2 / 130

第2話「一人と一匹」

「なんだよこれー!」  ティタとメイルと別れてから一時間。  変わることのない風景が、十歳のウルには堪えるようだ。さっきまでの威勢のよさは消えていた。 「俺、くじ運悪いしなあ」  長閑と言えば聞こえはいいが、悪く言ってしまえば殺風景。ウルの気持ちも分からなくはない。しかし、見晴らしがいいということは、危険をいち早く察知できるのだから、ウルにとって悪い道ではなかったりする。 「街どころか集落もないって。ああ! 退屈だあ!」  腰の水筒を開けてがぶ飲み。自棄酒ならぬ自棄水といったところか。しかもこの行為がウルを追い詰めることになろうとは、ウル自身知るよしもない。  それからもウルは歩き続け、遂に力尽きた。出発から三時間。足に限界がきていた。 「しゃーねぇー。何か実ってるのを食うか」  道から続いている森を抜ければ、街に辿り着けるという希望を胸にウルは森へと歩み出す。まだ陽は昇っているはずなのに、森の中は暗闇だった。 「太陽の光が入らねえからよく見えないって」  生い茂る樹木を避けながら進んでいく。ウルの疲労も限界を迎えていたが、空腹も限界を迎えていた。ようやく見つけた実をもぎ取ると、一心不乱に頬張る。 「……危なかった……。さっき水を一気に飲んじまったから、喉が渇いて堪んなかったぜ。さて、足が痛くて歩けないし、仕方ないけど野宿だな」  実のなっていた木にもたれると、疲れと満腹感で眠気に勝てず眠ってしまう。そのため、森に潜んでいる獣の存在にウルは気づかずにいた。  そして気付けないまま、ウルは夜を迎える。月の光は森に届いていない。 「……寝ちまった?」  寝ぼけけていたが、夜風の冷たさで目を覚ます。同時に気配を察した。夜の森は静かだ。枯れ葉を踏んだ音ですら大きく響く。ウルは静かに立ち上がり、摺り足で気配の方に進んでいく。 (猛獣の類いか?)  確実にウルの方へ“音”は向かって来ている。それを感じ取っていたウルは歩みを止めた。 (俺の匂いを嗅ぎ付けて来るか。それとも諦めて去っていくか)  ウルは思わず唾を飲み込んだ。“音”は離れていく。ウルは一瞬気を抜いてしまう。その瞬間、ボトッと音が立った。  ウルの心臓の鼓動が高鳴る。熟しすぎた実が重くなって落ちたのだ。離れていた“音”が反応して迫ってくる。  枯れ葉が軋む音と共に“音”の正体がウルの前に現れた。その正体は、猛獣とはかけ離れた姿で、殺気とも縁遠い姿をしていた。 「にゃ~」 「……猫……!?」  ウルは緊張の糸が切れたのか、その場に座り込む。  そんなウルの足元に身体を擦り付ける猫。月明かりが夜空を照らしているなか、ウルは猫と共に一夜を越したのだった。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!