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第一章八節2

「待てゼクス!」 「ガアァァッ!!」  アマツの声にも応じずゼクスは鋭い爪を持つ手を開き、力任せに掌底をソードラスの身体へと当てつつ首に噛み付く力を込めて凹ませていく。  獰猛な見た目そのものの闘争心、召喚札師(リスナー)の指示を無視して戦闘を行う凶暴性……ケビンはゼクスの種族が何か、すぐに理解した。 「リンドヴルム……! まさかまだ生きている個体がいたとは……」  力任せにソードラスを円環(サークル)の壁へ投げ伏せたゼクスが天に向かって咆哮し、大気を震わせまるで勝ち名乗りをするのようだった。  と、呼びかけていたアマツの声に気づいたのか咆哮をやめるとすぐに駆け寄り、目を閉じて鼻先を寄せて甘え始める。 「ルルル……」 「いてぇ!いてぇってお前! ったく、言う事聞けよな、ゼクス」  頭にもトゲがある事から痛がりつつもアマツはゼクスを撫でて落ち着かせ、目を合わせるとゼクスは頷き改めてケビンの方に向き直る。 「リンドヴルムを仲間(アセス)としていたとは君は本当に驚かせてくれるね」 「こいつは俺がガキの頃に卵を見つけて育ててたんだ。ま、ちょっとやんちゃだけど……」  ケビンに答えたアマツの話については、フィンがワンドに詳しい話をしていた。リンドヴルムという種族、それがいかなるものかについても。 「戦闘竜リンドヴルム……ドラゴンとしては階級は低いけど、獰猛な性格からどんな相手にも挑んだっていう種族だよね」 「はい。ワンドさんも知ってのとおり、リンドヴルムはその性質から人の手で絶滅させられた種族です。でも偶然なのか、アマツの家の地下に大きな洞窟があって、そこにあった卵からゼクスが産まれたんです」  戦闘竜リンドヴルム。獰猛さをそのまま表したような高い戦闘力と凶暴性を備え、目に映るもの全てに襲いかかったという。  それ故に召喚札師(リスナー)ですら持て余し、結局は駆除されるに至った悲しき種族。その唯一の生き残りとも言えるゼクスは、アマツが卵から育てたのだという。 「わたし達の故郷はサラマンディス国にあるタールって村なんです。あそこは太古の自然がそのまま残ってますから、たまに絶滅した魔物も見つかったりします」  サラマンディス国はエレメンタリス西側の火山の国。そこには凶暴な魔物も多くおり、未踏査地域も多い。  それ故に絶滅した魔物が生息してる例はいくつもあり、リンドヴルムであるゼクスもまたそうした存在なのは容易に想像がつく。 「なるほど……それにしても、アマツ君とゼクスはいい関係を築けてるね。特にゼクスは凶暴ってだけじゃなくて、とても仲間思いだ」 「え? 仲間、思いですか? いつもあいつは言う事を……」 「彼はイザヨイがやられた事に怒ったから一気に仕掛けたんだよ。やられたらやり返す、っていうのかな、とても良い子なのが僕にはわかるんだ」  ワンドの不思議な言葉にはフィンはキョトンとするしかなかった。リンドヴルムは人語を話せないので意思疎通ができてるのかわからないこともある、だが、ワンドはまるで全て理解してる口ぶりで、アマツとゼクスの繋がりとその思いを見ているようだった。
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