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第二章六節

 アンナの宿の一階の廊下を抜けて扉を出るとそこは四方を壁に囲まれた中庭のようになっており、程よい広さを持ち隅にベンチがあるなど何かの競技スペースと言えるものである。  アンナの提案でそこへ行くように言われたアマツはフィンとワンド共に赴き、そこでワンドがそのスペースについて教えてくれた。 「ここは召喚札師(リスナー)の練習場だよ。泊まってる人ならいつでも利用できるし、結界魔法がしてあるから円環(サークル)を張らない訓練もできる。セルトさんはまだ来ないみたいだから、時間潰しも兼ねてちょっと腕試ししようよ」 「いいぜ!」  召喚札師(リスナー)の街ならではの宿の設備。そこでワンドが提案した腕試しの言葉にアマツはすぐに飛びつき、それには頭を抱えるようにフィンも呆れつつも、ワンドの実力には興味があった。  世界最強と言われる召喚札師(リスナー)に憧れるとはいえ、穏やかに微笑みを絶やさない彼からはとても強者と言えるような雄々しさや、相手を怯ませる威圧感などは全くない。弱々しい、とまでは行かずとも、とても実力者とは言えない雰囲気ではある。  アマツもワンドが戦いを避けるようにしていたのにも関わらず提案したのは内心驚いてはいたが、何かの意図をもってるのは間違いない事、そして同じ召喚札師(リスナー)として彼の誘いを断る理由もない。 ーーー  距離を取って向かい合うアマツとワンドの二人。フィンは見学ということでベンチに座り、ワンドの肩から降りたハントも足早にベンチに飛び乗ってそのまましゃがみ観戦する姿勢を見せる。    対峙してみても、ワンドの雰囲気は変わってはいない。もちろん実際に彼が臨戦態勢となればまた変わるのかもしれないので、油断大敵ではあるのだが。 「で、ルールはどうする?」 「一体でも仲間(アセス)破壊(ブレイク)した時点で負け、エスケープ等の脱出系呪文(スペル)は使用なし、円環(サークル)はあり、でいいかな?」 「あぁ、その代わり手加減すんなよ!」  召喚札師(リスナー)同士の腕試しは対戦前にルールを話し合って決めて行う。ワンドが提案したルールを快諾したアマツは臨戦態勢となり、左腰のカード入れのフタを外しワンドをしっかりと捉える。  かたやワンドはと言うとアマツの臨戦態勢を前にしても穏やかに微笑むだけ……静かに自分のカード入れに手を置き、準備万端という事を小さく頷いて伝えた。 (本当に選考会突破したのか……? まぁ、やればわかるか……)  召喚札師(リスナー)機関ディバイダースの隊員とも面識があるワンドなら、コネを使って選考会をスルーするのはできない事もないだろう。が、そんな姑息な事をするような人間ではないのは関わっていてわかるし、本戦で試練を受ける事も考えるとコネで選考会を受けないのはメリットが弱い。  穏やかな様子を保つワンドにやや不安も感じつつも、アマツは彼と合わせて円環(サークル)を展開。同時にカードを引き抜き魔力と己の思いとを強く込めた。
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