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第二章五節

「へぇ……プラッタでそんな事があったんだねぇ」 「おかげで試験も無事受けられたんでワンドさんには感謝してるっす。でもだからといって戦う時は手ぇ抜く気もないっすけど」  カウンター席にてアンナにワンドとの出会いについてアマツは話し、隣に座るフィンもまた相槌を打つように頷きその後ろにある囲炉裏の席に座るワンドも微笑みながら耳を傾けていた。  自分の家にいるような懐かしい雰囲気には自然とアマツも心癒され会話も弾む。それがこの宿の魅力でもあるのだなと感じつつ、壁に飾られている召喚札師(リスナー)達の功績の数々に目を向け、それについてワンドへ質問を投げかけた。 「そいやあそこのやつってワンドさんのはあるんすか?」 「ほんの少しだけね。自慢になるようなものではないよ」  これに関しては実際に壁の前へ行ってみてアマツは確かめてみる。ワンドの名前を探してみるが中々見つからず、唯一あったのが召喚札師(リスナー)機関ディバイダースの捜査に協力した召喚札師(リスナー)の名前としてあるものと……とある一枚の写真であった。  宿の前で撮られたと思われるそれには今よりも少し幼さの残るワンドと、その左隣に白いジャケットに黒髪の青年召喚札師(リスナー)がハントを乗せて小さく微笑んでいる。写真外の枠には、宿屋前にてクロスとワンド君のツーショットと書かれている。 「あぁ、その写真の人が僕の憧れの人でハントと契約してた召喚札師(リスナー)だよ」 「へぇ……って、よくよく見たらここにある奴のほとんどクロスって人のっすね」  召喚札師(リスナー)クロス。何処かで聞いた名前だなとアマツもフィンも感じつつ、アマツは壁に飾られている勲章や感謝状のほとんどがそのクロスという人物のものであり、古いものから比較的新しいものまで存在していた。  そして窪みのスペースに置かれている召喚札師(リスナー)のカードをモデルとした大きな金の楯があり、それにもクロスの名前があった。同時にその楯には、第一回ザナディアルト優勝者クロス・セラフィムとも彫られており、ここで聞いた名前の答えが理解できた。 「って、クロスって最初のザナディアルト優勝者のクロス!?」 「うん、そうだよ。僕も参加したけどこてんぱんに負けたんだ」  第一回ザナディアルト優勝者クロス・セラフィム。最初のザナディアルトにて優勝を果たした世界最強の召喚札師(リスナー)とされる人物。  そのクロスに憧れ、目標としてるというのにワンドの謎が一つ解けた気がした。それほどの相手を目標としてるならば並の召喚札師(リスナー)よりも高みを目指すのは当然であるし、自分と同じくより強い相手を求めているのかもしれない。 「その楯は家にあるよりこっちのがいいってクロスが置いてったんだよ。ウチとしてもあのクロスが使った宿って宣伝になるっちゃなるしね」  ザナディアルトの優勝者に贈られる記念品を提供するクロスとはいかなる人物なのだろうか。少なくとも、穏やかに話すワンドやアンナの口ぶりから悪人ではないのが伝わってくるし、その強さがいかほどなのかも気になって仕方ない。  そして、自分もまたいつか彼と相対してみたいとアマツは思えた。 「そのクロスって召喚札師(リスナー)とも、いつか戦ってみたいな……その為にも強くならねぇとだけど」 「それなら、腕試ししてくかい?」  いつかの未来を思うアマツに、アンナが提案を出して彼を振り向かせた。その意図を察したワンドは小さく頷き、抱きかかえていたハントを肩に乗せ直した。
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