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第14話

 十二月の中旬、サークル内は締め切り前ということもあり、ピリピリとしたムードに包まれいてた。  サークルメンバー全員が無我夢中で作業しており、凄まじい速度で作業をこなしているがなかなか終わりが見えてこない。一つの作業が終わっても、すぐに次のタスクが割り振られる。 「根音くん! このテキストの推敲作業お願い!」 「分かった!」 「麻友さん。ステージ5の背景のイラストどこまで進んでる?」 「えっと、色塗りが半分くらいまで」 「了解! それじゃ、それが終わったら麻友ちゃんもあとでテキストの推敲作業お願い! 響木ちゃんはエンドロールの曲終わったら、共有フォルダにアップロードお願い。それが終わったら、デバック作業をお願いするね!」 「分かった」  我らがサークルリーダーである真斗の統率力のおかげで着々と完成には近づいていた。 「いやぁ、改めてみると根音くんのシナリオ、本当良くなったね」 「そ、そうか?」 「うん、まさか僕も新たにシナリオを追加するなんて思わなかったよ」  真斗からダメ出しを喰らった二つのシナリオ。その二つのシナリオの主な内容はあえて変えず、最初に作った三つのエンドは全てアナザーエンド扱いとし、新たにもう一つのエンドを書くことにした。  通称、オールハッピーエンド――主人公の説得により、魔族と王国軍の対立が無くなった平和な世界において、主人公は魔王様とずっと幸せに暮らしていくというルートである。  最初、この強引とも言える内容に真斗から難色を示されると思ったが、予想に反して絶賛された。 「まぁ……まさか、戦闘システムまで変更するとは思ってなかったけどね」 「う……」 「そーだよ、根音くん! その結果がこれだよ!」  真斗と麻友にゲームにおける戦闘システムを変更したことを詰られた。  ドラクエなどに見られるようなターン制コマンド式の戦闘システムだったのを真斗に頼んで、シューティング式の戦闘システムに変更してもらった。  さらに追加要素として、キャラクターをコスプレできる機能も追加した。  その結果、スケジュールが大幅に狂い、こうして現在修羅場の真っ只中というわけである。 「本当に申し訳ない……」 「まぁいいじゃん。二人とも。おかげで前よりもかなり面白くなったと思うよ」  響木が俺にフォローを送ってくれた。何を隠そう響木の例のプレイを見て、戦闘システムを変えたいと思ったのである。  みんなに迷惑をかけたのは承知の上であるが、前のよりも数段面白くなったと自信を持って言える。 「まぁ、そうだね」 「うん。響木ちゃんの言う通りだ。それじゃ、みんなマスターアップまでラストスパートだよ! あ、そうだ。それともう一つ言っておきたいことがあったんだけど……」  真斗が話している途中で、玄関から『ピンポーン』というインターホンの音が聞こえてきた。  真斗は「来たか……」と呟きながら玄関に誰かを出迎えに向かった。しばらくすると、見知った顔二人がリビングに入ってきた。  なんと、その人物とは…… 「増援よ根音! 感謝しなさい!」 「根音くん。よろしくね」  驚きのあまり、思わず顎が外れそうになった。なんと、雛菊と明梨さんがサークルにやってきた。 「ど、どうして二人がここに?」  俺が訊くと、麻友と響木が訝しんだ表情で俺に顔を向けた。 「根音くん、知り合いなの?」 「し、知り合いっていうか……」 「ゲームセンターの時の……くっ……また邪魔なライバルが……」  響木は恐ろしく低い声でよく意味の分からないことを呟いた。 「みんな紹介するよ! 新しいサークルメンバーの横手雛菊さんと小坂明梨さん。二人とも自己紹介お願い」 「初めまして横手雛菊です。私は真斗くんとは同じ会社で働いてて、今日からサークルメンバーになりました。プログラミングとBGM制作もできるからできるだけ力になれるよう頑張ります。よろしくね!」  雛菊の説明を聞いていた響木が「私の上位互換……」と小さな声で呟いた。  いや、その理屈はおかしいだろう。というか雛菊、真斗と同じ会社で働いていたのか。 「小坂明梨です。三年前まで雛菊ちゃんと真斗くんの会社で働いました。今はコンビニの店長をやっています。会社で働いていた頃はキャラクターデザインの仕事をしていました。イラストやグラフィックの方で手伝えることがあると思うからみなさん、どうぞよろしくお願いします」  明梨さんも元々、真斗と同じ会社で働いていたようだ。意外なところで繋がっているものである。 「あのー、二人とも根音くんとは知り合いなんですか?」  二人の自己紹介を眉間に皺を寄せながら訊いていた麻友が尋ねた。 「うん。根音くん、私のお店で働いているのよ」  明梨さんが俺との関係性を説明してくれた。明梨さんについては大丈夫だ。問題は雛菊の方である。 「そうなんですね。雛菊さんは?」 「えっとそうね……昔ちょっとした関係があったのよ」  おいおい、説明下手すぎるだろ。麻友は息を飲み込み、さらに質問を続ける。 「ま、まさか……昔付き合っていたとか?」 「それはない」「それはないわ」  俺と雛菊は同時に否定した。すると、もう一人リビングにある人物が入ってきた。 「みんな! 待たせたな。あれ? 明梨さん、雛菊。どうして二人ともここに?」  やってきたのは元魔王様改め本庄黑夢(ほんじょうくろむ)であった。  この世界に来るに当たり、俺は元魔王様に新しい名前を付与したのである。  黒夢様はこの世界に来てから、すぐにこのサークルに加入した――と言っても、ゲームに関する知識は全くないため、今は食べ物の買い出しやお手伝いなどを担当してもらっている。 「あら黒夢ちゃん。今日から私たちもこのサークルに入ることになったのよ」 「そーよ! 私の力でなんとかマスターアップまでに間に合わてあげるから感謝するがいいわ!」 「へー、そうなのか! 二人ともよろしくな!」 「三人も知り合いみたいだね。それじゃ、二人とも。来てもらってすぐにあれなんだけど、早速作業手伝ってもらえるかな? 結構、スケジュールギリギリで」 「任せなさい! 私が来たからには百人力……いや、千人力よ!」  こうして急激に戦力が増加したサークルコバルトはなんとか冬コミの締め切りに間に合わせることができた。
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