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第二章三節2

「ま、さっさと行くなら行こーぜ。戦うのはあんたがその気になるまで待つよ」  闘志を滾らせながらもそっとフタができている。少年らしい快活さの中に垣間見えた大人の側面は、ワンドも小さく頷いて応えてフィンにも手を掴むよう促す。 「それじゃあ行くよ。呪文(スペル)発動、転送(リープ)!」  ワンドの呪文(スペル)の発動と共に三人は閃光に包まれ、それが晴れた瞬間に目と耳に飛び込むのはとても広く大きな通り、そしてそこを行き交う老若男女多様な人の群れ。  紺碧の色を持つ壁の建物がいくつも並ぶそこはリックランプの中央区。広場に建つ巨大な掲示板にはいくつもの紙が貼られており、その前には数十人もの人々がその中から自分に必要なものを探していた。  また向かいの店には|召喚札師《リスナー》の使うカードを取り扱う店がずらりと並ぶ他、色鮮やかな果実を扱う商店など生活に欠かせない店も存在している。  そして街中を包む客寄せの声や遠くからでも聞こえる歓声など賑わいがすぐにわかるその雰囲気にアマツとフィンは圧倒され、その様子を微笑ましく見守っていたワンドはパンと手を合わせて鳴らしつつ二人の前で顔を合わせる。 「急に広いところに出たから驚いちゃったね。ここがリックランプだよ」  雰囲気に慣れてる様子のワンドの言葉でアマツとフィンは我に返り、揃って深呼吸をして改めて街の雰囲気を確かめる。  何処もかしこも人だらけだが、よく見ると腰などに召喚札師(リスナー)が持つカード入れを持つ者がほとんどであり、召喚札師(リスナー)が大半なのだどわかった。そして召喚札師(リスナー)以外の者も召喚札師(リスナー)に声をかけている事が多く、何かをやり取りしているのが目に映る。 「召喚札師(リスナー)と……召喚札師(リスナー)に売り込む商売人がほとんどですね」 「ここは召喚札師(リスナー)にとっては重要な場所だからね。カードの売買、情報提供に腕試し……召喚札師(リスナー)に必要なものは全てあるから、ほとんどの召喚札師(リスナー)がここを拠点にするんだよ」  フィンに答えつつワンドは肩のハントを頭に乗せて街を見回す。賑わっている様子に喜びを感じてるのか、満面の笑みで街の雰囲気と様子とを味わっているようだ。  召喚札師(リスナー)のための街。それを納得できるだけのものがすぐに分かり、アマツも自然と心が高鳴り体が動きそうになる。 「早いとこカード買うなりしに行こーぜ!うずうずしてきた!」  子供のような純粋な眼差しと思いにフィンは呆れつつもその気持ちを理解し、ワンドもまたアマツの気持ちに応えるように店に目を配り始める。これだけ多いとそれぞれの店も客取り合戦が強く、その召喚札師(リスナー)にとって最適な店もあればそうでない所もある。  人の数も多いのでなるべく必要以上に動かないようにと考えていると、頭に乗っているハントが垂れた耳を立てて何かに反応し、それにワンドも気づいてハントが耳を立てた方に目を向けしばらく一点を見つめ続けた。 「何かあったんすか?」 「……いや、気のせいだったみたい。ここも、僕の大切な人との思い出の場所だから、ついね」  目を閉じて微笑むワンドが昔を懐かしむのをアマツはしばし見つめる。これだけの人混みの中で何かに気付けるのは余程の者だろうが、少なくとも今は彼の言うように気のせいということにしておくのが良いと思えた。  同時に、ワンドが見た方向に意識してみると誰かが同じように微笑んだ気がした。まるでワンドに応えるように優しく、そして次の瞬間には消えていて……旧友とすれ違い挨拶するかのような、そんな気がした。
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