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非・王道系戦隊モノ 2

「ごちゃごちゃうるせぇおぼっちゃんだな!あ?2人でも1人でも変わらねぇからかかってきな!」  アオイロの顔がみるみる青ざめていく。 「どういうことなんでござる??アカイロ!説明してほしいでござる!」 「かかってきな・・・って・・・・・。手を出してきたのはそっちで・・・・」  僕はただ冷静にチンピラに言い訳がましくそう言う。アオイロはおろおろして役に立たない。 「逃げっぞ!ぼんくら!」  僕はアオイロの細い腕を掴んで走り出す。 「逃げんのかごらっ!負け犬!弱虫!」  チンピラの野太い声からは想像できないような低レベルな単語が耳についたまま離れない。アオイロが息を切らしながら僕についてきている。アオイロは変身道具返却していないのだから、変身してあのチンピラをのしてくれればよかったのだ。 「意味が分からないでござる!ちゃんと説明するでござる」  ようやく落ち着いてアオイロの手を放している頃に、アオイロはぷんぷんとかわいこぶった言い方をして僕を苛立たせた。 「アオイロ、君が呼び出しに応じなくなったからだな、僕は嫌気が差したんだよ」  歴代のアカイロとアオイロは信頼関係があって、なによりかっこよかった。赤の熱さと青の冷静が調和した。それなのに、なんだこの様は。赤と青に限ったことではない。傲慢なキイロ。いい加減なミドリイロ。なげやりなモモイロ。ろくなやつがいない。 「だってさ、だってさ。なんで僕ちんたちなのさ。みんなはもっとリア充してるのに、どうしてアオイロに選ばれちゃっただけで、デートもできないの?」 「とことんふざけてんのな、お前。運命だからだよ。僕たちは選ばれる運命にあった。でも適合してなかった」 「・・・・それこそふざけてるでござる。そもそも誰が僕ちんたちを選んでるの?」 「それはあれだ。選考委員会だよ」  別に僕等でなくてもよかったんじゃないか、とよく思う。敵を戦っているとき。学校で授業を受けているとき。同業者達の愚痴を聞いているとき。もっと人間的にできたヤツが就くべき仕事だと思う。 「何ソレ。初めて聞いたでござる」  それはそうだ。頭に浮かんだ単語を並べただけなのだから。 「正義の味方って、もっと持て囃されて、いいものだと思ってたんだけどな」  気付くと口に出していた。幼い頃から思っていたことだった。アオイロは僕を哀れむような目で見た。 「アカイロは、持て囃されたいんでござるか」 「そういうワケじゃないさ。ただ、僕らの時間が潰れていくだけで、利益なんてないだろ」  アオイロはまた、哀れむような目で僕を見た。お前みたいな能天気には分からないよ、と僕は言って、アオイロを置いて去った。  僕は公園の池を見つめて、飽きると幼い頃からよく訪れる公園を見回す。犬の散歩をするおじいさん。ボールで遊ぶ幼児。素朴なデートをしているカップル。英単語帳か何かを読む学生。アコースティックギターを奏でる青年。僕はそれらを守っているのだろうか。いや、守れているという実感はない。守りたいという気持ちは、確かに最初はあった。けれど飽きた。疲れた。仕事をこなすためだけの、偽善的な行為になってきた。  水面が揺れる。水際に生える草がそよそよとはためく。心地よい風が頬を撫でる。長閑だな、と思った瞬間に、僕は池で溺れているものに目が行ってしまった。ふと思い浮かんだのは落し物だ。見つけなければ、もしくは拾わなければいいものを、手が伸びてしまい、拾ってしまうと誰のものだか分からず困惑するのは自身という苦い経験。けれど、周りが「拾え」「拾え」「冷たいヤツだな」と言っている気がして、いつも拾うはめになる。  犬と少女だ。少女といっても自分と同い年くらい。その年で何してんだよ、と思いながら老けている小学生かもしれないな、と内心ツッコミをいれながら、身体は池に向かっていった。職業病だ、と我に返ったとき自身に言うのだろう。  池の水は冷たかった。犬と少女に近付いていくと段々足が池の底から離れていく。犬は冷静のようだが、少女は暴れている。溺れて暴れている人に近付くのは自身が溺れる危険を伴うと、テレビでやっていたっけな、と僕は他人事のように思いながら、犬と少女の方に泳いだ。犬は利口にも、犬掻きで僕のほうに向かってくる。一方で少女は藻掻くだけ。どうしていいのかも分からず、少女の腕を掴む。少女は声を上げ、僕の腕を振り払おうとする。池の水が飛び散り、目に入って怯む。けれどダメだ。力ずくで彼女を押さえつければ、どうにかなるかもしれない。 「彼女をこっちに渡してください!」  若い男の声。応援が来たのか。振り返って姿を確認する。おそらくアコースティックギターを奏でていた男だろう。水面から伸びる襟元の色合いのナンセンスさで分かった。僕は彼女の腕を強く掴み、男の方へ引っ張った。多少の怪我は許してね、と思った。男に少女を引き渡そうとするところで、彼女のもう片方の腕が僕の顔面にぶつかる。そしてそれから、足を引っ張られる感覚に陥った。息を深く吸い込ませてくれる余裕も与えず、僕は水中に引き摺り込まれてしまった。  濁った水が僕を包み込む。口から泡沫が漏れ、水面に向かっていく。  どうしてこういう危機も、正義の味方は助けてくれないのだろう。おおきな敵ばかり倒して、人々の営みの危機なんて助けてくれないじゃないか。ああそうか、持て囃されないからか。  溺れた少女を助けて、死ぬ僕はきっと持て囃されるんだろう。正義の味方をやめてしまった僕なのに。  助けてよ。僕を助けてよ。助けてみろよ。僕を助けられないで、「正義の味方」なんて名乗るなよ。  酸素を求める脳が勝手に息を吸う。鼻から口から池の水が入ってくる。余計に苦しい。    あれだろです。あれ。結局自己満足ってやつなんだろです。     むかつくミドリイロ。年下のくせに、腹の中では絶対僕たちを見下してる。    あっし達のなかで、誰一人純粋な善意あるやついないと思うよ。     腹立たしいキイロ。任務中でさえ携帯電話ばっかいじりやがって。      いちいちくだらなことで悩んでんなら辞めちゃえウザったい。      陰険なモモイロ。嫌味か悪口しか言えないのかこの野郎。               え~だって僕ちん、もっとマイ ワイフといっしょにいたいんでござる♪      アオイロはもう論外だな。      助けろよ。お前等のリーダーなんだから――・・・
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