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第一章六節

 駆け上がったイザヨイが身体に巻く帯のようなものに意思を込め、それにより帯が水の玉となってイザヨイの身体の周囲に数珠繋ぎに螺旋を画き始める。  そしてアーマイトの頭につくと目を見開き、それと同時に水の玉が一斉にアーマイトの頭目掛けて放たれそのまま貫き文字通り蜂の巣とする。 「水狐(すいこ)とは恐れ入ったよ、でも、その程度はアーマイトには効かないよ!」  アマツのイザヨイを称賛しつつケビンが強い言葉を発すると応えるようにアーマイトが巨大な手を開き、イザヨイを捉えにかかる。すぐさま身体を翻したイザヨイだがそのまま落下し、下から振り上げられる大斧の刃が目前に迫った。 「させるかよ!呪文(スペル)発動、ソリッドガード!」  アマツがカードを引き抜き魔力を込め、そして詠唱と共にカードの力が解き放たれる。  イザヨイの周囲に青い膜のようなものが現れたかと思うとそれがアーマイトの斧を防ぎ止め、その間にイザヨイはするりと体勢を変えつつ着地しアマツの前に一旦下がった。  アマツが使ったのは呪文(スペル)カード。召喚札師(リスナー)が使えるカードのひとつであり、ソリッドガードは仲間(アセス)に対して物理攻撃を防ぐ結界を展開し守るというものだ。  一度使われた呪文(スペル)は再使用までには時間が必要であり、使用回数が存在しそれが尽きれば消滅する。また、呪文(スペル)を無効化する呪文(スペル)も存在し、そうしたものでもカードは消滅してしまう。  さらにカードを行使する為には召喚札師(リスナー)の魔力が使われ、強力なカードほど魔力を大きく消費する。仲間(アセス)の召喚とその維持、呪文(スペル)などを使うための魔力の消耗を計算し、召喚札師(リスナー)は勝利の為に筋書きを描かねばならない。  ソリッドガードのカードをカード入れへ戻しつつアマツは次の手を考える。強大なる相手、素早さではイザヨイは勝っているが単純な力は負けている……そしてケビンがアーマイトに対して呪文(スペル)などでの支援をしてくる可能性はあり、それも読みきらなければならない。 (アマツ、どうするのです?) (ゴーレムってことは人造仲間(ゲアセス)……専用カードを使ってくるだろうから、その前にケリをつける!)  召喚札師(リスナー)仲間(アセス)は思念を用いての対話ができる。心と心の通信により連携を可能とし、やがて対話せずとも以心伝心が可能となる。  人造仲間(ゲアセス)とはゴーレムをはじめとする人工の魔物の総称。仲間(アセス)と区別する為につけられたものだが、基本的な性質は代わりはない。  アマツが分析を終えて闘志と共にカードを引き抜く。それに応えるようにイザヨイも天に向かって咆哮し、水の帯を再び纏うとアーマイトの足下目掛けて駆け出す。  これにはケビンは目を細めて警戒を強めた。何かを狙ってくる、そしてそれが何かを素早く分析し思考を張り巡らせる。 (水狐(すいこ)は水を操る種族、先程の魔法の威力を鑑みれば足下をぬかるみにするくらい造作もないはず……)  巨大さ故に重さがあり、足場が悪ければ掬われるとケビンは分析。イザヨイの能力もしっかりと考慮し、カードを引き抜きつつ先手を打つ。 「呪文(スペル)発動マジックプロテクト。この効果によりアーマイトに対する全ての魔法効果・呪文(スペル)効果を無効化する」  白い光がアーマイトの全身を覆いマジックプロテクトの呪文(スペル)が付与される。その上で足を上げてイザヨイを踏みつけようとアーマイトは仕掛け、土煙舞う中を華麗に疾駆したイザヨイは水の帯を脚先に纏わせていく。
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