういうことかな?」
「私、何か変化が起きると思っていたのにまったく何も変わってない。流石に疑問が湧きます」
「お嬢ちゃん。そこまで言うのなら目を開けて構わないよ。両手も離していい」
ショウの許しを得たティタは目を開けようとする。が、目は開かず、合わせていた両手も離れない。
「ど、どうして!?」
焦りからか額に汗が吹き出す。自分の身体なのに自分の思い通りにならない。ティタはどうすることも出来ずにしゃがんでしまう。
「諦めてしまうのかね。そのままでは、一生不自由なままだ。それでもいいのかね」
「嫌です……こんな……!」
「諦めては駄目だ。お嬢ちゃんが諦めたらそれまでだよ。ワシの顔を見てみなさい」
そう言われても開けない目。離れない両手。その状況に追い込まれ、遂にティタが涙を流した。
「……わ……たし」
ティタの視界に光が戻る。両手も離れて自由になる。
訳が分からず混乱するティタの頭を優しく撫でたショウは、ティタに笑顔を見せた。
「お嬢ちゃんの涙が、全てを溶かしてくれたようだ。よかったの」
「いったい、何がどうなって!?」
「すまんの。核 を目覚めさせるのに手っ取り早い方法じゃったんだ。けど、まさかお嬢ちゃんを泣かせることになるとは思わなかったんだ」
「私なら大丈夫です。それで……」
「無事に核 を得ただろう。得るだけなら苦労は少ないんじゃ。大変なのはこれからだがの」
(私、核 を習得したの? 全然実感ないよ)
「……なにやら下が騒がしいようだ。誰かが暴れているのかね」
「え!?」
「安心なさい。ワシが守ってあげるからの」
「はい」
暫くすると地上は静かになった。騒ぎの元凶が姿を眩ませたらしい。
そのことを確認したショウは、ティタを連れて地上に降りた。
「なるほどの。左目を閉じた少年がの」
「物騒だよ」
「心配ない。ワシが守る」
「はい!」
今一度そのことを互いに確認する二人。二人はそのまま買い物を済ませることにした。
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