44 / 130

第44話「向き合い」

「ウル。起きなさいよ、ウル!」 「なかなか返事がこないわね。ウル君、朝が本当に苦手なのね。大尉のところに泊まっていたときも、大尉が相当手を焼いていたらしいもの」  ドアを何度もノックする。何度も呼びかけるも返事はない。ティタは仕方なく苦肉の策に出た。 「起きなさい!」  ドアのノブを(コア)の力で変形させると、一気に室内へと入っていく。案の定、ウルはベッドですやすやと寝ていた。仰向けになっているウルのお腹の上には、ルーが丸まって寝ている。 「飼い主に似るとは言うけれど、朝寝坊なとこまで似なくてもいいよ!」  ウルの耳朶(みみたぶ)を引っ張り、頬を引っ張り……挙句、鼻を摘まんだり。ティタによる目覚まし攻撃に観念したのか、ウルが堪らず起き上がった。 「おはよう。今日もゆっくりなお目覚めだよ」 「……ゆっくり……何時?」 「九時だよ。チェックアウトまで、あと三十分」 「もうチェックアウトかぁー~! 仕方ない、起きるって」  顔を洗いに洗面所に向かうウル。その後をちょこちょこ付いていくルー。飼い主と飼い猫の行動に、キリナはおかしくなってしまった。 「キリナさんの前なのに」 「マイペースでいいわね。ワタシ、ウル君を見習おうかしら」 「キリナさん!」 「ふふ。今のは冗談だけど、ちゃんと自分を持たなければならないのは確かよ。ワタシは職業柄、特にね」  洗面所からバタバタと駆けてくるウル。歯ブラシを加えながら窓を眺める。 「こら! ちゃんと磨きなさいよ」 「くぁんびぃぶぅんばぁ! びぃぶぼぉ!」 「ウル君?」  口を濯ぎに洗面所に戻ったと思ったら、さっさと窓際に帰ってきた。ウルの顔が真剣である。ルーもどこか落ち着いていない。 「ウル……もしかして」  コクッと黙って頷くと、足早にチェックアウトを済ます。その後を必死に付いていくティタとキリナ。 「ティタちゃん。ウル君は!?」 「第六感が働いたんだと思うんです。ウルの向かう先には……ギルがいます!」 ※ ※ ※ 「しぶとい。そんなにオレに楯突いて楽しいか?」 「はあ……はあ……。師匠の仇ー!」 「……金縛り……か。オレに楯突くのも頷ける。しかし、縛るだけでは敵わないぞ? オレには」  ギルの左目が光る。立っているのもやっとな傷を負っているダイの背後に、巨大な穴が発生する。 「瞳術使いを敵に回したのが、お前の運の尽きだ」  巨大な穴へと吸い込まれていくダイ。次々に穴を発生させていくギルは、ダイを穴から穴へと飛ばしていく。身体の自由が利かないダイは、されるがままだった。 「そこの! 指名手配中のギルだな! 手を上げろ!」 「軍の人間か。余計な邪魔を」  ギルを取り囲む軍人たちだったが、ギルが発生させる穴の前では無力だった。吸い込まれては吐き出される。腕や足を折られる者もいた。 「お前には大サービスだ。師匠の元に送ってやるよ!」  穴から武器を取り出すと、それをダイに突きつける。にんまりと微笑むギルに、ダイは恐怖しか感じられなかった。 「……師匠の作った方が……全然斬れそう……だ」 「そうか。試してみようか」  それは一瞬の出来事だった。スパッと、二の腕から下が斬り落とされる。短くなった左腕に、ダイは言葉を失った。だが痛みはやって来る。激しい痛みがダイを襲う。言葉にならない声をあげながら、二の腕から流れ出る血によって赤く染まる半分の腕に絶望した。 ※ ※ ※ 「どうなってるんだって!?」  軍人たちが倒れている異様な光景にウルは目を丸くする。緊張感がウルを包む。 「また会ったな。オレのファン」 「ギル。やっぱ、いやがったか」 「まあいいや。ああ、預かりもんだ、ほれ」  放り投げられる布袋。それを受け取ったウルは、重さで尻餅をつく。それを見たギルは笑みを浮かべる。 「なんだよこれ!」 「開ければ分かる。見るのはオススメせんが」 「はあ?」  ギルの忠告を無視して封を開ける。その中身を見たウルは絶句した。感情の概念が壊れていく。喜怒哀楽のどれにも当てはまらないものがウルから湧き出てきた。激しい感情を炎に変えて、ウルは涙を浮かべながら立ち上がった。 「知っていた“頭”か?」 「ああ」  ウルはギルを睨む。激しい殺意を向け、ウルは戦闘態勢に入った。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!