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第45話「混乱」

 睨み合う二人。街は混乱していた。倒れこむ大勢の軍人たち、逃げ惑う人々。応援に駆けつけた軍人たちは、二人を取り囲むように隊列を成し、一斉に銃を構えた。 「「そこの二人、止まりなさい!」」  大楯を構え、拡声器で呼びかけてくる。攻と守、見事な連携をみせる様はまさに軍隊だ。 「だとよ。邪魔だから始末してやろう」 「テメエのせいで俺まで犯罪者か。巻き添えは御免だ。巻き込むのも御免だがな」 「綺麗事を並べてるんじゃない。オレにかかれば、あんな軍隊の一つや二つ潰すのなんか朝飯前だ」 「……答えろって! なんでショウを殺したんだ!」 「殺したかったからだ」  表情ひとつ変えず答えるギルに、ウルは怒りを増幅させる。今にも飛びかかりそうな様子だ。 「ルワンの殺傷の理由もか!」 「ルワン? ……ああ、あの風車の街か。あんな街でも人殺しは起きるのか」 「とぼけんな! ルワンの殺傷もテメエの仕業だろ!」 「ふざけるな。オレが、あんなちんけな街で殺しをするだと!? 濡れ衣も大概にしろ」  ギルの表情に変化が見えた。ウルは警戒を強める。  軍隊の間をくぐり抜けてキリナが来た。 「それは本当なの?」 「ああ。オレ、無闇矢鱈に殺さないんだ。本当の猟奇的な殺人犯なら、視界に入るやつを次々殺してるだろうな」 「あら……貴方自身は猟奇的ではないと?」 「オレには目的がある。猟奇的なやつとの違いだ」 「人殺しに違いなんかねえ! 殺しを楽しんでいる時点で、テメエも充分猟奇的だって!」 「そうかよ。人殺しに違いはない、か。それじゃあお前も同じになるのか? オレを殺したいんだろうよ?」 「……ちぃっ!」 「ウル君!」  キリナの銃声が鳴り響く。その音がウルの抑制に繋がった。そのまま、空に向けた銃口をウルに向ける。 「ウル君、冷静に。相手の思う壺よ」 ※ ※ ※  逃げ惑う街の人達に巻き込まれて身動きを取れないティタ。キリナから待つようにと言われているが、とても待っていることなどできなかった。 (ウル……それに今の銃声は)  気持ちばかりが先行してもどかしくなる。正直加勢したとして、役に立てる自信はなかった。それでも行かなければならなかった。自分の師匠の仇が、すぐそこにいるのだから。 「ティタ!」  混乱のなか、自分の手を引く誰か。後ろ姿で誰かを判別すると、その引力に従った。 「何が起きている? さっきの銃声もいったい」 「メイルも来てたなんて驚いたよ。ん?」  ティタの視界にメルの姿が入った。見られているメルの方は、なんだか穏やかではない。 「メイル。この女の子はなんなのだよ!?」 「幼馴染だ。それがどうかしたのか?」 「手なんか繋いじゃってさ! 怪しいのだよ!」 「今はそんなことを言っている場合じゃないぞ。ティタ、知っていることを話すんだ」  ティタは、メイルに事情を伝えた。それを聞いたメイルの左目は、金色を強めている。 「やはり無茶を……。左目とウルは、この先だな」 「私も行くよ。仇を討たないと」 「いや。君は彼女を頼む。気持ちは分かるが、彼女の身の安全も確保したい」 「……分かったよ。……気をつけて」  メイルは合図をすると戦場へ駆けていく。その後ろ姿を、不安そうに見送るティタとメル。 「大丈夫。ボクはメイルを信じて待つのだよ」 (不思議な子)  ティタがメルを見ている。初めて会ったにも拘わらず、なんだか油断してしまう雰囲気を感じていた。
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