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逃がさない

 黒のジャケットにズボン、腰から下げるカード入れ……短い黒髪と赤い目……ルイが現れた事に口を開けて驚きを見せていたのは、召喚札師(リスナー)、クロス。 「……ルイ、なのか?」  考えるよりも先にルイはクロスに飛びつき抱き着いていた。状況を飲み込めておらず突然の出来事に倒れかけたクロスだが、何とかルイを受け止めて彼女の温もりを感じながら理解し始める。 「……カードが、あなたの所へと導いてくれた。ずっと、会いたかった……」  声が震えてちゃんと言えたのかわからない。だがそんなことはルイにはどうでも良かった。  覚えがある感触、温もり、息遣い……間違いなくクロス本人。目から溢れる涙が頬を流れ、クロスもまた彼女がここまで自分を求めていたのを……改めて感じ、目を閉じる。 「すまなかった。色々……」 「……さない」  何かをぼそっと言ったルイの片手がクロスから離れるとカード入れへと伸び、メアリのカードを引き抜くと魔力を込めてキッと強くクロスを捉え睨みつける。 「絶対に許さないし逃がさない! メアリ!」 「えぇ、このうらやましい男にちゃーんとお仕置きしないとね……!」 「ちょっと待……」 「問答無用!!」 ーーー  場所は変わりエレメンタリス中央部プラッタの街の宿屋。日もくれた頃、ベッドへと寝かせられるのはクロスだった。  ルイは部屋の扉に鍵をかけて窓のカーテンを閉め、その間にメアリがクロスを逃がさない為か何処からか取り出した手錠で手足を捕らえ、彼のカード入れも奪い去る。 「お前ら何のつもりだ。こんな事……」 「あらクロス、前に散々言ったじゃない。女を怒らせると怖いって……ふふ」  自由を奪われたクロスの頭側に座るメアリは嬉しさを覗かせ、ルイもまた小さく息をついてからベッドに座るとクロスに乗りじっと彼を見下ろす姿勢を取る。 「まったく……何も変わってなくて安心しすぎた。もっとも、二度と一人で逃がすつもりもないけれど……」 「……悪、かった。心配、かけ、た」  やや言い難そうに謝罪を述べたクロスだが、ルイもメアリもゴミを見るような眼差しをやめることなく継続。困り果てたクロスが目を逸らすとすぐに顔を向け直され、ジーッと二人で見下し続ける。  二対一、メアリの言うよう女を怒らせると怖いというのを体感させられたクロスは観念し「ごめん、なさい」と精一杯の謝罪を述べると、ようやく二人の目つきが穏やかなものになった。
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