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第9話「謎の少年」
昼食を済ませ宿を取ったウルは、街をふらついていた。
「ルーのご飯を買っとかないと」
猫のエサが売っている店を探して右往左往し、なんとか猫缶を見つけて買い物を済ませる。
ルーの喜ぶ顔を思い浮かべながら歩いていると、子どもが空を見上げていた。気になり訊くと、どうやら風船が建物に引っかかって困っているらしい。ウルはその建物の主人に理由を話して棒を借り、風船を取ってあげた。
「ほれ。もう離すなよ」
「うん! ありがとう、お兄ちゃん!」
子どもが礼を言って駆けていった。
ウルは、“お兄ちゃん”という言葉に優越感を覚える。
「さあて。ルーが待ってるって」
宿の方向に歩いていくが、そんなウルの前に突然、人が降りてきた。左目を閉じた少年が。
「危ないだろ!」
「…………」
ウルの言葉に耳を貸すつもりなどないのか、アクロバティックな行動を取りながら、少年は街中を進んでいく。
「テメエ、聞いてなかったのかって!」
少年を走りながら追いかけるが、超人的な動きをしている少年になかなか追いつけられないでいた。
「人の迷惑も考えろって!」
ウルが、先程借りた棒を少年に投げる。棒は少年の横をすり抜け落下した。
「……しつこい」
「ようやく耳を傾けやがったか。テメエ、普通に歩けって。あんな移動をされちゃ、街の人たちの迷惑だろう」
「迷惑だと?」
「そうだ。ここは公園じゃないんだ。そういうの考えたことないのか」
「くだらない」
「んだと!」
「オレがどこをどう行こうがオレの勝手だ。誰かに指図される筋合いはない」
少年は棒を拾うと、閉じていた左目を見開いた。少年の左目は金色に輝いている。
「ただの棒か」
少年は棒を投じた。棒はウルの腹部に抉りこむ。
一瞬の出来事に動揺するウル。腹部の痛みに耐えかねて膝をつく。
「避けなかったのか、はたまた避けられなかったのか。どちらにせよ大した奴じゃない。失せろ」
「うぅ……!?」
ウルは、少年の後ろ姿を眺めていることしかできなかった。悔しさをバネに痛みを堪え立ち上がる。
転がっていた棒の、少年が握っていた側が凹んでいた。
(何者なんだ!?)
ウルは痛みに耐えながら、宿屋へ歩いていくしかなかった。
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