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第一章十節2

 プラッタの街のザナディアルト選考会は無事終了し、後片付けが行われる夕暮れの噴水広場。  選考会を通過したアマツ、そしてフィンに話があるとしたワンドは自分の事を詳しく聞きたいという顔をした二人に微笑み、穏やかに話し始める。 「もし君達が良ければ、一緒に大会を通過したいなって思ってるんだ。僕もまだ試練は何も通過してないしね」  ザナディアルト本戦は世界各地を回る為、その間にチームを組むのも個人で戦うのも自由である。一人では困難なものも仲間と共に乗り越える事、あるいは強大なものへ一人果敢に挑むのも選べる。  ワンドが一体何者なのか、それに関して彼は質問しても微笑んで答えてはくれない。旅をする中でそれが見えてくるかもしれないとはアマツもフィンも感じていた。 「わたしは構いませんけど……ワンドさんって、本当に何者なんですか?」 「ただの召喚札師(リスナー)、と言っても信じてくれない顔してるね。そうだな……」  何者か気になってしょうがないという疑問が顔に出ている少年少女にワンドは一度苦笑し、肩に乗るハントを一度撫でてから目を閉じ夕日の方に顔を向け、何かを思い出しながらゆっくりと話し始める。 「僕がまだ小さい頃に、見知らぬ僕とこの街で出会ってずっと守ってくれた人がいるんだ。人として、召喚札師(リスナー)として大切な事を教えてくれた人……その人が今回出てるかはわからないけれど、最高の舞台で感謝を伝える為に僕はザナディアルトに参加したんだ」  プラッタの街で偶然出会い、その日の夜に燃え上がるの街にて荒れ狂う強大なる存在を前に諦めた幼い自分を助け、優しく微笑みかけてから仲間(アセス)である火竜を召喚し、召喚札師(リスナー)としての強さを見せた人がいる。  それからずっとその背を見てきた、力の使い方を習い……大切な事を多く学んだ。  懐かしさを噛み締めつつも夕陽を見つめるワンドの目は未来を見ていた。奇しくも、アマツは自分の幼い頃に自分を助けてくれた召喚札師(リスナー)の姿が重なって見えた気がした、同じように自分も助けられたから……憧れを抱き、強くなりたいと願えたきっかけがあったから今ここにいる。 「ザナディアルトには色んな人が色んな目標を持って参加し優勝を目指している。誰が師匠だろうと、生まれが何処であろうと関係ない……僕も君達も、召喚札師(リスナー)として胸に秘めた思いをカードに込めて戦うのは同じだから。ただの召喚札師(リスナー)っていうのはそういう意味だよ」  生まれも育ちも関係なく、人は思いを胸に前に進む。召喚札師(リスナー)はさらにその思いをカードに込めて戦うことができる、そこに違いはない。  ワンドが自分の素性を明かさないのは理由があるのかもしれない。だが、少なくとも彼が召喚札師(リスナー)として目指すものがある事、自分達と同じように目指しているのは間違いないのはアマツとフィンは理解できた。 「いつか僕の事はちゃんと話すよ、それは、ここで約束するよ」 「あぁ、わかった。これからよろしくな」 「よろしくなって……ま、いっか。よろしくお願いします」  約束と共に手を差し出したワンドにアマツが手を取って応え、フィンもまたアマツの態度に呆れつつも手を置いて三人の旅を始める事を決めた。  始まりの街で召喚札師(リスナー)が新たな始まりの一歩を踏み出す。 next… 
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