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第二章七節2

「へぇ……音波攻撃だね。珍しいな」 「感心してる、場合ではないぞ!」  沈着冷静、天真爛漫、全く驚く素振りもないワンドに片耳を手で塞ぎながらギルツが訴え、それに応じる形でワンドもまたカードを引き抜き魔力を込める。 「道具(ツール)使用、沈黙の首飾り。これを、ゼクスに装備するよ!」  ワンドが使ったのは道具(ツール)カード。それにより、ゼクスの首にぶら下がる両手で口を閉じる牧師を象る不気味な首飾りがぶら下がり、同時にゼクスの咆哮がピタリと収まった。  道具(ツール)カードは仲間(アセス)を対象として装備させたりするカード。呪文(スペル)のような回数制限による消滅こそないが、仲間(アセス)への適性があるかによって真価を発揮するものである。  ワンドが使ったのは相手に対して使う道具(ツール)カード。その効果で声を失ったゼクスが空中で翼をばたつかせて慌てるが、すぐにアマツが支援に入った。 「落ち着けゼクス! 呪文(スペル)発動呪い剥がし! 俺の仲間(アセス)の不利な効果を打ち消すぜ!」  アマツの呪文(スペル)によりゼクスの首に下がっていた沈黙の首飾りが砕け散って消滅、これにより声を取り戻したゼクスではあったがその間にドラゴンハートの効果も時間切れとなってしまい、舌打ちしつつアマツがワンドを睨みつけると微笑みで返されてしまう。 (この野郎ゼクスが動揺するのわかってあんなカード使ったな。しかもご丁寧に追撃しないってのも気に入らねぇ……!)  ドラゴンハートによる強化は絶大である。だがそれは効果が持続してる間のみであり、時間が過ぎれば失われてしまう。  ワンドはゼクスの攻撃を封じると共に動揺を誘い、その対処にアマツがカードを切るまでの間ギルツに攻め込ませる事をしなかった。本来ならば、ゼクスにカードを使うまでの間に攻撃を仕掛けるのは十分に可能であるし最善手である。  手加減されている、そう思うとアマツの闘争心に火がつき手を強く握り締めて闘志を昂ぶらせ、ゼクスもそれを受けて咆哮をしてから空中を蹴ってギルツに弾丸の如く突撃し、これを真っ向から刃で受け止めたギルツだったが大きく後ろへ飛ばされ円環(サークル)へと叩きつけられてしまう。 「やれゼクス!」  衝撃でギルツが無防備となり、アマツの闘志を込めた指示に咆哮で応えたゼクスが一気にギルツとの距離を詰めて脚の爪で襲いかかる。  確実に相手を仕留められる、そう思った刹那、ギルツはゼクスの攻撃を紙一重で横に避けると共に両手の刃の向きを変え、力強く武器をゼクスの腹に打ち付けアマツの方へ叩き飛ばしてみせた。  一瞬の出来事にアマツは状況を理解するのに数秒の間を作ってしまい、咄嗟にカードを切るべきタイミングでゼクスの身を案じてしまう。 「ゼクスっ!しっかりしろ!」  身体を震わせながら痛みに打ちひしがれるゼクスに声をかけるアマツ。切られたわけでないが、ただの一撃でゼクスが血を吹いて倒れてしまい、何とか声に応えようとするも身体が自由に動かないらしく上手く立てずにいた。  そうこうしてる間にギルツがゼクスの上へジャンプして両手に持つ半月状の刃をゼクス目掛けて投げつけ、ちょうどゼクスの首を挟むように地面に突き立った刃の勢いにアマツも驚き尻餅をつく。  着地したギルツはその気になればゼクスにとどめを刺す事もできただろう。だがあえてそれをせずに地面に突き立てて動きを封じたのは、いつでも倒せるという意志の現れでもあった。 「……僕の勝ち、でいいかなアマツ君。ギルツさん、お疲れ様」  尻餅をついてゼクスに目だけ向けてやや茫然自失のアマツが我に返った時には既にワンドはギルツをカードに戻しており、消え行く円環(サークル)の光でようやくアマツは自分が負けた事を悟った。
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