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第5話

「はぁ……疲れたな」  家に帰ってくると俺はすぐにベッドに倒れこんだ。今日のバイトはかなり過酷であった。   近くでアーティストライブがあったようで、その影響でたくさんのお客さんが押し寄せ、飲み物の注文がたくさん入った。  よりによって、シフトに入っているバイトの数も少なく、少ない人数で何とか店を回していく必要があった。  これで時給千二百円なんてあんまりではなかろうか。金貨五十枚くらいもらってもいいくらいな気がするぞ。  いかん、元の世界の通貨で考えてしまった。  余裕があったらもう少しシナリオを進めておきたいと思っていたが、明日もコンビニバイトが控えていることだし、早いところ眠るとするか。  だるい身体を無理やり起こし、熱いシャワーを浴びた。  俺が住んでいるアパートには湯船がついていない。そのため、家賃六万五千円と都内にしてはやや安めであるが、たまに湯船に浸かりたいという思いに駆られることがある。  そういうときには近所にある銭湯を使わせてもらうことがある。 「ふー、さっぱりした」  シャワーを浴び終わった俺は冷蔵庫に入ったビールを取り出した。帰りにスーパーで買ってきた値引きされていた弁当をテーブルの上に置き、夕食を食べることにした。  ビールの缶を開けると、『プシュッ』という心地良い音が耳に響く。ビールをぐいっと口に流し込むとシュワシュワとした冷たい液体が喉を通り過ぎていった。 「キンッキンに冷えてやがる……ありがてぇ」  冷えたビールは美味い。それ、よく言われているから。  さてと、弁当も食べるか。弁当の蓋を開け、割り箸で秋刀魚の煮付けを口に入れた。塩加減が丁度よく、なかなか美味しい。  さらにビールを喉に流し込む。 「ぷはー、この一杯の為に生きているものだな」  まるで酒場にいる冒険者のようなセリフを吐いてしまった自分に思わず苦笑した。  元の世界で暮らしていた頃は、もっと高級なものを口にしていた。  なのに、今のこの食事も全く悪い気がしない。なんていうか、生きているという感じがする。  一人で食事を楽しんでいると、ブルルとポケットに入れていたスマホが震えた。  スマホを確認するとLINEの通知が来ており、送り主は麻友であった。  ――今週の土曜日、買い物に付き合って欲しいんだけど都合とかどうかな?  買い物か。一体、何を買うつもりなのだろうか。イラストの資料とかだろうか。  ――十時から人と会う予定がある。それが終ってからでよければ大丈夫なら付き合うがどうだ?  土曜日の十時はすでに明梨さんと会う約束をしているため、それが終わり次第買い物に付き合う旨を伝えた。  LINEを麻友に送るとすぐに返信が来た。最近、気づいたのだが麻友は返信が早い。  バイトメンバーにたまにLINEを送ることがあるが、麻友ほどすぐに返信が来ることはない。  ――了解。それじゃ、午後四時くらいに集合でどう?  午後四時か。それくらいならさすがに集合時間に遅れることはないだろう。  ――OK。集合場所どこにする?  ――いけふくろうのところでどう?  可愛らしいフクロウのスタンプとともにメッセージが送られた。俺も『了解した』という意味を持つスタンプを送信する。この世界のツールにもだいぶ慣れたものだ。  ――ちなみに土曜日会う人ってどんな人?  なんだ麻友のやつ急に。別にやましいことなど何一つしていないがなにか正直に言うとあらぬ誤解を与える気がする。  ――バイトの店長と会うんだ。別に大した用じゃない。  悩んだ末、このように麻友に返信した。  ――そっか、分かった。おやすみなさい。  ベッドで熟睡しているウサギのイラストのスタンプが送信された。さてと俺も寝るとするか。
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