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第8話「師事」
ティタを乗せた馬車は、無事に街へと着いていた。
老人はティタを宿屋に寝かせ、椅子に腰かけている。
「おや」
「あの~。私、寝ちゃったんですか? だとしたらごめんなさい」
ティタは起きてくるなり詫びをする。老人は大丈夫だと反応して立ち上がった。
「お嬢ちゃん、コーヒーは飲めるかね?」
「甘いのなら」
「甘いのだね。承ったよ、座っていなさい」
老人の、人の心を和ませるような声にティタは安心感を覚えた。言葉に甘え椅子に座ると、コーヒーの香りが部屋に漂いリラックスする。
「オジサン、毎日コーヒーを飲むの?」
「こんな老いぼれの唯一の楽しみだ。毎朝、コーヒーの香りを鼻で楽しみ、苦味とコクを舌で楽しむ」
「何かいいですね、そういうの」
「まあ、大目に見てくれ」
老人はティタにコーヒーを差し出すと椅子に座る。向かい合う老人と少女。端から見れば祖父と孫だろう。
ティタは、差し出されたコーヒーをゆっくり飲み始める。ゆっくりと目を閉じてコーヒーを楽しむ。
「ところでお嬢ちゃん、実は話があるのだ」
「何ですか?」
「お嬢ちゃんは、核 というのを知っておるかな?」
「いえ、初めて聞きました。その……核 って何ですか?」
「むー。簡単に言えば、人に眠っている力かの。その力を核 と言うんじゃ」
「……それと私に何の関係が?」
「お嬢ちゃんはまだ若い。核 を目覚めさせるには適したな年齢だ。お嬢ちゃんには可能性が眠っている。ワシはそう思うのだ」
「オジサン、何者なの?」
「ショウという名のの老人だよ」
「ショウさん。私にどんな可能性が?」
「それは分からないの。核 が目覚めないことには何とも言えんのだ」
「そうなんだ」
ティタは考える。自分にショウが言うような力が眠っているのなら、是非とも目覚めさせたいと。しかし、本当にそんな力が自分に眠っているのかという疑問も湧いた。
「ワシは、人に物事を教えるのは得意でな。お嬢ちゃんが望むのなら、ワシが手助けをしてあげれるが」
「私、出来るのかな?」
「お嬢ちゃん次第だの」
全ては自分次第。それを聞いたティタには、一つの答えが出ていた。
「ショウさん。私、やります。やってみたいの! 今の自分に鞭を打ってでもできることがあるのなら」
「そうか。分かったよ。お嬢ちゃんの熱意にワシも応えようではないか」
「よろしくお願いします!」
ティタは頭を下げる。今まで人に頭を下げたことはなかった。けれど、そうまでしてでも試してみたかったのだ。ティタの瞳に一筋の光が差したのである。
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