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第14話「夜空の下で」
夜空に星が瞬き始めたころ、ショウは一人街を見張っていた。左目を閉じた少年が、いつまた現れるか分からないからだ。自分の弟子となったティタに余計な不安を与えたくなかったのもあり、ダイにすら何も告げずに出ていた。
「この街は相変わらず活気があるの。夜だというのに賑わいが止む気配がないの」
左目を閉じた少年が現れた場所に到着する。
特別変わった箇所はなく、手掛かりとなるようなものもない。
「うーん」
蓄えた髭を触りながら考えるショウ。しかし、頭を働けさせながらも、背後から迫る気配に反応した。ショウを付けていたのか、暗闇だというのにまったく迷いがなかった。
「不意討ち、かの。なかなかの忍び具合じゃった」
「いつから気づいていた」
「宿を出た瞬間からじゃの。気配は消せても、殺気は消せなかったようじゃの」
「食えないジイサンだ。賢い年寄りほど面倒なやつはいない。ジイサンは面倒だ」
「少年。今日の一件、どういった狙いがあった」
「ジイサンには関係ない。オレが、何をしようとオレの勝手だ。オレの邪魔をするのならば加減はしない」
「相手の目的も知らずに邪魔立てをするつもりはないの。ワシの流儀じゃ」
「律儀な分、余命が縮んだなジイサン。オレに気遣いなんかしたのが、運の尽きだ」
閉じた左目を開ける少年。瞳は金色に輝き、夜の空間ではいっそう目立つ。少年の手は、あっという間にショウの首を掴む。だが、少年とショウの距離は大人の腕で二本分は開いていた。
「オレとジイサンの勝負は、始まる前から終わっていたのさ。これがオレとジイサンの“差”だ」
少年の手に力が入る。首を締められているショウの頭は冷静だった。足下の小石を槍に生成した。
「核 使いだったか。まあいい。窒息させて終わりだ」
(ふん!)
「ぐ!?」
ショウの石の槍が、少年の手を貫いた。
「動きを封じさせてもらうのじゃ」
少年の脚に槍が刺さる。膝をついた少年だったが、その顔には余裕があった。少年は、脚に突き刺さっている槍を引き抜くと、どこかへと放り投げた。
「なんのつもりじゃ」
「アンタは賢いが、賢いばかりに現実に囚われている。それが……」
「!!」
「……オレとジイサンの勝敗の“差”だ」
ショウにはもう、少年の姿は見えていなかった。声は聞こえていなかった。
「あばよ、ジイサン。暇潰しにはなった」
背中から槍を貫かれたショウには、少年の感想も届かない。心臓を貫かれたショウにはもう、朝日を拝むことは叶わない。
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