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第22話「プレゼント」
「美味しいのだよ! 美味しいのだよ!」
「落ち着いて食べられないのか? 君は」
小腹がすいたメルの希望で、メイルはリリッシュで人気のドーナツ屋に連れてきていた。メルは幸せそうにドーナツを頬張っている。
「これが落ち着いていられますか。そこに甘いものがあるのなら、迷わず手を伸ばすのだよ」
「とても甘党には見えないが?」
「人は見かけによらないのだよ」
メイルの言う通り、メルは細く、甘いものが好きだと言われてもピンとこない。そんなメルを隣で見つつ、メイルはコーヒーを飲んでいた。
「メイルは、ボクとは逆で甘いのが苦手?」
「いや、ただの気紛れだ」
「気紛れ? 気紛れでコーヒーを飲めるなんて凄いのだよ」
「おだてても何もないぞ。それよりも、そのドーナツ旨そうだな。一個いいか?」
「いいのだよ。その代わり、ボクにプレゼントをくれたりしてくれたら嬉しいのだ」
「ドーナツの見返りがプレゼント、か。何が欲しいんだ?」
「え~と……愛の……」
「却下だ。物にしろ」
「そ、そんなー!」
残念ながらも、ドーナツを食べる手を休める気配はなく、「指輪」だとか「ピアス」だとか言っている。
メイルはその度に「却下」と切り捨てていく。
「じゃあ何ならいいのだよ?」
「眼鏡でいいんじゃないか? 少しは知的に見えるぞ」
「おお! それはいい案なのだよ!」
「……そ、そうか」
すんなり意見を聞き入れたメルに、メイルは正直驚いた。いつの間にかドーナツがキレイサッパリなくなっており、満足したメルはパッと立ち上がって伸びをした。
「そうと決まれば行くのだよ。眼鏡眼鏡!」
「単純なやつだ」
※ ※ ※
「どう、似合ってる?」
数種類を合わせたあげく、ようやくお気に入りを選んだメル。メイルは自分の財布を取り出すと、眼鏡の代金を支払った。
「送迎書じゃないの?」
「僕の靴は旅の必須品だ。が、その眼鏡は君へのプレゼントだ。送迎書を使うべきじゃない」
「なんだか嬉しいのだよ。メイルからの特別なプレゼントだから」
「別に特別なんかじゃないぞ!?」
「えへへ。 メイル、ありがとうなのだよ!」
嬉しそうに舞い上がり笑顔を見せるメルに、メイルは不思議な感情を覚えた。
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