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第41話「無意識に」
列車に揺られるウル、ティタ、ライド、キリナ。四人の表情は、行きとは違い曇っていた。ギル本人と接触できたにも拘わらず、結局逃げられてしまったからだ。ウルやティタは民間人だが、ライドとキリナは軍人である。国民を守る義務を果たさなければならない立場でありながら、連続殺傷犯を取り逃がしたのだ。二人の立場上、あってはならない失態だった。
「大尉、あまり気を落とすなって」
「気は落ちていない。まあ晴れもしないがね」
「弟……なんですよね。相手が兄弟なら仕方ないですよ」
「ありがとう。少尉以外の女性に励まされたのは久しいか」
「私にはそれくらいしか出来ないですから。同じ核師 でありながら、結局、手も足も出なかったから……」
「はあ? ティタがあのとき槍を俺にくれなきゃよ、ギルが炎に弱いことを知ることは出来なかったって。俺、充分助かったんだ!」
「アンタが言ってくれるなら、私には励みだよ」
ごく自然にティタの手を取るウル。純粋に友達を励ましているウルを見て、思わずキリナは笑ってしまった。
「キリナさん!?」
キリナの様子を見て察したティタがウルと手を離した。
照れているティタを不思議そうにウルは見ていた。いつの間にか、場が和んでいる。
「子供は無邪気でいい。私も、君の無邪気さを見習いたいものだよ」
「どういうこったぁ?」
「あらら? ウル君は自覚なしのようね。ティタちゃん、結構難易度高いかもね」
「キリナさん!?」
顔を赤らめてしまうティタ。その原因の張本人は、全く自体を理解していなかった。
「さて。結果は結果だ。ロイズに戻ったら報告をしなければならない。正式な任務として行っているのだからな。まあ、それは私達の職務だ。君達はどうするかね」
「ギルに会ったのを報告したい奴がいるんだ。まだ街にいるかは分からないけど、一応行ってみる」
「戻るつもりなの!? いないかもしれないよ」
「俺の第六感だって」
「ウルお得意の、だね」
もしいたら、ウルの第六感も大したものである。ティタもウルの第六感を信じている。だからこそ不安もある。ダイに報告だけがウルの目的ではないと感じていたからだ。ウルは、ギルの気配を無意識に追っているのかもしれない。
「ウル。大丈夫……だよね?」
「俺はいつでも大丈夫だって!」
ティタの様子の小さな変化に気づいたキリナは、二人に同行する許可をライドに取った。ロイズでライドと別れた三人は、ダイに会いに行くべく出発した。
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