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第47話「異動」

 ウルたちとギルとの戦いから少し遡る。  ウルたちとロイズで別れたライドは、報告のために司令部へと来ていた。 「……以上が報告になります」 「取り逃がしたか。折角昇進させてあげたものを。早速の期待外れだ」 「申し訳ありません」 「まあいい。どうせもう君には関係のないことだ」 「はい?」  ライドに背を向けて語っていた男性が、ライドの方を向いた。目だけで相手を殺せてしまいそうなほどの眼力を放ちながら、ライドに一枚の紙を手渡してきた。 「君にはカムール司令部へと異動してもらう。北の方角の街だから厚着をオススメするよ」 「カムール!? 片道一日はかかるではないですか!」 「おや、そんなに都会(こっち)に用かね?」 「納得いきません!」 「納得してもらわなければ困るよ。私の一声がなければ、君の首は決定的だったのだ。軍服(それ)を着れているだけでも、ありがたく思ってほしいところだ」 「何故ですか!」 「指名手配犯と君は兄弟というではないか。そんな公私混同は見逃せんよ」 「!?」 「何故知っている、という顔だね。軍も落ちぶれてなどいない。身内のことを調べるなど造作もない」 「……わざわざ私を調べたのは何故です!」 「内部から、最近の君への不満が漏れていてね。そんなとき、風の噂を耳にしたのだよ。『ライド大尉は、指名手配犯と繋がりがある』とね」 「誰がそんなことを!」 「……言っただろう……風の噂、と」  男は立ち上がり、ライドに異動を言い渡す。カムールに行ってしまうと、容易くとんぼ返りとはいかない。何度も食い下がるものの、押し切られる形となってしまった。 「くそっ! いったい何がどうなっている!?」  渡された紙を丸める。自分のことを噂として流したのは誰なのかも気になったが、わざわざ偏狭の地に異動を命じてきた上層部も気になった。 (これではギルフォードを追えん! キリナ少尉に協力を……いや、なんだか軍そのものがきな臭い) 「どうった? そんな恐い顔して」 「!? ……なんだ君か、アルン」 「大将の部屋の前でどうったのよ。うん? 今日はキリナと一緒じゃないの?」 「さっきまで一緒だったが。それがどうかしたかい」 「ここ最近、ますます射撃訓練に精を出しちゃってさ。男を作れっても聞き耳持たないの。色々ともったいないって言ってんだけど」 「少尉は少尉で忙しいからな。なかなかプライベートにまで気が回らんのかもしれない」 「それを分かってて引き抜いたあんたも鬼だね。キリナに貰い手が見つからなかったら、責任を取ってあげれば?」 「その点については心配要らなくなったよ。私は異動を命じられたんだ。カムールだよ」 「カムール!? 一日かかるんでしょ。あんたも災難ね」 「朝発って翌朝に到着だ。やれやれだよ」 「そうか……じゃあ簡単にはこっちに顔を出せなくなるってわけね……怪しい」 「うん?」 「どうせ異動を命じるんなら、あんたが昇進するときに命じればよかったんじゃないの? 妙よ」 「私のことを調べあげたらしくてな。指名手配と兄弟であることがバレてしまった」 「そんなの、数日の自宅謹慎とかで済む話。公私混同を避けさせるなら、その件から外せばいいだけ。異動というより、厄介払いに近いわね」 「厄介払い、か」 「指名手配中の何人かは、その捜査が打ち切られているの。あんたが追っている指名手配犯の捜査も時間の問題かも」 「なんだって!」 「しかも、打ち切りは元帥(トップ)の命令。まさに鶴の一声ってわけ」 「それは確かに妙だ」 「まっ、あたしにできることあれば協力するよ。ただ気をつけな。大将クラスは危ないよ」  そう言って立ち去っていくアルン。彼女なりの気遣いだったのだろう。ライドは辺りを警戒しながら、自分の部屋へと入っていった。
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