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(第2章 生体CPUとエクステンデット)

 お昼が終わると、皆はそれぞれの仕事に行く。 今日、スティング達は羊を。 オルガ達はヤギを山へ連れて逝くのとその間にベッドを変えておく事だった。 そして、生体CPUの3人は、ヤギの面倒を見てやる事になっていた。 「さ~って始めるか。行くぞ!」 「よっしゃ」 「変なとこ持って蹴られるなよ~」 「やかましい!」 と、シャニの言葉にオルガが真っ赤になって怒った。 実は昨日、ヤギの小屋の掃除の時に、うっかり子ヤギを抱き上げた際に思いっきり後ろ足で腹を蹴られたのだ。 しかもヤギの足は子供でも鋭く。しばらく動けなかったほどだ。 その為、オルガは慎重と言うか、少し怖くなってしまったのだ。 今日は、子ヤギ達と一緒に、新鮮な草が実ると言われている、山の上の方まで連れて行かなければ、ならないのだ。 もちろん、ヤギ担当の人も一緒だ。で、クロトがヤギを連れて行き、シャニはオルガはその間に寝床の掃除をする。 最初は彼等も臭いと思っていたのだが、本当の命にふれる事に変わっていき、今では自分から進んで手伝いをするようになったのだ。 ――――― 一方ステラ達は、羊の世話を担当していた。 すすと、その内の一匹が、ステラに興味を持って、遊びたいのか、ずっと彼女の後を追っていた。 「この子。私の後追いかけて来る。なんで?」 「こいつか?」 、アウルが言うと、その羊は、アウルを無視してステラにアタックしていく。 「こら、落ち着けって」 と、スティングが落ち着かせると、羊の方も大人しくなった。 「フウ~一体どうしたんだ?」 とスティングが困っていると、一頭だけ、やたらお腹の大きな羊がいた。 「あれ? この子お腹が……」 と、言うと、リース・エルハイムが見た。 「こりゃ近いかもいれねえな」 「近い? 何が?」 と、アウルが言うと、 スティング。悪いがこいつを、昨日教えた場所に誘導できるか。 「あ、ああ。ほら、行くぞ」 「メエ~」 と、スティングは見事にその羊を操り、例の寝床へ案内した。 これは、つい先日、羊の出産に偶然居合わせたスティングが見たのだ。 しかも今は春先で、出産シーズンを迎えていた。 「忙しくなるな」 「俺としては、嬉しいけどね。こうして繋がっていくんだなって思うとさ」 「あ~そう言えば、お前さん達は、軽々してなかったな~」 「あ、ああ。まあな……大丈夫なのか?」 「う~ん。大丈夫だ。スマンがその時は手伝ってもらって良いか?」 「ああ。かまわねえぜ」 「助かる」 ――――― 一方その頃、クロト達は、ヤギ達に新鮮な草をたくさん食べさせていた。 「どうだお前等、うまいか~」 「メエ~」 「ん?」 「どうした? おやっさん」 「こりゃ、降りた方が良いな。そろそろここに厄介な物が来そうだ。こりゃきついぞ。クロトヤギ達を小屋に戻すぞ」 「あ、ああ」 「ヒューイ」 と、口笛の音を聞いたヤギ達は、一斉に下っていく。それをクロトが追いかけて、散らせない様にした。 確かにここは草が豊富で、ヤギには困らないが、一度天候が荒れると、凄まじい突風が吹く事が有るのだ。 そして、小屋に帰ってみると、掃除を終え、新鮮な寝床が出来上がった所だった。 ヤギ達は喜んでベッドに入る。相当色々な草を食べて来たのか、かなり元気そうだ。 そして、子ヤギの一頭が、クロトにすり寄って来た。 「おおお、おいなんなんだよ」 「ハハハ。どうやらその子に気に入られたようだな。クロト」 「え? 俺?」 「そうじゃ。なあ。お前さん」 「メエ~💛」 「俺が……気に入られて……」 「そうなのか? お前」 と、クロトがしゃがむと、そのヤギはスリスリとすり寄って来た」 「おあ、な、なんだよくすぐって~よ~」 これを見ていたオルガとシャニは、 「ハハハ」 「あ~らま~完全に気に入られちゃってるな。お前」 「そ、そうか? ……なんか、こういう時って、どう言えば良いのかな?」 「あ……」 そう。問題はそこに合った。 彼等生体CPUは、呼び名が違うだけで、同じような運命をたどっており、オルガ、クロト、シャニの3人は薬で。 ステラ達は、戦闘訓練と言葉と薬とゆりかごで調整されていた。 嬉しいとか、楽しいとかの感情など、既になかったが、どういう意味か、クロトはこれが嬉しい事だという事、神官から聞いて、ちょっとだけ良い思いをしたなと思った。 ――――― 一方ステラ達は、ついにその日を迎えた。 羊が子供を産もうとしていたのだ。 これには、スティングが立ち会った。 そして、数人の人間とでなんとかしようとした。 ――――― それから1時間して、全部で5頭の赤ちゃんを産んだ。すぐさま赤ちゃんは立ち上がろうとするが、中々うまくいかない。 「ガンバレよ! もう少しだ」 「メエ―――――と、思いっきり叫んだ一頭が立ち上がり、続く2頭目3頭目と順々に立ち上がっていき、ついに最後の一頭も立ち上がった。 そして、お母さん羊に寄り添うと、お乳を飲み始めた。 「よーし。もう大丈夫だ」 「ふ~……なんか、見てるコッチが疲れちまった……」 スティングが尻餅をつくように倒れると、ステラは物珍しそうに見ていた。 「生まれた……羊……子供……」 「ステラ……」 彼が名を呼ぶと、彼女は座って、その様子をずっと見ていた。 「……これが……命……」 「これが、母さんで、これが、子供……じゃあ、あの人は……」 アウルが思い出していたのは、今ではあまり覚えていない、あの施設にいた女の人で、母さんと思っていた人だった。 この現象を目の辺りにしたアウルは、しばらく見つめていた。 ――――― 「ゴロゴロカッ!ドーン!!」 と、雷が落ち、すぐそばに有った木に直撃した。 「うへえ~危ね~」 「ここは一応あそこに避雷針を置いておる。だだここまで落ちるとは、何か良くない事の暗示かの?」 「悪い事……怖い……事?」 「大丈夫じゃよお嬢さん。今日は早めに上がった方が良いじゃろう」 「ワリィなあんまり力に慣れなくて……」 「なあに、繰り返して行けば、どうって事ないもんじゃて」 「はい!」 「どうじゃ嬢ちゃん。明日、牛の乳しぼりを手伝ってみんか?」 「乳しぼり?」 「牛乳を飲んだ事は?」 「牛乳って……ナニ?」 「あら~」 と、これには、ジョースはヒッくりかえる。 「お嬢ちゃんの事は、神官様から聞いておったが……本当に戦闘の事が意外知らんとは……」 「いけ、ないの?」 「~~~~~~~」 これには側にいたアウルが頭痛いのポーズを取った。 確かにステラはのんびり屋ではあるが、海が好きという事以外はあまり知らず、1回それで大騒動になった事が有ったのだ。 「良いじゃんステラ。乳しぼり。明日から始まるんだよな。おやっさん」 「ああ。最近は機械を入れる所が多くなったが、うちはまだ手作業で絞っているんだ。牛の肉は貴重だからな。 そのうちに、ヤギもしぼらにゃならんが、そっちはニールがする事になった。 「うん! ステラ頑張る!」 完全やる気モードのステラを見て、ある意味アウルはホッとした。 こうなったステラは、結構な頑張りやになるのだ。 でも、今回はその動物に合った力を使う為、加減が必要なので、それがちょっとだけ心配だった。 こうして、一日のドタバタ騒ぎは終わった。 今回ステラは、シスターアリアの部屋にいさせてもらう事になった。 「ステラちゃん。一緒にお風呂行く?」 「良いの?」 「せっかく女同士なんだし。ね」 「うん!」 そして、 2人は、お風呂を十分に楽しんだ後、温めた牛乳を飲んだ。 「美味しかった~」 「これも、この牧場ならではなのよ」 「いっぱい知ってるね」 「まあ、この農村にやって来たのも、かなり小さな頃でね。親が早くなくなっちゃって、ここに来る事になって、神官のラリ様に拾ってもらったの」 「そうだったんだ」 「ステラちゃんはどうして?」 「私達……戦争で……皆、離ればなれになってた。そしたら、神官さんが、仲間の元へ連れて逝ってくれるって言って、ここに…来た」 「そう言えば、その時、あなたすごく小さかったわよね。確か小学1年生みたいな」 「うん」 「あれから4年か。ステラちゃんも大きくなって、牧場の事、手伝えるようになって、良かった。 「うん。ステラ……嬉しい事。たくさん増えた……シン。どうしてるかな?」 「シン?」 「うん。好き……だったの。ネオも好きだったけど、その好きとはちょっと違う……」 「は、はは~ん」 「ステラちゃん。それはもしかして…ゴニョゴニョなんじゃない?」 「恋って何?」 「ズベ!」 と、アリアは見事にベッドから落ちた。 「ほ、ホントに戦争以外、何も知らない子ね。あなた……ハア~これから先が、思いやられわ」 「?」 「~~~~~もういいわ。電気消すね」 「うん」 と、アリアは眠り、ステラも横になるが、何かおかしな感触だった。 自分達が眠ると言えば、ゆりかごの中だけだったので、本当のベッドで眠った事がなかったのだ。 その時、偶然ステラのいる窓に、満月がキレイに映っていた。 「わあ~キレイ」 彼女は、何時までもそれを見ていた。 こうして農村に平和な夜がやって来た。
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