3 / 130

第3話「カラスと馬」

 ウルとメイルと別れてから十数分。  難なくティタは森を抜けていた。抜けた先にあったのは、小さな集落だった。 「静かだよ」  人の姿や声もない集落。そのあまりに静かな光景は、ティタに不気味さを感じさせるのには充分だ。 「あのー、誰かいませんかー?」  ティタが呼びかけるも応答なし。よく見ると、家の窓は閉めきられておりカーテンで覆われていた。  集落の上空ではカラスが大量に飛び回っており、鳴き声が響いている。 「……長居は無用のようね」  ティタは逃げるように走り出す。  しかし、カラスの鳴き声は遠くならない。堪らずティタが後ろを振り返ると、カラスの群れが追ってきていた。 (なんでカラスが追ってくるのよ! 私を取って食おうとしてるとか!? 違う! そんなわけない。理由があるはずだよ) 「「カー!!」」  走りながらも思考を止めないティタ。そして一つの結論に辿り着いた。 「欲しいのは、これ……?」  髪飾りを放り投げる。すると、カラスの群れが一斉に髪飾りに群がった。  ティタが付けていた髪飾りは、太陽に照らされていたことでカラスにとって光り物に見えていたのだ。 「お母さんからの大事な髪飾りだったのに。出だしから災難だよ」  肩を落とし速度を落とす。ティタの額にはうっすら汗が滲み出ている。彼女が全力で走ったからだろう。 「ウルとメイル、大丈夫かな。何でもなければいいんだけど」  背負っていたリュックを降ろして背中を預ける。  これからどうなってしまうのだろうか。ティタに不安が一気に押しかかる。だが、その不安はすぐに消えていった。ティタの視界に希望が見えたからだ。 「馬車だ! あれに乗せてもらえば歩かなくて済むよ。すみませーん! 私を乗せてもらえませんかー!」  水を得た魚のように駆け出す。カラスとはうって変わり、今の彼女には馬車を引いている馬が愛しく映るのだった。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!