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第13話
ゴールデンウィークが終わり、五月も半ばを迎える頃。
「すごく綺麗な眺めだねお兄ちゃん!」
「そうだな」
新幹線の外には東京ではあまりお目にかかれない緑豊かな田園風景が映っていた。
「仙台市、私も行ったことがないのでとても楽しみです!」
俺と詩織、シトラスは新幹線に乗っていた。
俺たちが向かっているのは宮城県仙台市。東北地方最大の都市として名を馳せている。ちなみに牛タンが有名だ。普段、地元の人は割高のためあまり食べないらしいが。
ちなみにどうして、俺たち三人が仙台市を目指しているかというと、箱根温泉を終えてから数日後、自宅にて。
「夢……ですか?」
ご飯を食べている最中、シトラスが首を傾げてこちらを見つめた。シトラスはちょくちょくこうして自宅にやってきてはご飯を食べにやってくる。
俺は二人に旅行で見た夢について告げた。お母さんのお母さん……つまり、おばあさんが宇宙人であるという話についてだ。夢なのであてにならないと思うが。
「ああ、夢で母さんが言ってたんだ。祖母が宇宙人だってな……まぁ、夢だから俺の記憶違いだと思うが」
すると、シトラスが立ち上がった。
「行きましょう」
「い、行くってどこに?」
「どこって……そのおばあ様に会いにですよ! 慎さんの妻である私も挨拶をしなければなりませんからね!」
「し、シトラスさん……その……おばあちゃんは……」
詩織はもぞもぞと何かを言いづらそうな様子を見せた。まったく、しょうがないな。
「シトラス。ばあさんはすでに亡くなっているんだ。三年くらい前にな」
俺が告げると、シトラスは申し訳なさそうに顔をうつむかせた。
「す、すみません……無神経なことを……」
「気にするな。ばあさんも結構、長生きしたしな」
「おじい様はまだ存命ですか?」
「ああ、最近はあまり連絡していないが……」
最後に見たのはおばあさんの葬式の時であった。泣いてはいなかったものの、物寂しそうは表情をしていたのが記憶に刻まれている。
「では、おじい様に話を聞いてみましょう! きっと何か分かるはずです!」
自信満々に提案するシトラスであったが、色々と懸念すべき事項がある。
「けどな……訊くっていったってどうやってだよ? いきなり、『おばあさんが宇宙人なのか?』って訊くのか?」
「そこら辺については私にお任せください。それじゃ今度の土曜日、三人で仙台市に行きましょう! ついでに色んなところを観光に行きましょう!」
シトラスは行く気満々のようであった。それにしても仙台で観光ね……地味に観光名所少ないんだよな。知り合いの仙台市民もツイッターの坊◯の選手権で自虐していたくらいだしな。
こうして、俺たちは仙台市に向かっているという訳である。
「間もなく、仙台に到着いたします。お降りのお客様はご準備ください」
もうすぐ仙台に到着する。俺は荷物を手に持ち、出口へと向かった。俺の後ろに詩織とシトラスがついてくる。
「おじいちゃんと会うの、久々だね!」
「そうだな」
一応、おじいさんにはおととい詩織と共に仙台に来るということは伝えておいていた。久々に会うが、変わらず元気でいるだろうか。少し不安になった。
新幹線を降り、仙台駅の地下鉄に乗った。おじいさんは泉区というところに住んでいる。近年では仙台市のベッドタウンとして発展している。
泉中央駅に降り、徒歩でおじいさんの家を目指した。家は駅からそう遠くはない。歩いて十分ほどで到着できるほどの距離である。
長々と続く、街路樹を通り抜けていく。
「なんか、私緊張してきました……おじいさまに対して妻って言ったらどんな反応するんでしょうか?」
「いきなり妻と名乗るのは止してくれ」
多分おじいさん、驚いて心臓止まるぞ。すると、シトラスが嬉しそうな表情を見せた。
「いきなりということは、妻として認めてくれたということですね?」
「そういうことじゃねぇよ」
「二人とも、相変わらずラブラブだねー」
「はい!」
ダメだ、話していると調子が狂う。やがておじいさんの家が見えてきた。木造建ての古い家は厳かな雰囲気を感じさせる。
「おじいちゃんの家だ! すごい懐かしいね」
「そうだな」
家の前に到着し、俺はドアのインターホンのボタンを押した。
「はーい」
すぐに俺と詩織の祖父である竹内任(たけうちつとむ)が扉を開けた。
「おじいちゃん、久しぶり!」
詩織を見るとおじいさんは顔を綻ばせた。
「久しぶりだな、詩織。来てくれてすごく嬉しいよ。慎も久しぶり。それより……そこのの銀髪のお嬢ちゃんは?」
「えっと、その……」
思わず口もんだ。おじいさんは早速、シトラスについて訊いてきた。まぁ、そりゃ訊くよな。頼むぞシトラス。上手い感じでおじいさんに説明してくれ。
「初めましておじいさま! 私の名はシトラスと申します。地球から五十光年ほど離れたところにあるハイドロネアウンドロ星からやってきました」
「あちゃー……」
思わず頭を抱えそうになった。こいつ、考えがあるって言ったの、普通に説明しやがった。
「は、ハイドロネアウンドロ星だと……?」
おじいさんは目を大きく見開いた。おじいさんから驚愕といった感情を読み取ることができた。
「そうか。確かに婆さんとどことなく似ているな。三人とも上がりなさい。詳しく話してやろう」
おじいさんの家に上がった。案内された部屋にはソファーやテレビ、棚など古くから使っているものが置かれている。
俺たち三人はソファーに腰掛け、おじいさんはテーブルを挟んで向かい合うように反対側の椅子に座った。
テーブルにはおじいさんが「よかったら」と用意したチョコの詰め合わせと三人分のお茶が置かれている。
「おじいさん。俺、実は夢で見たんだ。母さんが婆さんのことを宇宙人って言ったのを。夢だから嘘かなって思ったんだけど、気になっておじいさんに聞きに来た」
「そうか。慎。確かにお前の言う通り、婆さんは宇宙人だ。そして、お前たち二人にはハイドロネアウンドロ星人の血が流れている」
驚愕の事実を聞き、俺は頭が追いつかなくなりそうであった。
「嘘だろ! どうしておじいさんは宇宙人と結婚したんだ?」
「ちょっと待ってくれ。その前にシトラスちゃん……だったかな。ハイドロネアウンドロ星人という証拠を見せてくれるか? 君も使えるんだろう? 不思議な力を」
「分かりました!」
シトラスが頷くと、バイロキネシスで右手から赤い炎を発生させた。
「なるほど、炎を発生させる能力か。確かに君はハイドロネアウンドロ星人のようだ」
おじいさんはあっさりとシトラスがハイドロネアウンドロ星人であることに納得したようであった。
「それでさっきの続きだけど、どうしておじいさんは宇宙人と結婚したんだ?」
「そうだな。あれはワシが二十三の時だったかな……」
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