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第16話

「な、なんだアフォーラよ……」  さすがのハヤカも泉さんの迫力に圧倒されたのか、身を縮こませた。 「アニメは……地球の……いや、日本のアニメは。とても最高なのよ! コー◯ギアス、キ◯ラキル、俺ガ◯ル、ポ◯モン……数え切れないほどのアニメを作り出してきた日本人はとても偉大なのよ! 私はそんな地球を守りたい!」  なんと、ここで泉さんがアニメ好きだと発覚した。かなり意外である。なんか、純文学とか好きそうなイメージがあった。 「な、なんなんだ。さっきからお前たちは!」 「なんだかんだと聞かれたら!」  シトラスが間髪入れず、名乗りを上げた。おいおいおい。 「答えてあげるが世の情け」  まじか泉さん。ナチュラルに参加しやがったぞ。恥ずかしくないのだろうか。 「世界の破壊を守るため」 「世界のハートを防ぐため」 「……」  ハヤカはなんとも言えない様子で二人の様子を見つめていた。いや、孫二人がこんなことをすれうば誰だってそうなるか。 「愛と真実の正義を貫く」 「ラブリーチャーミーな敵役」 「シトラス!」 「アフォーラ!」  二人は無駄にカッコいいポーズを決めた。息がピッタリである。 「銀河を駆けるハイドロネアウンドロ星人の二人には」 「ホワイトホール。白い明日が待ってるわ!」  やれやれやっと終わったか。すると、二人はなぜかじっと俺の方を見つめてきた。  ええっとこれは……こうしろってことか。 「にゃ、ニャーんてな……」  そう言うと、二人は満足そうにニッコリと微笑んだ。ものすごく恥ずかしいのですが。 「ソーナンス!」  俺の背後から聞いたことのあるような声が聞こえてきた。背後を振り向くと、詩織が近づいてきた。 「し、詩織……いつからそこに?」 「最初からだよ。お兄ちゃんたちが屋上に行くの見かけたからあそこで隠れて話を聞いてたんだ」  あっけらかんとした様子で語る詩織だった。 「それで、あれが私たちのおじいさんなんだね」 「その地球人の妹か。そいつも排除してやろう」 「させるか」  大切な家族を襲われるのを黙って見ていられるほど俺は臆病ではない。 「しかしどうする気だ? お前たちは私には手を出すことができないだろう?」  悔しいがハヤカの言う通りだ。亜希子の身体を傷つける訳にはいかない。  亜希子を助け出す方法を画策していると泉さんが俺の手首を掴んできた。 「い、泉さん?」 「慎くん。力を貸して」 「どうする気ですか?」 「時を止めてちょうだい。後は私がなんとかするから」 「分かりました」  今は泉さんを信じるしかない。俺は時を止めた。そして泉さんは時を止めたままハヤカに接近した。しかし、近づけば再び時が動き出す。  泉さんはハヤカの五メートル内には入ることなく、奴の後ろに回り込んだ。 「慎くん。時を動かしてもいいわよ」 「分かりました」  再び時の進行を開始させた。泉さんは気づかれないようにハヤカの肩に手を置き―― 「『キャンセレーション』そして、『デパンデンシィー』」  と何やら唱えた。するとどういうわけか、泉さんの姿が消え代わりに、 「うわ!」  一人の老人が現れた。シワが深く刻まれているその老人は何が起きたのかを認識できないでいるかのように辺りを見渡した。 「お前がハヤカか?」  俺が訊くと、ハヤカはゆっくりと立ち上がった。 「お、お前……一体、何をした?」 「驚いたかしら? おじいさん。私はあなたと同じく、相手の能力を強制解除する能力と相手の身体に乗り移る力を持っているのよ。さっき、私の力であなたの能力を解除させる力を相殺させ、亜希子ちゃんの身体から追い出してってわけよ」 「さ、さすが泉さん!」  これで後はハヤカをなんとかするだけである。ハヤカは悔しそうに歯ぎしりをした。  そしてジロッと詩織を見据えた。何かやばい予感がする。 「おい、詩織。逃げろ!」  俺が叫ぶと同時に、泉さんが憑依している亜希子の手に握られていたエラプションレバルを奪い取った。 「しま……」 ハヤカはそのまま詩織に走り迫った。俺は時を止め、ハヤカを抑えるべく身体を抑えようとした。 「邪魔だ!」  ハヤカの半径五メートル以内に入ってしまい、顎を頭突きされた。痛みで思わず目を閉じる。  くそ、馬鹿か俺は。慌ててしまい、あいつが能力を強制解除することができる力を持っているのを忘れてしまった。 「くくく……なかなか良く馴染む身体だ。地球人といってもさすがは我が孫ということか」  詩織がハヤカに乗っ取られてしまった。くそ、最悪の状況だ。 「おい、詩織から出ていけよ」 「それはできない相談だ。なぜなら……貴様らはもう少しでくたばるのだからな」 「私たち相手にかなうつもりかしら?」  泉さんは腕を組みながら、ハヤカを挑発させるような言葉を投げかけた。確かに、シトラスと泉さんがいるこの状況でそうそう負けるとは思えない。 「いや、私が直接手を下すまでもないということだ。この娘……不思議な力が使えるな」  ハヤカの言葉を聞いて、俺は思わずハッとした。慌てて時を止めたが、ハヤカはすでに乗っ取った詩織の能力でワープを使い、行方をくらませた。 「くそ!」  俺は時の進行を再び動かした。このままだとやばい。 「おい、シトラス! 宇宙船、どこにある?」 「えっと、ここから二キロくらい離れた廃工場に隠してあるますけど……」 「ならすぐに取りに行くぞ!」 「ちょ、ちょっと待ってください……詩織さんたちはどこへ……」 「あいつらは……」  すると、激しい地震が起こった。とても大きい揺れである。震度六くらいはあるだろうか。グラウンドで部活動に励んでいた生徒達の悲鳴が耳に入る。 「ちょ、ちょっと何これ?」  泉さんは地面にしゃがみ込んだ。俺も近くの姿勢を低くした。 「た、多分ハヤカは箱根に行ったんです。詩織が持つワープの力を使って」  俺が説明すると、泉さんの顔色が青くなった。 「お、おしまいだわ……」 「そんな……うわ!」  『ドカン』という鼓膜を大きく振動させるような大爆音が鳴り響いた。空の上には無数の赤い流れ星のようなものが飛来していた。  そして、次々と地上に落ちてくるのは隕石のような、とてつもなく大きな火山岩であった。  地面を溶かしながら、落ちてくる火山岩はまさに恐怖の大魔王のようで、たちまち地上にいたいた人たちの命を奪い去っちった。 「に、逃げましょう。みなさん!」  シトラスが俺と泉さんに安全な場所に避難するように提案した。 「無駄よ。私たちはこのまま死ぬのを待つしかないわ。こんなことならエラプションレバルを破壊しておくべきだったわ。ごめんなさい二人とも……」 「泉さん……」  泉さんの瞳には涙を流していた。本当に……これで地球は終わりなのか。 「ま、慎さん!」  シトラスが空を指差した。三つの大きな火山岩が俺たちに元に降り注ごうとしていた。  これが落ちれば俺たちは勿論、学校にいるみんなも死ぬことになるだろう。 「くそ!」  俺は時を止めた。しかし、時を止めていられる時間は五秒が限界。再び時の進行が開始する。 「降りてくるな!」  俺は何度も時を止めた。しかし、無情にも火山岩が近づいてくる。仮に時を止める時間を伸ばすことができてももはや何も意味はない。  もう時を止めることなどやめた方がいいのだろうか。  そういえば、お母さんが言っていたっけ。時間は前にしか進まないと。  だからこそ、今という時間を大事にしなさいと言っていた。  思い返せば……これは罰なのかもしれない。時を止める力を使い続けたことへの罰。本当は時を操るという行為そのものがタブーだったんだ。  ならば、今この現状を受け入れるべきだ。 「でも、失いたいんじゃないの?」  後ろを振り向くと、幻覚でも見ているのか、お母さんが立っていた。当時の記憶と変わることなく、優しく俺に微笑んでいる。 「大事なんでしょ? 詩織が。シトラスちゃんが。泉ちゃんが。みんなが」 「ああ」  俺は頷いた。 「なら、取り戻したらいいわ。あなたのその『力』で」  俺は目を閉じ、心の中で念じた。頼む。時よ。一度だけ、ただ一度だけでいい。再び、逆流しろ。  ふと目を開けると、ハヤカが地面に這いつくばっていた。泉さんが憑依している亜希子の手にはしっかりとエラプションレバルが握られていた。 「よし!」  俺は時を止めて、泉さんが持っているエラプションレバルを受け取った。  そして、止まった時間の中でエラプションレバルを力強く踏みつけた。 「き、貴様! なんということを!」  時が動き、エラプションレバルを砕け散った様を見たハヤカが叫んだ。 「慎くん……あなた、いつのまに……」  泉さんも俺が突然エラプションレバルを受け取ったのを驚いているようであった。 「お前ら! 絶対に許さんぞ!」 「それは俺のセリフだ! 詩織を……地球をよくも!」  時を止め、ハヤカの背後に回り込む。時が動き出すと同時にハヤカの背中に蹴りを入れた。老人を攻撃するのは少し心が痛まないでもないが、俺は怒りに任せて思いっきり蹴っやった。 「あが!」  『ズザザザ』という音を立てながらハヤカは一メートルほど吹っ飛ばされた。  すると、シトラスと泉さんは顔を見合わせた。 「シトラスちゃん!」 「はい!」  二人は頷き、同時に走り出した。そして、 「「はぁ!」」  同時に高くジャンプした。それはもう、見事な飛びっぷりであった。二人は空中で爆転し、 「ハイドロネアウンドロ星人!」 「ダブル!」 「「キーク!」」  二人はハヤカに見事なダブルキックを決めた。 「やっだーばぁあぁぁぁぁあああああ!」  ハヤカは変な断絶魔を上げながら、落下用フェンスまで吹っ飛んでいった。生死を確認しに行くと、まだ息をしていたが、すでに気を失っていた。 「泉さん! 慎さん!  詩織さん! イェイ!」 「やったわね! 二人とも!」 「すごい……みなさん、すごかったです!」  ハヤカを倒したみんなはとても大喜びであった。 「ははは……」  その後、ハヤカは泉さんが呼んだ保守派の宇宙人のUFOに乗せられた。泉さん曰く、宇宙には刑務所のような施設があるらしい。 「ボスは倒したけど、まだ侵略派の宇宙人が残っているから、みんな気を抜いちゃダメよ」 「はい! どんな敵が現れても私と慎さんの愛のパワーで救ってみせます! ね? 慎さん」  シトラスは俺の腕を自身に腕に絡ませてきた。 「あらあら。シトラスちゃんったら大胆ね」  泉さんは亜希子の身体に憑依したまま、反対側の俺の腕に近づき、自信の腕を絡ませてきた。 「けど、慎くんを狙っているのはシトラスちゃんだけじゃないのよ?」 「そ、そんな……泉さんも慎くんを狙ってたんですか?」 「当然でしょう? 私と慎くん……交尾成功率九十七パーセントなのよ」  数値を聞いたシトラスはあんぐりと口を開け、ショックそうにヨタヨタと地面にへたれこんだ。 「そ、そんな……私よりも交尾成功率高いじゃないですか……いや、でも」  再びシトラスは立ち上がり、胸を張った。 「私が慎さんを愛する気持ちに変わりはありません! 慎さん! シトラス! スーパーベストマッチ! アンコントロールスイッチハザード、ヤベーイなんですよ!」 「慎くん……」  シトラスの宣言を全く耳にも貸さず、泉さんは自信の唇を俺の唇に重ね合わせてたきた。  俺は一瞬、自分が何をされたのか分からなくなりそうだった。 「ちょっと! 二人とも何をしてるんですか?」  シトラスが尋ねると泉さんは獰猛な笑みを浮かべた。 「見て分からないの? マーキングよ」 「ムッキー! もう怒りました! 慎さんを掛けて勝負です!」 「しょうがないわね……少々本気を出させてもらうわ!」  二人は傍迷惑な喧嘩をおっぱじめた。もう放っておくことにするか。 「モテモテだね。お兄ちゃん」 「ああ。不思議と……全く嬉しくないがな」  最終章 コズミックな日常    ハヤカとの戦いから一ヶ月が経過した。その後は特に宇宙人とも出会わず、変わらない毎日を送っていた。 「ねぇねぇ。聞いてよ、慎くん。この間、盛岡のお婆ちゃんのところに行ってさ……」  生徒会室で二人、俺は亜希子と駄弁りながら、泉さんとシトラスが来るのを待っていた。二人は用事があると行って遅れると今朝連絡が入っていた。  泉さんはもうじき始まる学園祭のクラスの出し物の準備で、シトラスはクラスの演劇の練習で遅れるそうであった。  ちなみに俺と亜希子の方は特にそこまで忙しくなく、こうして二人で話す時間が増えた。  それにしても、この生徒会室のメンバーで純粋な地球人は亜希子だけか。 「ああ、それで?」  盛岡か。俺は行ったことはないが、岩手県の県庁所在地でなんかわんこそばとかが有名だった気がするな。 「それでね! ちょっと盛岡で有名な手相占いのお店で占ってもらったんだけど、私、宇宙人の血を引いてるんだって!」  うん? 「な、なんだそれ……さすがにそれは嘘だろう……おかしなことを言う占い師もいるもんだな」  俺がぶっきらぼうな態度を見せると、亜希子はムムッと眉を潜めた。 「けどね、私。昔から不思議な力が使えるんだよ!」  なんだと? 「へー、どんな?」 「例えば急に遠くの光景が見えたりとか。これとか当たってる? 昨日、慎くん。部屋でパソコンでOmaeTube見ながら、ラノベ読んでなかった?」 「ああ、当たってる……」  こいつ、本当に? いや、たまたまという可能性も…… 「ちなみに何ていう宇宙人の血を引いているのか分かったりするのか?」 「うん! 『ハイドロネアウンドロ星人』っていう宇宙人の血を引いてるんだって!」  亜希子の言葉を聞き、俺は天井を見上げた。なんということだろうか――ある日突然俺の前に宇宙人が現れ、毎日がコズミックな日常となった。
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