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第6話「老人の目」

 馬車に乗せてもらったティタは、そのまま村に着いていた。風車が風を受けて回り、村に放たれている馬は元気よく駆けている。 「どの馬も大きい!」 「馬は大きいほうが映えるのだ。自然の中を駆けている馬ほど、自然を美しく際立たせるものだ」 「馬が主役なんだ」 「ワシは馬が好きだからね。どうしても馬を中心に考えてしまうのだ」 「オジサン、この村にはオジサン以外にも馬を好きな人はいるの?」 「生憎この村は過疎化の境地でね。もう住んでいるのはワシと数人だけだ。囲いが無くても安心なのはそれが理由でね。ワシの言うことには絶対に従うのも理由だが」 「なんか寂しい。こんなに緑豊かなのに」 「ワシは今のままで充分だよ。馬と共に余生を過ごせれば」 「そうなんだ。私なんかでは難しいよ」  ティタは馬に触れる。馬の毛に触ると自然と心が落ち着く。ティタは自然と馬を楽しんでいた。 「ワシ以外の人間に触られるとは。お嬢ちゃんは動物に好かれるのかな?」 「あまり意識をしたことはないかな。でも私、動物は好きです。たとえ言葉は通じなくても、心で通じあえることを実感できるから」 「素晴らしい言葉だ。とても十歳の少女とは思えない」 「お世辞が上手だね、オジサン。馬車に乗せてくれただけでも嬉しかったのに。更に嬉しさが倍増だよ」 「それは褒めがいがあるね」 「また褒められちゃった」  舌を出して照れるティタ。そんなティタのお腹が空腹を知らせる。 「おやおや。お嬢ちゃんの胃袋が泣いているようだ。早く食べ物を納めてあげなければの。馬車に乗りなさい。もう少し先に栄えた街がある。そこで食事を摂るといい」 「ありがとうございます」  再び馬車に揺られながらティタは目を閉じる。  自然の香りが鼻を突き、馬車の不規則な揺れが眠気を誘う。そんな贅沢な時間を過ごせることにティタは喜びを感じていた。 (街にいたときには絶対に味わえなかった感覚だよ~。私、幸せ者だ) 「お嬢ちゃん、街に着いたら……」 「…………」 「……ふふ。お眠りかな。三年間の長旅の初日と言っていたか。眠れる時には眠るがいい。旅の過酷さを味わう前にの」  老人の皺に、重ねた年月を感じられる。ティタの旅の行く末を案じているのが端々に感じられた。 「人と人との出会いには意味がある。これも何かの縁だろうの。お嬢ちゃんにワシがしてやれること。若者ならば乗り越えられる筈だの……(コア)の目覚めをの」  老人の目に、一筋の光が宿った。
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