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(第3章 ステラ初挑戦。牛の乳しぼりと、新たなる命の誕生)
翌日、昨日の雨が嘘のように止み、皆は早朝の作業に着いた。
そして、ステラも今日はアウル達より先に起きた。
今日、彼女は、新しい事にチャレンジする。
それは牛の乳しぼりだ。
「それじゃあ、行くね」
と、彼女は出て行き、オリンスのいる牛舎へ向かった。
「ん? ああおはよう」
「おはようございます」
「じゃ早速やるか。朝皆に出すミルクを作らにゃならんでな。特にこいつの乳を見てくれ。だいぶ出てるだろ?」
「あ、ホントだ。これ、どうやって出すの?」
「まあ、見てなさい。こうするんじゃ」
と、彼が手本を見せると、ステラも横から見ていた。
彼が父の先をギュッギュっと握ると、白い液体が出て来る。
「わ~~」
「やってごらん?」
「あ、はい。よいしょっと」
ステラがそっと握ってやると、ミルクが出て来た。
「あ、出た」
「ウム。その調子じゃ」
「わ~こんなにたくさん」
「ハハハ。まあ、もうすぐ子ウシの出産シーズンになるからな。乳が張っておるんじゃよ」
「赤ちゃん生まれるの?」
「ああ。そろそろ、そっちの準備も手伝ってもらわんとの」
「どうやって生まれるんだろう? 見てみたい」
「モオ~」
と、牛が答えてくれ、彼女はうれしかった。
そして、朝の分が出来上がると、それを皆がいる家に持っていき、次の仕事は、野菜の回収だった。
その時気付いた。
いつものように、クロトがヤギを連れて、山頂へ上っていくのが見え、シャニとオルガは、掃除と草の入れ替えだ。
「フウ。こんなもんかな」
「これって結構大変だね」
シャニの言葉に、オルガが、
「なんだ。いいじゃねえか。これであいつらが気持ちよさそうにしてるの見ると、やって良かったって感じになるぜ」
「そうなんだ」
「クロトも、ヤギを操るのは大変だって言ってたぜ。まあ、そこは犬に任せてるらしいけどな」
「犬に?」
「ああ。牧羊犬つって、それ専用に調教された犬らしいんだ。俺も有った事はまだねえがな」
「ふ~ん」
そんな会話をしている頃、クロトは、ヤギ達にたくさん新芽を食べてもらっていた。
「さあ、腹いっぱい食えよ~」
「メエ~」
と、皆も応えるように、草を食べていた。
すると、
―――――
遠くに竜巻が見えた。
「ん? あれって……」
「おやっさん。大変だ。竜巻が」
「竜巻? どこだ? ほら、あれ」
「む! ありゃデカイが、こちらには来んよ。見てみな」
「え?」
「と、クロトが見せられたのは、竜巻の向きを示している所だった。
それはパット見た感じでは、こちらに着そうにないが、クロトは心配になった。
すると、ヤギ達は、雲の異常を感知したのか、
「メエメエ」
と騒ぎだすと、
「ジョン。今日は早く戻った方がよさそうだ。風の向きは時として変わりやすいのだ。急いで降りるぞ。クロトは後から来くれ」
「分かった」
そして、皆が山を降りると、既に小屋は新しくなっていた。
皆が戻ると、一頭のヤギが歩きにくそうにしている。
「ん? どうした?」
と、クロトが気にかけていると、それはお腹がかかなり膨らんでいる。
「これって……まさか」
「やれやれ。ここまでご苦労じゃったな。こいつは別の所へ連れていく。ああ、スマンナ2人共協力してくれ。こうなってるヤギはちと気が荒くなるからな」
「分かった」
そして、3人は協力しあい、無事に出産小屋に着いた。
「よしOKじゃ」
と、3人が見ていると、お尻から、顔と前足が出始めた。
「うわ! ケツから頭と足!?」
オルガがビックリしているとまだ出ようとしている。
「手伝わなくていいのか?」
「大丈夫じゃそれに、馬とは違って、ヤギは純粋な生き物じゃ。そっとしてやるのが良いんじゃよ」
と言っていると、ついに、後ろ脚がでて、ついに産み落とされた。新鮮な草の上に、新しい命が誕生した。
「メエ、メエ……」
と、子ヤギが鳴くと、お母さんになったヤギは、子ヤギの側に行き、ヤギは1人で必死に立ち上がろうとしたが、膜が邪魔をして、なかなか立てない。
すると、お母さんヤギが、その粘膜を食べて外してやると、ヤギはすぐさまヨチヨチ歩きではあるが、お乳を見つけて飲み始めた。
「フウ。これで、大丈夫じゃな」
「すっげ~~~」
「ヤギってこうやって生むんだ」
「……」
ああ、そう言えば、お主等は命を知らんかったな」
「あ、ま、まあな」
「これがらが忙しくなるぞ~。何しろ命の誕生は、今がピークなんじゃ」
「命の誕生……」
と、オルガはヤギを見ていると、もうすっかり落ち着いていた。
死んでからと言うのも変だが、まさに死んでから生について間近で学ぶ事になるとは、思いもよらなかった。
「ちょっと待っとれ。えーっと次の妊娠予定は、お、こやつじゃな。ヨハンが見ておった馬じゃ。こやつもそろそろじゃな。競走馬からは少し離れればいかんがな」
「え? そうなのか?」
とクロトが聞くと、シャニも
「まあ確かに走る馬なら、仕方ないんじゃないか? だって、走るのが仕事の馬なら、なおさら出し。
「その通りじゃ……おっともう朝食の時間か。そろそろ戻るぞ」
「グ~~~~~~~~~~」
と、大きなお腹の音が鳴った。
だが、それはクロトからだった……
クロトは真っ赤になりながら、スタスタと歩いて行ってしまった。
「ハハハ~確かにあんな音だしゃ~な」
「フフフ。今日も指笛の音を練習しとったからの」
「指笛?」
「ああ。ヤギを扱う時に使う指でこうやって」
「ヒュ~イ」
と鳴らすんじゃ。まあ、お前さん等にもいずれ分かる日が来るじゃろうて」
そして、皆の食事は結構合成で、牛の肉や豚の肉など栄養バランスがいっぱいの朝食になった。
「美味しい~」
「ウマ~」
「これ、生で飲むの初めてだけど、こんなに美味しいんだ」
と、ミゲルが珍しそうにしながら飲み、ハイネもこの牧場で作った野菜を食べていた。
「う~ん。新鮮な野菜はうめえな~」
「ウィンナーもいけるッスよ~」
「こら、ラスティ。ミゲルに失礼だろ?」
「え? だって昨日会ってるし、ハイネで良いよって言われたし」
「え?」
「だってそうだろ? もう地球軍だのそういうのとはおさらばしたわけだから、今さらそんな事で争っても仕方ねえだろ?」
「それに、ステラちゃん達は、ちっちゃな頃から、戦わされて生きて来たんだ。それを今、ここで生き直そうとしているんだ。俺達も、なんか手伝える事はないかって思うよ」
「そうなんだ」
「まあ、これは死んでからわかった事なんだけどな」
「確か通称は……」
「ファントムペインだ。たしかその部隊も壊滅したらしいぜ。ま、おかげで後から聞いたそのAAッて所では、良い事あったみたいだけどな」
「良い事?」
分からずラスティが聞くと、ハイネが
「ああ。偶然手に入れた写真に、こんなもんがな」
と、ある写真を見せて来た。
「ん? え!?」
と、皆は固まった。
なんとそれは、マリューとムウのキスシーンだったのだ。
「ウッワ~メチャクチャきついなこりゃ」
「ちょっと子供には……って」
と、ラスティが引いた。
なんと、さっきまで片づけていた3人が見に来たのだ。
「ネオ。幸せそう。本当に嬉しそう……」
「ハエ~。あいつ、彼女いたのか」
「全く。こんなシーン見せびらかしやがって」
と、スティングが写真を取り上げようとしたを、ミゲルが阻止し、逆にミゲルが取り上げた。
「あ~ん。返してくれよミゲル~」
「子供にはまだ早い!!」
「あなたは、誰?」
「え? あ、ああそうだったな。俺はラスティ・マッケンジー。主に作物を育ててるんだ。君達は確か羊だったよな」
「うん。今日は牛さんのお乳を搾ったの」
「へえそうなんだ」
「最初はちょっとかわいそうかなって思ってたんだけど、出来るようになってからは、ちゃんと出す事が出来て良かった」
「ハハハ。そうかそうか……ってあ、ア、アア俺も作業に戻らねえと。んじゃさいなら~」
彼はまるで、逃げるように、その場を去り、1人残されたステラはわけがわからなかったが、実は後ろで、嫉妬心丸出しのスティングとアウルがいたのだ。
「ほら、ステラ。俺達も仕事に戻ろうぜ」
「うん!」
「次は、何かな~?」
と、ステラは、この農園の仕事がスッカリ大好きになっており、アウルとスティングもかなり頑張っていた。
そして、喜びを覚えた。
今までMSを堕とす事だけが、生きがいだった彼等は、この脳槽の仕事を経て、少しずつであるが、人間の心に近づきつつあった。
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