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第11話

 次の日の日曜日。準備を整えた俺は早速、ヒナギクとの待ち合わせ場所であるコンビニの前に向かうことにした。  外は結構肌寒く、思わずブルっと身体が震えた。重い足取りでコンビニへと向かう。  コンビニの前にて、ヒナギクがそわそわした様子で俺の到着を待っているのが確認できた。きっとこのまま帰ったらすごく怒られるんだろうな。  俺はゆっくりとヒナギクに近づいた。ヒナギクは偶然男たちに絡まれているのを見かけた日と同じく、アニメのストラップが着いた鞄を持っていた。  しかし、あの時とは別のアニメのストラップとなっている。 「お待たせ。待ったか?」 「ええ。待ったわ。全く、この私を待たせるなんていい度胸ね」 「約束は十時からだろ? まだ九時五十分なんだが……」 「普通、三十分早く来るものでしょう?」 「社会人でもせいぜい十分前くらいだと思うぞ?」  こいつの時間感覚は絶対におかしい。 「まぁいいわ。それじゃ、行きましょうか」 「ちょっと待ってくれ」 「何よ?」 「お前の鞄に付いてるそのストラップさ……」  俺は『転生したらスライムだった件』の主人公、リムル=テンペスト(スライムの姿)のストラップを指差した。 「これがどうかしたのかしら?」 「ヒナギクも転スラが好きなのか?」 「ええ、好きよ。最ハマったのは最近なんだけどね」  あっさりとヒナギクは転スラが好きであることを認めた。  そういえばこの世界で初めて会った時も、別のアニメのストラップを付けていたな。 「あのアニメ、すごく面白かったわ……スライムであるはずのリムルが強敵をどんどん倒していくさまは実に爽快だったわね」 「ああ、確かにな。あれこそ正に正統派なろう系小説って感じだった!」  なろう系小説が何かと言うのは説明すると長くなるが、異世界で主人公が大活躍するというものであると考えてくれれば概ね間違いじゃない。 「へー、あんたも転スラ好きなのね。なかなかいい趣味してるじゃない」 「ああ。俺はやっぱ転スラの中だとミリムちゃんが一番好きだな。可愛いし」 「やっぱり魔族だから魔王に惹かれるのね……」 「そりゃあな。そういえば、聞いてなかったが、ヒナギクは何の会社に勤務してるんだ?」 「あら? 言ってなかったかしら。ゲーム会社よ」  なん……だと……  こいつ、俺が入りたくても入れない会社に勤務しているのか。なんとも羨ましい。 「ま、まじか……アルバイトとかでもなく、正社員で?」 「ええ、そうだけど」 「そんな! だって、この世界は大学か、最低でも高校を卒業していないと正社員で働くなんて中々……」  ましてやゲーム会社など、大学時代にゲームの知識を齧っている者でないと断られるケースが多い。 「あー、私も最初はアルバイトのデバッカーとして働いていたんだけど、会社の人から正社員で働いてみないかって誘われてね。それで正社員になったのよ」 「ま、マジか……」  すごいなこいつ。超仕事が出来たりするんだろうか。 「今、どういう業務してるんだ?」 「プログラミングがメインね。あとはBGM制作もたまに手伝ったりしてるけど」  すごいな。要するに真斗と響木の能力を持っているようなものである。 「そ、そうか……」 「そんなことより、早く行きましょう。早くこの中へ入って」  ヒナギクはこの世界と元いた世界と繋がるゲートを開門させた。この魔法、どうやって使用しているのだろうか。  先にヒナギクが潜り、俺も続けてゲートを潜った。  ゲートを潜ると、俺たちは広い草原の中にいた。周りには一面の草が生え茂っており、空には巨大な翼の生えたモンスターが悠々と空を飛んでいる。  とても爽やかな心地よい風が顔を撫でる。懐かしい感じだ……戻ってきたんだな。 「それじゃ、早速勝負! って言いたいところだけど、ちょっと王都に戻って装備を用意してくるから」 「あ、あぁ……」  それもそうか。俺も色々と戦いの準備を整えておきたい。 「それじゃ、二時間後にこの場所で待ち合わせしましょう。いい? 絶対に逃げるんじゃないわよ!」  ヒナギクはものすごい速さでこの場から走り去っていった。二時間後にはここで死闘を行うことになるのか。  とりあえず、俺もやっておかなければならないことがある。分身体の俺は……部屋で寝ている。今なら分身を消しても問題なさそうだ。  この世界に戻ってきたことで、分身体の俺が今何をしているのか把握できるのである。 「リリース」  呪文を呟いた。すると、俺の魔力が一気に戻ってくるのを感じた。さっきの呪文は分身を解除する呪文である。  力のほとんどを与えていた分身を解除することで、俺の魔力は元どおり、いやそれ以上になっていた。  きっと分身も元の世界で冒険者や王国軍と激戦を繰り広げ、魔力を上げたのだろう。 「あとは装備だな……」  ここから魔族の国までそう通くはない。俺はダッシュで魔族の国へと向かうことにした。
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