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第50話「繋がる腕」
異空間から出てきた二人。ギルは穴を出現させて、ウルを囲む。穴から無数の刃が飛び出る。ギルはそれを見て高笑いした。
「傑作だ! 流石に不意討ち過ぎたかあ?」
※ ※ ※
「いいか! これ以上、軍の面目を潰すことは許されん! 一致団結し、指名手配犯を捕らえるのだ!」
「「ハッ!」」
応援に来た軍隊が、足並みを揃えて戦場へと駆けつけ、銃を揃えて構える。その銃口の先には指名手配が居た。引き金が引かれる。一斉に銃弾が発射された。
「何をやっているのですか! あそこには民間人もいるんです!」
「なんだ。どこの者だ?」
「ロイズ司令部・ライド隊所属、キリナ少尉です。今、申した通りです。あそこには民間人の少年がいるんです。銃撃を止めさせてください」
「ロイズか。違う司令部の人間が口を挟むな。我々は、我々の作戦を実行するまでだ」
止まることのない銃声。それは無情にも、ギルと戦っているウルにも向かっていた。
※ ※ ※
「なんだ? 何かが横切った?」
落下していくウル。飛べないことが逆に幸いし、ギルの攻撃を免れていたが、軍の銃撃に襲われていた。
「うっ!?」
肩に銃撃を受ける。肩だけではない。腹や足に銃撃を受け、力なく落ちていく。そのまま落下すれば、死に至るだろう。
(……痛てえ……)
朦朧 とする意識。もう目を開けることはないだろうと悟った。が、その心配は微塵に消えた。
(あれ?)
「大丈夫なのだ?」
ウルの顔を覗く少女。その表情は、心配をしているというよりも、どこか不思議そうな顔をしている。
「お前は、誰だって?」
「ボクはメル。メイルの彼女なのだよ!」
「メイルの!? あ、いや……そんなことより」
「大丈夫なのだよ。ボクの能力で防いでいるから」
「能力? お前も核師 なのか?」
「うん。一定時間、自分の周りにバリアを張れるのだよ。今の限界は三分、それ以上は無理なのだよ」
「あとどんくらい?」
「うーん……一分」
飛んでくる銃弾を防いでいるものの、やはり限界なのだろう。バリアが消えかかっていた。それにより、銃弾がウルとメルを掠めていく。
「参ったのだよ。メイルとチューでもしとくのだったのだよ」
「こんなときに何を言っ――」
「――どうしたの……だああ!!」
ウルの左目を矢が突き刺していた。左目から涙のように血が流れている。メルのバリアも遂に消え、絶体絶命の状況に追い込まれていた。
「……何で矢が……」
「軍の仕業なのだよ。容疑者を捕まえるためなら、どんな手段も問わない司令部の軍隊。多少の巻き添えや犠牲も已むなしというわけなのだよ」
「お前だけでも逃げろって。こんなとこに立ってたら確実に死ぬ!」
「メイルの友達を置いてきぼりになんか出来ないのだよ。お姉ちゃんだってそうするはず」
「お姉ちゃん?」
「キリナ少尉は、ボクのお姉ちゃんなのだよ」
※ ※ ※
「うわあああ!!」
「我慢して! 痛いのは分かるけど、今は耐えるの!」
「うっー! 無茶苦茶だぞ、ティタ」
「今のアンタに残された希望よ。ギルの仕業だと思うけど、その無念を晴らしてあげなさいよ。はい!」
メイルの左腕が存在している。しかしそれは違う。ギルによって斬られた他人の腕。ティタが見つけて、それをメイルの左腕と繋いだのだ。
「私の能力じゃ、神経を繋ぐのがやっと。動けばラッキーよ。いい?」
「……上出来だぞ。ありがとう」
メイルは、ウルとメルのところにワープしていく。すると、ティタが倒れこんだ。
「ティタちゃん!」
「あの腕に見覚えがあります。私とウルが、この街で会おうとしていた人の腕に似ているんです。手の甲の傷……あれは……ダイの!」
※ ※ ※
「二人共!」
「「メイル!」」
「なんとか無事、じゃなさそうだな。とにかく離れるぞ」
メイルは、ウルとメルを連れてワープする。ウルの左目の状況に、メイルは目を背けたくなった。
「見なくていいって。傷なんて、見ていて気持ちのいいもんじゃない。それよか腕」
「ティタが繋いでくれたんだ」
「……そうか……」
「いくらなんでも、その目は」
「目まで世話になるわけにはいかないって」
「ティタに気を遣うのか」
「ティタじゃないって」
ウルは第六感で勘づいていた。その腕の主がダイであることを。あえてそれを口にはしなかった。
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