24 / 130
第24話「名乗り」
「出てこいよ! コソコソと気持ち悪い」
ウルが大声を出す。それでも人が現れる様子はない。ウルは落ち着かず右往左往しながら呼びかける。そんなことを続けること数十分。叫びすぎたウルは息切れを起こしていた。
「気のせいだったんじゃない? そうよ、気のせいだよ」
「俺の第六感が疼くんだって」
「そんなアテにならないのを信じろと?」
「絶対に……絶対にいる」
ウルは勘を信じてその場を離れない。
ティタはウルの勘を信じてはいなかったものの、ウルから離れるのも嫌だったため、ひたすら一緒に待った。
「……執拗なやつらだ……目障りで仕方ない」
「「!!」」
二人の目の前に左目が姿を現した。その左目を見開き、ウルとティタを見る姿はまるで、この世の理を拒絶しているかのようだ。
「希望通り現れてやった。用件は何だ?」
「決まってんだろ! ショウを殺した事だ!」
「……オレが殺ったと言いたいのか……」
「違うとは言わせないって!」
ウルは左目を睨む。今にも飛び出しそうな体勢でいる。
「ウル駄目よ。今は堪えて」
「悔しいが、今の俺にテメエをどうこうなんかできねえ。けどな、今に見てろって! 絶対にテメエよりも強くなってやる。そんでもってショウの仇を討ってやる!」
「私もよ! 私だってショウさんの仇を討つよ! アンタを絶対に許さないよ!」
「仲よく吠え面か。そうかいいだろう。オレの手で殺してやる。その日を待っている」
「待てって! テメエ、名前は何だ」
「仇に名を訊くとは……ギルだ。待っている」
ギルは名乗ると、すぐにその場を離れていった。
ウルは何度も何度も「ギル」と復唱する。
「ティタ。俺、強くなれるか?」
「前向きなのが取り柄のアンタが、後ろ向きになってどうするよ。大丈夫。アンタは強くなれるよ」
「根拠でもあるのか」
「私の第六感よ」
「あはは。一杯食わされたって」
緊張の糸が解 れ、二人に笑顔が戻った。その後、二人はロイズの探索を再び始めた。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい
ともだちとシェアしよう!