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第二章七節

「嵐を引き裂く翼広げ、荒々しく天を砕け!ゼクス!」  先に仲間(アセス)を召喚するのはアマツ。そして召喚されるのは戦闘竜リンドヴルムのゼクスだが、昨日とはその姿が異なるのにワンドは気付く。  鈍色の鱗を持つ前傾姿勢のドラゴンで三角形の頭部と後ろに伸びる左右の角は変わらず、腹部分の赤みを帯びた白い鱗も同様。だが全体的に見て昨日よりも背中に生やすトゲが短く、腕も小さく肘のトゲもなく、代わりに脚の爪が太く発達し退化していた翼が巨大化し飛行可能な程となっている。  形態変化(モードチェンジ)の能力を持つリンドヴルムのもう一つの姿、昨日のそれが陸上での戦いに特化した姿ならば今日のは飛行特化と言えるとワンドは考え、内心驚きつつも微笑みを絶やさずカードに意思を込める。 「風よりも速く駆け抜け道を切り開け!ギルツさん!」  ワンドが高らかにその名を呼びながらカードを掲げ、吹き荒れる風を纏いながら彼の前に膝をついて姿を見せる仲間(アセス)。  漆黒の毛並みを持つ鋭い眼差しを持つ豹、否、片膝をつき黄色の軽鎧を纏うそれは獣人。成人男性よりやや長身の豹戦士と呼ばれる種族である。 「ギルツここに参上。ワンドよ、指示を」 「目の前の彼とその仲間(アセス)の力を確かめたいんです。よろしくお願いしますね」 「心得た!」  目元に浮かぶ黄色の紋様を煌めかせながら鎧から黒地に黄色のマントをなびかせながら答えたギルツが立ち上がり、両手に持つ半月状の刃を擦り合わせてから広げて威嚇し、ゼクスもこれに応じるように吠えて臨戦態勢を示す。 (黒豹の戦士か……普通に地上戦に付き合う必要はないな)  豹戦士にはいくつかの種族が存在しているが、いずれも地上を目にも止まらぬ速さで駆け抜ける足の速さを持つ。だがその分立体的な攻撃、空中からの攻撃は不得手という。  飛行特化の今のゼクスならば有利に立てるとアマツは考える。やや狭いものの、攻撃や回避に必要な高さも広さも十分にある。  アマツの考えを受けたゼクスが翼を大きく羽ばたいて飛翔し、すぐさまギルツ目掛けて脚の爪を開いて高速で飛び掛かる。  猛禽類が襲いかかるように脚の力のみで攻撃を仕掛けた形だが、金属音と共にギルツは爪を半月状の刃で受け止めており足に力を入れてこらえていた。 「なるほど……確かに手強いな、が、甘いぞ!」  ゼクスの力を感じつつギルツはさらに足に力を入れて地面を踏み砕くと、体躯の差など感じさせない勢いでゼクスを押し返してみせた。そして一瞬無防備となったゼクスに向かって切りかかるが、これは咄嗟にゼクスが尻尾を使って鱗で受け流し対処。  先手を打ったが逆襲され、だがその攻防でアマツとゼクスは相手の力量をおおよそ推し量る事ができた。無論、ワンドとギルツも同様である。 「やるじゃねーか。やっぱあんた強ぇな」 「褒めても何もあげないよ」 「なら俺がくれてやるぜ!呪文(スペル)発動ドラゴンハート!」  微笑むワンドに応える形でアマツが呪文(スペル)カードを使用、ドラゴンハートの効果により赤いオーラをまとったゼクスが咆哮と共に飛び上がると天を仰ぎながら大きく息を吸い、そしてギルツ目掛けて口より放つのは螺旋状となった咆哮。  円環(サークル)の外にいても響き渡る甲高い咆哮には観戦していたフィンとハントも耳を塞ぎ、空気を激しく揺らしながらギルツを襲う。
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