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第14話

 当時、ワシは仙台空港のパイロットとして勤務していた。仙台行きの飛行機を操縦していた時だった。  突然、飛行機の目の前にUFOが現れ、テレパシーのようなものでこう語りかけてきた。  ――ワタシハハイドロネアウンドロセイトイウホシカラキマシタ。  ――アナタトコンタクトサセテイタダキタクオモイマス。  ――リョウショウシテイタダケルノデアレバホンジツノハチジ二オシラセスルバショマデキテクダサイ。  すると頭の中に家の近くにある公園が浮かんできた。そして、UFOがどこかに消えていってしまった。  最初、ワシは頭がおかしくなってしまったのかと思ったが、気になって試しに行ってみることにした。 「そろそろ約束の時間だな……」  すると、一瞬空が明るくなった。ゆっくりとレーザービームのような光がワシの足元に差し込み、ゆっくりと空から美しい女性が降りてきた。 「初めまして、ハイドロネアウンドロ星人のセミノールと言います。私の話を信じてくれてどうもありがとう」  陶器人形のように白い肌、サラッとしたきめ細かい黒い髪。無表情で鋭くこちらを見つめる目力。  その女性の容姿、仕草一つ一つがワシの琴線に触れた。 「いえ、それで一体どう言う要件で俺を呼び出したんでしょうか?」 「私をあなたの家にかくまってほしいの」 「はい、ぜひ!」  すぐさまワシは後に自分の妻となる女性を家に連れ込んだ。 「な、なんだ三人とも……その冷たい目は」  おじいさんは恥ずかしそうにコホンと咳払いした。 「いや、おじいちゃん。随分と節操ないなって」 「ガーン!」  詩織に容赦ない言葉を浴びせられて、おじいさんはショックを受けたようであった。 「それでおじいさま。それからすぐに結婚したんですか?」 「う、うむ……まぁ、そうだな」  ワシはセミノールから色々とハイドロネアウンドロ星人の話を聞いた。  セミノールは侵略派と呼ばれる地球を狙う集団に身を置いていたがある時、嫌気が差し抜け出したそうである。  なんでも彼女の夫が侵略派に所属していたため仕方なく入っていたそうだがあまりにも卑劣な行為に嫌気が差し、単身一人で地球から抜け出したらしい。  侵略派を抜けてからは一人で侵略派と戦い、壊滅直前まで追い込んだ。しかし、残党に狙われる日々が続き、身を隠すためワシに接触してきたということだった。  セミノールと一緒に過ごしてから一年が経った頃、ワシは彼女に結婚を申し込んだ。  最初、セミノールは戸惑っているようであった。当然である。彼女にはすでに結婚している相手がいるのだから。  しかし、セミノールはようやく首を縦に振ってくれた。  セミノールは「地球であなたと一緒に過ごしていけるならとても幸せ」――そうワシに言ってくれた。ワシとセミノールの間に一人の子が生まれた。  それがお前たちのお母さん、夏美だった。夏実はセミノールと同じく、不思議な力を使うことができた。  相手の心を読み取る能力。時間を操る能力も使えると言っていた。だが、セミノールが使っていたワープに関して、夏美は使うことができなかった。 「待っておじいさん。時を操る能力? どういうこと?」 「夏実はな。時を止めたり、時間を巻き戻したり早めたりすることができるらしい。もっとも、時を操る能力はあまり使わないようにしたみたいだがな」  し、知らなかった。お母さんが時を操る能力を使えたなんて。俺ももしかしたら、時を進めたり、巻き戻したりすることができるのか? 自分で気がついていないだけで。 「おじいちゃん! 私もワープできるよ!」 「おお、そうなのか。すごいな」  詩織は確かにワープを使うことができる。イメージした場所にワープすることができるが、ワープした先がイメージしたはるか上空だったりしたことがある。  以前、「京都に行こう!」ということになり、詩織にワープをしてもらったところ、空の上にワープし、ヒヤヒヤしたことがある。あの時は時を操る能力を何度も発動させ、なんとか着陸に成功した。帰りは普通に新幹線で帰った。 「それにしてもハイドロネアウンドロ星人の中に侵略派がいたなんて……私も驚きでした」 「まぁ、少数ではあったみたいだが。セミノールが戦ってくれなかったら間違いなく今頃地球は侵略されていただろう」  結構、地球って危なかったんだな。天国にいるおばあちゃん。地球を守ってくれてありがとう。 「ここまで話したから伝えておかなければならないことがある。さっき、セミノールが言っていた夫のことなんだが……セミノールと夫の間には子供がいたんだ。二人な」  ドクンと心臓が大きく鼓動した。 「ま、マジか……」 「ああ。ちょっと三人とも待っててくれ」  おじいさんは椅子から立ち上がると、写真を取りに別の部屋に移動した。  思いの外早くおじいさんがリビングに戻ってきた。 「これがセミノールの腹違いの子供だ」  俺は写真を見て驚愕した。写っているのは若い女性であった。容姿はシトラスと瓜二つであった。 「これ……私のお母さんです!」  シトラスが叫んだ。俺は冗談かと思ったがおじいさんはさほど驚いた様子を見せず、落ち着いていた。 「やっぱりか。実は昔、お嬢ちゃんのお母さん、タンゴールがワシらに会いに来たことがあってな。シトラスという子供がいると言っていたんだ」  しみじみとした口調でおじいちゃんが語った。 「ま、待てよ……おじいさん。それじゃ、シトラスは俺の従姉妹ってことか?」 「そうなるかな」  おじいさんが頷いた。衝撃的な事実に驚きを隠すことができない。 「そうなんだ……慎さん! 私たち、親族みたいですよ!」 「シトラス、お前。なんで嬉しそうなんだ……」 「えー? だって、親族だからって結婚できないわけじゃないじゃないですか! もしも兄妹とかだったらショックですけど」  まぁ、確かにシトラスの目的はあくまで子作りだからな。そこでふと疑問が浮かんだ。 「なぁ、シトラス。お前の母さん。今はどうしてるんだ?」  すると、シトラスは顔を強張らせた。 「母はすでに亡くなりました。侵略派の宇宙人との戦いで」 「そうか。悪いことを聞いたな」 「いえ、気にしないでください。母は最後まで地球のために戦っていたと聞いています」 「タンゴール、亡くなってしまっていたのか。それは残念だ」  おじいさんはシトラスの母親は訃報を聞いたおじいさんは悲しそうな表情を受かべた。 「ねぇ、おじいちゃん。その持っているもう一枚の写真は?」  これまで黙って話を聞いていた詩織が右手に持っているもう一枚の写真について訊くとおじいさんはさらに衝撃的な事実を述べる。 「これか? 実はセミノールは元夫との間に『二人』子供を作っていてな。これがタンゴールの姉にあたる女性だ」  おじいさんは俺たちにもう一枚の写真を見せた。 「なぁ、シトラス。この女性ってさ……」 「ええ。そっくりですね」  おじいさんの話によるとこの写真はシトラスの母親からもらっていたようである。おじいさんは写真に写っている女性とは会っていないようであった。  俺はその後、おばあちゃんが使っていた能力について詳しく話を聞いた。  おばあちゃんが相手の心を読む能力は同じハイドロネアウンドロ星人には発動しないらしかった。  確かに俺はシトラスの感情を能力で読み取ることができないため、納得がいった。そして、さっき見た写真の女性。  これであの写真に映る女性の子供が誰なのか推測することができた。正直、まだ信じることができないが。 「お前たちに渡しておくものがある」  おじいさんはリビングの中にあるタンスから何かを取り出そうとし、「これを受け取ってくれ」と銀色のトランシーバーのような機械を渡した。 「これは……」 「交尾成功率測定器……おばあさまのものですね」 「そうだ。お前たちが持っていた方が役に立つだろう。今のワシには何もすることができないが……どうか地球を守ってほしい」  おじいさんが軽く頭を下げた。シトラスはそんなおじいさんに対し、 「任せてください! 私の大好きな地球を必ず守ってみせます!」  と宣言した。  その日、俺たちはおじいさんの家に泊まり、次の日に仙台を観光することにした。 「す、すごい! 伊達政宗像ですよ! 一緒に写真を撮りましょう!」 「わーったよ……」 「ふふ、シトラスさん。すごく楽しそうだね」 「そうだな」  瑞鳳殿や仙台うみの杜水族館など主要な観光スポットを廻ったのち、おじいさんから渡されたお金を元手に牛タンを食べ、新幹線で東京へと戻った。 「楽しかったですね! 仙台」 「ああ。色々とすごいことも発覚したけどな」 「ですね……」
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