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第二章七節3

 フィンがアマツの傍に駆けつけて腕を掴んで立たせると、やや慌ててアマツがゼクスをカードへと戻しその絵柄を見て顔を俯かせる。 「ゼクス……ごめんな……」 「アマツ……」  主導権を完全に握られていた。ワンドはこちらの性格や戦い方を見抜いてそれを利用し、完膚なきまでに叩きのめされてしまった。  微かに体を震わせるアマツの方へ駆け寄ってきたハントを肩に乗せながらワンドがゆっくり近づき、ある言葉を口にする。 「召喚札師(リスナー)は常に冷静であるべし。怒りや悲しみを胸に秘めて糧とし力とし、カードに思いを込めて戦う者……僕の尊敬する召喚札師(リスナー)達は、それを胸に戦い抜いて願いを勝ち取ってきたんだ」  召喚札師(リスナー)の矜持。いつの頃からか、その言葉は召喚札師(リスナー)の間に広まっていたものであり、アマツとフィンも何処かで耳にはしたことがある言葉。  腕試しとはいえ負けた事でアマツはその言葉を身を持って痛感していた。落ち着いてカードを采配していれば、冷静に相手を見ていれば結果はまた違っていたのかもしれない。  同時に、ワンドはそれを教える為に腕試しを挑んだのではないかと考える。そしてそれは、彼が理想としている召喚札師(リスナー)クロスがいたなら、同じ事をしたのではとも。  ゼクスのカードを改めて見つめ直す。何となく、ゼクスが頷いた気がした。 「俺も、まだまだ、だな……」  ゼクスのカードをカード入れにしまってフタを締めたアマツが上を見て大きく息を吐く。まだまだ自分は弱い、自分を助けてくれた召喚札師(リスナー)と会えた時に今のままでは恥ずかしいだろうし、ザナディアルトで勝ち残るのも難しいだろう。  だが、それを気づかせてくれた人がいる。偶然の出会いで知り合った人がいて、そして自分には仲間もいる……これから、強くなればいい、共に強くなれば、いい。 「っし!反省終わり! ワンドさん、ありがとうございました」  いつもの調子に戻ったアマツがワンドと顔を合わせ頭を下げる。知り合って間もない自分に召喚札師(リスナー)として、人として本気で関わってくれる……敬意を払うに値する相手だと改めて思えたから。  「どういたしまして。僕の事は呼び捨てで構わないよ、その方がアマツ君らしいしね」 「じゃあ、ワンド。これからもよろしくな!」  明るさを取り戻したアマツが差し出した手をワンドも微笑みながらとって握手を交わす。召喚札師(リスナー)として互いを意識し高め合い、時には力を合わせ競い合う……ザナディアルトの目的を二人の姿を見てフィンはふと思い出し、心が温かくなる気がした。  無論それは握手を交わす二人も同様なのは、言うまでもない。 next…
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