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第二章三節

 上着を着て身支度をアマツは済ませる。部屋を出ると向かいの部屋のフィンも準備を終えて出てきたらしく、鉢合わせる形となる。 「よ、おはよー」 「おはよアマツ。なんかこんなのも久々だね」  明朗に答えたフィンの言う事はアマツも思う事ができた。故郷の村にいた頃は顔合わせする機会も多く朝の挨拶も当たり前ではあったが、召喚札師(リスナー)として外に出るようになり、旅を始めてからはフィンと会っても共に行動するとまでは行かなくなっていた。  連絡こそ定期的にフィンからとってはいたものの、幼馴染同士が共に召喚札師(リスナー)として行動するのには思う事もある。 「まー俺達ももうガキじゃないし、自分の事は自分でやれるようにはなってるしな」  やや欠伸混じりのアマツのその言葉がフィンの胸に少し刺さる。幼い頃は一緒によく遊び、召喚札師(リスナー)としての修行も共にしながら駆け出し時代を過ごしたものだ。  やがて互いに実力がついてからは一人で行動する機会も増え、今はほぼ独力で生活するに至る。  寂しさはある。今回、アマツからザナディアルトに参加する旨を聞いて応えたのはそうした思いも少なからずあるのだから。 ーーー  共に二階から降りて一階のエントランスへ行くと、既にチェックアウトを済ませたワンドがハントを肩に乗せて待っていた。アマツ達に気付くとニコりと穏やかに微笑み、爽やかな印象を強くする。 「おはよう二人共」 「おはよーっす」 「おはようございますワンドさん」  挨拶も程々にアマツとフィンもチェックアウトを済ませてワンドの元へ赴き、これから向かうリックランプへ行く方法について話し始める。 「リックランプにはどうやって向かうんですか?」 「歩きだと四日くらいかな? 仲間(アセス)の力を借りれば一日もかからないけど、それより早く着く方法はあるよ」  フィンの問いにワンドが答えながらカード入れよりカードを引き抜く。金縁のそれはカードの持つレアリティの最高位を示すものであり、絵柄は魔法陣の上に立つ魔道士の姿と天より伸びる光が魔法陣から昇る光と合わさり、何かの術を行う絵柄である。右隅に呪文(スペル)カードである事を示す回数が書かれてるが、そこには∞を示す文字がかかれておりアマツとフィン は一瞬目を疑った。 「これは転送(リープ)って呪文(スペル)カード。エレメンタリスの賢者様が認めてくれた人に渡す最上級呪文(ハイアークスペル)なんだ。このカードの力を使えば一度行ったことのある街にも一瞬で行けるから、リックランプにもすぐ行けるよ」  ますますワンドが何者なのか、只者でないのが分かるがそれすらも氷山の一角と思えて仕方ないとアマツとフィンは感じていた。同時に、だからこそアマツの闘志も高まる。 「それでリックランプについてカード補充したらさ、俺と勝負してくれよ」 「それは遠慮しとこうかな。僕の仲間(アセス)は気分屋だから、その気にならないと戦ってくれないんだ」  唐突に話題を切り出してみてもワンドは微笑みながら上手く戦いを避けていた。口をへの字にして悔しさが表情に出てしまうものの、アマツはまず彼の闘志に火をつけてその気にさせなければならないのを考えた。  恐らく、彼が大会を共に突破しようと言い出したのも自分の何かを感じ思う事があったから。自覚はないが、その何かを自覚した時にワンドは戦ってくれるのだと……不思議と冷静に分析でき、小さく深呼吸してからカードを持つワンドの手を掴んだ。
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