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可能性

 メアリを仲間(アセス)としてさらに一ヶ月、旅を始めてから四ヶ月……未だにクロスは見つけられなかった。  彼女の案内でクロスの仲間(アセス)達の所へと赴いたものの、彼が何処へ行ったのかは検討もつかずメアリもまたそれが分からずにいた。  世界中の至る所を調べに調べたがまだ見つけられない……これだけ見つからないとなると、クロスの方があえて見つからないようにしている可能性すらある。  今何処で何をしているのだろうか……エレメンタリス東の水の国アンディーナ国の城下町を歩きながら、かつてここでクロスと歩いた事を思い出しつつ行方を考えていた。 (忌々しい記憶が多いわね……ここで、クロスに髪飾り貰ったのよねあんた……ほんと忌々しい) (これはその……あいつが、勝手に……)  嫌味を言い続けるメアリとのやり取りにも慣れるルイだが、身につけてる髪飾りがクロスからの贈り物……彼の言葉を使えば息抜きの礼、とのことで貰ったのを思い返し小さく笑みを浮かべる。 (……ここにもいないわね。他に心当たりは?) (初めて会ったプラッタの街も、あいつが昔住んでたサラマンディスの渓谷も見たがいた形跡はなかったし……他に、あいつが行きそうな場所は……)  全てを見て回ったがクロスはいない。ふと、ルイは何かに気づいてカード入れからとあるカードを引き抜いた。  それは、呪文(スペル)カードという召喚札師(リスナー)が使うカードの一つ……その一つ転送(リープ)のカードだ。  本来の使い方は使用者の記憶にある街へと一瞬で移動するというカードだが……ルイはじっとそのカードを見つめつつ人気のない所へ移動するとカードに魔力を込める。 (灯台下暗し、か……もし、このカードが自分の記憶にある場所だけでなく、思う相手のところへもいけるとしたなら……)  特別なカードである転送(リープ)のカードに関してルイはある事を思い出した。それは、クロスとの旅の中でサラマンディス国へと行こうとした際、クロスが転送(リープ)を使おうとしてもかつて彼が住んでた家には行けなかった事だ。  その時は本人が記憶にない場所、一度赴いた場所だとしても印象が薄ければいけないという事がわかっただけだが……もし、強い思いがあれば行ったことがない場所としても、行けるのではないかと。場所ではなく特定個人の場所へも、行けるのではないか。 (クロス……私はあなたとこれからを生きたい。あなたと一緒に……もし、あなたが、私を思うなら……カードが、つないでくれるはず……!)  魔力と共に強い思いをルイは込め、そのカードを掲げ発動する。 「呪文(スペル)発動、転送(リープ)!!」  その瞬間、ルイの身体が光に包まれて城下町から消えて一瞬で別の場所へと転移する。  目を開くとそこは焼け焦げた家屋と崩れた石材が並ぶ場所……そこに、ルイは覚えがあった。 「ここは……エメリア、か?」  かつてここには国があった、ワンドの育ての親と共にルイもまた騎士として幼少より仕え、そして……滅亡の際にワンドともう一人の従者と共に脱出した。  エメリア国……その跡地……脱してからは来た事がなかった場所、変わり果てても面影が残る思い出の場所。ふと振り返ると、そこに、待ち望んだ瞬間があった。  
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