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第16話「瞳術」
呼吸を荒げ、汗を流し、自分の身体を痛めつけ……。ウルの修業の仕方は荒業以外のなにものでもなかった。
「まだだ! まだだー!!」
雨が上がった昼下がり。ジメッとする空気が肌にまとわりついて、ウルの体力を奪っていく。
「教えようとしたらあの様だ。やけくそにやっても効果はないのに」
「ダイ。僕も核 を早く目覚めさせたい。修業をつけてくれ」
「それじゃあ、また小走りかね。焦ったところで上手くはいかない」
「結局そうなるか。仕方あるまい」
メイルも走り出す。ゆっくりと時間をかけて。
そんな二人を見ていたティタは手当たり次第、石を槍にしていた。
「ショウさんのとは比べ物にならないよ。私じゃ、ショウさんの足下にも及ばない」
「昨日の今日でその出来だ。物凄い進歩だ。誇っていい」
「ありがとう。ダイも自信持ちなよ。ショウさんの弟子同士、師匠の意思を継いでいかないと」
(……師匠の意思……か)
自分に足りないものは何なのか? 必要なものは何なのか? 雨のあいだ、ずっとダイは考えていた。
十歳という幼い人生経験では分からないでいた。それはそうだ。大の大人ですら、死ぬまで何かを追い求め、自分なりの答えを出すのだから。
※ ※ ※
「こんのぉー!」
「君には負けないぞ!」
いつの間にか、ウルとメイルとの意地の張り合いになっていた。ティタが試したように目を閉じ、両手を合わせて。起きる金縛りを気合いで乗り越える辺り、流石は男の子である。気づけば、この日一日を修業に費やしていた。
「いい加減にしろ。根を詰めても意味ない」
「そうよ。二人共、ご飯にするよ」
「……だそうだぞ? 早く行くんだ。ティタが呼んでいるではないか」
「……テメエこそお先にだ。俺はテメエのあとでいい。譲ってやるって」
一歩も引かない二人。そんな二人に呆れたのか、ティタとダイは、その場を離れてしまった。ウルとメイルが戻ってきたのは、それから三十分後だった。
※ ※ ※
「これが僕の核 !?」
朝、メイルの左目に変化があった。左目を閉じた少年と同じ金色の瞳。核 の一つ、瞳術である。
「俺の弟子が瞳術に目覚めるとはな。これも何かの因果か」
「瞳術を極めれば、左目と同等の力を得れるのか?」
「そいつは分からない。その前に難関が待っているしな」
「難関だと?」
「瞳術は使うたびに視力を削るらしい。そういうのも含めて厄介なんだ」
「なるほど……上等さ。僕にも覚悟はある! 左目を倒すためなら!」
「ちぇー。何でメイルの奴が目覚めて、一緒に修業してた俺には変化ないんだって」
「個人差だ。修業を怠らなければ、ウルも必ず目覚めるはずだ。焦るなよ」
「じ、焦らしやがって」
「ねえ、これからどうするの? 左目の行方を追うとしても、何にも手掛かりはないよ」
「俺は暫くこの街に留まる。師匠を最後まで見送りたいからね」
「僕は行くさ。とにかく進む。色々と修業になるだろう」
「ウルは」
「列車に揺られながら考える。気の向くままってやつ」
「ウル。私も一緒にいい? 核使いが一緒の方が都合いいはずだよ」
「あんだけ別行動に拘ってたくせにか? 構いはしないがな」
「決まりだよ」
こうして四人は動き出した。ダイは留まり、メイルは先を歩く。ウルとティタは列車に揺られるのだった。
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