3 / 9

愛する者

 クロスの足跡は見つけられずに三ヶ月が経過……エレメンタリス南方のナーム国領内の森の中をルイが進んでいると、覚えのある気配を感じて足を止めて周囲を見渡す。  視線を感じる……息を潜めてこちらを捉え、虎視眈々と機会を窺っている。  カード入れへ手をかけようとしたルイだが、それを止めて敵意を解いてゆっくり拓けた場所に立つと、辺りを再び見回して声を上げた。 「いるのでしょう、メアリ」  その名を口にした刹那、ルイの頭上より何かが覆い被さってそのまま仰向けに押し倒すと青白い鎌二本が首交差するように突きつけられ、そのまま拘束する。  現れたのは濡烏の髪をかんざしで止め、赤紫色の着物のような被膜を纏う美しい女性型の魔物……幽魔蟷螂(ゆうまとうろう)。鋭い目つきでルイを捉えるのは、クロスの仲間(アセス)でもあるメアリだ。 「泥棒猫が名前を気安く呼ばないでほしいものね……挙げ句クロスを探し回ってるとか……」 「ここ数日、あなたの気配は感じていた……もし、クロスの居場所を知ってるなら……」  冷静に話すルイへメアリは鎌のトゲを首に軽く刺して制止をかけ、恨めしそうな眼差しでじっとルイを捉えつつ体重をかけてルイを完全に抑え込む。 「卑しい泥棒猫……後から来たくせに、クロスと心を寄せ合って……支え合うだけでなく、彼の想いすらも独占するなんて許せない。私はあなたより長くいたのに、私が魔物でなければ……私が人間だったらと何度も叶わぬ願いをしていたのに……あなただけは、許せない」  身体を微かにメアリは震わせつつも、声は冷静に……決して荒ぶる事がないように努めているのがルイにも理解できた。  クロスの仲間(アセス)の紅一点、そして彼へ積極的な愛を寄せているのはよく知っているがクロスがそれに応えなかったのも、理解している。  だがこうして彼女だけがいるのを見ると、彼女もクロスとの契約を解いているということ……一人になるために、全ての仲間(アセス)と別れたのがわかった。 「……それでも、私はこの胸の想いを変えるつもりはない。あなたにここで殺されたとしても、私は、彼を……」  ルイが言い切るよりも前にメアリが腕を振り上げて鎌を顔めがけて振り下ろす。が、それはルイの頬を掠めて地面に刺さるに留まり、決して目を閉じる事なく自分から目を離さなかった彼女の想いの強さを……メアリは理解し、目を静かに閉じる。 「……私と契約しなさい。近くでその想いが本物かどうか見てあげる」  突然の提案にややルイは驚くものの、メアリがすっと腕引いて鎌を畳んで袖口へと隠して立ち上がり、そっぽを向きつつルイに手を差し出す。 「メアリ……あなた……」 「勘違いしないで。あなたを見張るならば仲間(アセス)でいる方が効率がいいだけのこと……彼の気持ちを裏切る事があれば、その時は殺すから」  同じ者を想う者同士……争ってもクロスが哀しむのはルイもメアリもわかっていた。が、やはり今すぐにとはいかないのもあり、またルイもメアリの思いに応える為にもクロスを見つけたいと強く強く思いながらカード入れより契約用の白紙のカードを引き抜いた。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!