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第4話

”速いぜリューク!”「予想のうちさ!」  いい交わしつつ両手剣で空中に文様を描くリューク。たちまち打ち出される溶岩の弾を、しかし火柱は足も止めずに弾き返すや猛然と突っ込んでくる! ”代われリュークっ”「ガルド頼む!」  いいつつ剣の束の宝玉を自らの額に押し当てるリューク。光の爆発が飛び込んでくる炎魔をも丸ごと包み込む。やがて光が薄れ露わにされるその姿!  青い鱗に包まれた二メートル余りの長身。長い手足は込められたあらん限りの力に震え、振り下ろした大剣を必死に押し切ろうとするが、その切っ先をがっちり捉える炎の中から伸びた爪! 「こなくそぉおォーーーーっ」  龍神族の剣士が絶叫するや、ついにぎりぎりと押し下げられる切っ先。とたんに炎の帳が両横に広がるや龍神族の少年を呑まんとする! 「卑怯だぞテメエ!」  怒鳴るや爪を蹴って剣を引き抜きざまに飛び退くガルド。剣を構え直し睨みつける龍神族に、だが炎魔はためらうような動きを見せたかと思うと興味をなくしたかのように向きを変え、猛然と雪原を走り去ってゆく。 「勝てねえと知ったか臆病者!」 ”いや、きっと君が人間じゃないから獲物と認識しなくなったんだ。あれは峠を、砦や村をめざして走ってる!” 「させるかあっ」  吠えるや一気に飛び立つガルド。走る炎魔をたちまち飛び越え峠を背に立ちはだかるが、紅蓮の竜巻は低い位置から二本の炎の鞭を振り伸ばして打ちかかってくる。 「足元狙いかよ!」  舌打ちしつつ飛び上がり、鞭の間をかい潜るや突っ込んでくる火柱に剣を押し立てぶつかっていくと、またも刃につかみかかる鋭い爪めがけ剣を振ればあっけなく吹き飛び雪原に倒れる炎魔。たちまち沸き上がる雲塊のごとき蒸気に視界を遮られたとたん、その中から乱れ撃ちされる炎また炎! 「くそっ」  火弾を避け螺旋状に上昇するや、眼下で立ち上がると再び峠へ走り出す炎の竜巻。だがそれが峠を登ろうとしたとたん、強烈な吹雪が山の頂から吹き降ろしてくる! 「始めたな爺さん!」  吹雪を避けてさらに上昇した一つの体の二人の眼下で繰り広げられる熾烈な攻防! 炎魔は吹雪に抗うかのごとくさらに火勢を強め、ついに炎の高さは倍近いものとなったが、吹雪も負けじと勢いを強め、ついに火柱をじりじりと元の場所へと押し戻し始めた。呆れたような声でガルドがリュークに話しかける。 「こんなこと三百年もやってたってのか? それも毎晩?」 ”ああ、これじゃいくら魔力をかき集めても足りなくて当前だ。むしろ今までよく続けられたとしかいいようがないな” 「じゃあ帰るか。こんなのに一晩中つき合ってられねえし」 ”そうだな、いつまでも君の姿でいられるわけじゃないから”  いい交わしつつ雪の上に降り立ち変身を解くと、打ち合わせのとおり片手で剣を真上に掲げるリューク。たちまちその身は光に包まれ魔法の炎と吹雪が荒れ狂う雪原から消え去った。 ---------- 「では、そなたは夜明けとともに熱風を吹かせろというのか!」  頷く錬金術師の若者をまじまじと見つめる砦の長。 「今のままでは洞窟へ押し返すことはできても、決め手がないとしかいいようがありません。魔力が尽きればあれはたちまち峠を越えてこの地へ暴れ込みます。それではこの地ばかりか、国全体が遠からず蹂躙されてしまうはず。それに」 「なんだ?」 「ガルドの話では、ぶつかったときの手応えが奇妙に軽かったというんです。あるいは炎こそがあれの実体なのかもしれません。とにかくあの炎をなんとかする以外に手だてはないはずです」  リュークが話し終えると、砦の長はしばし目を閉じ考え込んでいたが、やがて立ち上がると念を押すようにいった。 「いったん冷気の術を解けばすぐには今の状態に戻せぬ。大きな危険が伴う策だ。だが、あの難物とあれだけやりあえるそなたたちだからこそ勝機が見える策でもある」  頷いたリュークが言葉を継ぐ。 「今夜の戦いからも、あれは近くに人がいれば必ずそちらを先に襲うはずです。ぎりぎりまで引きつけますから、手はずどおりに合図をしたら迷わず攻撃をお願いします」 「わかった。そなたたちに運命を託そう」  老人が差し出した手を、若者は握り返した。
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