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第二章四節2

 賑やかな表参道と異なり比較的静かな居住区といった様相であり、すれ違う人も落ち着いている様子が伺えた。  何故ワンドがここに来たのかはアマツもフィンもわかってはいない。宿を取るにしては時間的には早すぎるのもある。 「なぁ、どうしてこんなとこに来たんだ?用事か?」 「うん、昨日話した通り認定召喚札師(リスナー)と会う約束取り付けたからね。ここで待ち合わせてるんだ」  ゆっくり歩きながら訊ねるアマツがワンドの口から認定召喚札師(リスナー)の名を聞いた途端、アマツの目が輝き始めるも落ち着かせるようにフィンが脇をどついて悶えさせ、代わりに話を進める。 「どんな人なんですか?」 「とても真面目で良い人、かな。最近は仕事が忙しいみたいだから戦うのはもちろん会えるかわからなかったけど、快く会ってくれる事になったよ」  召喚札師(リスナー)と言っても中には本業と兼任する者もいるし、能力こそあっても表立って召喚札師(リスナー)と名乗らない者もいれば、引退している者もいる。  この世界における召喚札師(リスナー)の重要性は大きいが、それ故に災いとして畏怖されるものでもある。自ら名乗らなかったり、引退している者がいるのもその為。  ワンドが紹介する認定召喚札師(リスナー)も忙しいということらしく、会う事はできるようだが戦えるかはわからないとの事。それにはアマツの熱が一気に冷えて顔を下げて肩も落とす落ち込みにも似たものへと早変わりし、ワンドも苦笑こそするも目的地となるとある宿の前で足を止めて扉を見つめた。 「さ、着いたよ。この宿で待ち合わせてるんだ」  宿は木造のやや古びた造りながら手入れが行き届き、年季が良い味を出して独特の雰囲気を持つ。宿の名前は、アンナの宿というようだ。  ワンドが扉を押して開けアマツ達も続くとそこは味わい深い木造の室内。囲炉裏と畳、和を思わせるその様式は何処か懐かしく落ち着いた。  壁側にあるのは様々な召喚札師達の功績を記した新聞記事の切り抜き、あるいは彼らが大会等で勝ち取ったトロフィーやメダルが無数にあり、比較的新しいものから古いものまで多種多様にある。  やがて奥のカウンターの方に気配を感じワンドが一人先へ赴き、のれんを捲りながら現れる初老の恰幅の良い女性がワンドを見て声を上げた。 「ワンド君じゃないか!ずいぶん立派になったじゃない!」 「ご無沙汰してますアンナさん。今日はここでセルトさんと待ち合わせしてて……それから、僕達の宿もここにしようかなって考えてます」  女性の名はアンナ。この宿の女将でありワンドとは顔見知りのようだ。  再会の喜びも程々にアンナはワンドの後ろにいるアマツとフィンに目をやり、やや緊張した様子のフィンが頭を下げるのに笑顔で応え、召喚札師(リスナー)達の功績の数々に目を奪われているアマツはフィンに耳を引っ張られ、無理矢理頭を下げさせられる。 「紹介します。アマツ・レンベルト君とフィン・エアレーネさんです、で、アマツ君とフィンさん、こちらの方が女将のアンナさんだよ」  グレムリンのハントがワンドから下りてアンナに飛び移りじゃれつく間にワンドはアマツ達とアンナの紹介をし、ハントをひょいと掴んでそのまま抱きかかえつつ微笑み、アマツとフィンが隣にやってくる。 「二人とはどうして知り合ったんだい?」 「昨日プラッタの街でザナディアルトの選考会をしていて、その時に知り合ったんです。これから二人と一緒に大会を勝ち抜こうって思ってます」  ふと、ワンドの言葉にアンナが怪訝そうな顔を見せ、それにはアマツ達も首を傾げた。 「でもワンド君は……」 「わーっ!!と、とにかく二人と一緒に旅する事になったんです!」  慌てた様子でアンナの言葉を遮ってさらに話を終わらせるワンド。突然のそれにはアマツとフィンは驚きつつも彼の素性に対する疑問が増え、アンナは何となく事情を察したのかそれ以上は言わず、カウンター内からコップを取り出し、三人の為の飲み物を注ぎ始めた。
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