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旅に飛び出す

 異世界エレメンタリス……空中に浮かぶ国、帝都と呼ばれるエンペリオス。  かつては空中にあったその国は、全ての力を使い果たして地上へ落ち……召喚札師(リスナー)達とその契約した存在、仲間(アセス)達によって墜落を免れ地に根を張る道を歩み出す。  そんな中で、彼女は一人走っていた。紫色の美しい長い髪を靡かせ、レースのついた赤のブラウスと黒のレギンスを着た人物……ややヒールのある銀をあしらった靴で駆け回り、慌てて誰かを探していた。 (何処にもいない……本当に、一人で……)  足を止めてぐっと強く手を握り締めて心を抑える。それから髪につけている白い花を象った髪留めを外して手に取って見つめ、軽く握って目を瞑る。 (クロス……私は……)  ルイが探してるのはクロスという人物……大いなる戦いを終えてから姿を消し、自身の仲間(アセス)を一体残し手紙を置いて行っていた。  まだ近くにいるかもしれないと考えて帝都中を見て回ったが姿はなく、心に大きな穴が空いたような気持ちが広がり不安となっていく。 「ルイさん! クロスさんはいましたか!?」 「ワンド様……いえ、やはり、彼は……」  ルイの元へと走ってきたのは栗色の髪に青い目をした背の低い少年ワンド。ルイの主であり、彼を守る為にクロスも旅に同行する事となり……その中で彼を知り、共に戦い支え合い……芽生えたものが、互いにあった。  クロスの手紙にはしばらく一人になって考えたい、心配はいらないとあったがルイの心はそうではなかった。やがて、ワンドが何かを言う前にルイはある事を決意して腰にぶら下げていた白の四角い箱上のもの……召喚札師(リスナー)のカード入れから一枚を引き抜き魔力を込める。 「契約破棄(コントラクトブレイク)! ワンド様、私は……あいつを一人にさせない!」  そう言い切ったルイの傍らに現れるのは金髪赤目の翼を生やす赤の戦乙女ローズ。ルイの仲間(アセス)であり、契約を解除した彼女の意思を理解していた。 「ルイ……ありがとう。私は大切なものを取り戻す事ができた、感謝している」 「私こそローズには感謝しきれない……でも今は、私は私の意思で旅に出る。ワガママを言う私を許して」 「わかっています、後のことはあなたの仲間達と共に……あなたはあなたの大切な人の所へ!」  仲間(アセス)召喚札師(リスナー)との繋がりが強い程に互いを理解し合う。ローズはルイと軽く抱きしめ合ってから彼女の背を押すように笑顔で言葉を贈り、ルイもローズとワンドに頭を下げてから振り返らずに帝都の外へと走り出した。 「ルイさ……」  状況をいまいち飲み込めなかったのもありワンドは呼び止めかけたが、ローズが手を前に出して首を横に振るのを見て何となく理解を示し口を紡ぐ。  全てが終わった今、彼女が自分を守る必要はない。これから先は彼女自身がどう決めるかが大切……クロスを探しに行くと言うならば、止める権利はないのだから。
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