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第4話

火柱を背にしつつ走り抜ける。僅かに背中に熱さを感じたが、しかし状況的にそれどころではないのだ。体力の限界まで疾走する。息が切れたところで後ろを振り返る。誰も追ってくる気配はない。逃げ切れたか。 「はぁ……はぁっ……逃げ切れたようだな」 しかしそれにしてもだ、あれは何だったのか?魔法なのか、それとも何か別のモノなのか?早速聞くことにしようか、OK? 「OK.ミーミル、さっきのアレは、何だ?」 「すいません、もう一度聞かせてください」 「さっき魔法陣のようなものが空間に出現したが、あれはなんだよ」 「……ガーベジコレクションに問題がある?インスタンスが残ったまま存在しているのか……そもそもカプセル化されているはずなのにパラメータが操作……」 「おいこらおっさん日本語で答えろよ!」 「結論から言うなら、わからん」 だったらさっきの意味不明な呪文はなんなんだよ、ボケが始まったのかミーミルのおっさん。知恵の神がボケたら存在意義なくなるぞ。 「わからんっておっさんなぁ……このままだと俺犯罪者だろうが、もともとそのつもりだったが」 「とはいえ、何が起こっているかわからないと迂闊に行動もできん」 「そうだな。しかしお前わからんのかよ知の神なのに」 「原因はわからないが、起こっている現象は推測がつく」 どういうことか理解できない。何が起こっているか推測できるというなら教えてくれよおっさん。 「何が起きてんだよ?」 「おそらく、この世界の魔力の流れに穴があるのだ。そしてお前はその穴に触れてしまうようだ」 「穴に触れたら何が起きるんだ?」 「例えば先ほどのように、インスタンスに触れた時にインスタンスが予期せず実行されてしまうことがある」 「日本語で言ってくれ」 ミーミルに冷たい目で見られている気がするが、わからないものを放置するより恥でもきちんと聞く方が自分のためになる。 「……なんというか……魔法の元となる部分に触れることや、魔法の塊に触れると魔法が発動する、といえばわかるか?」 「魔法の塊?なんで魔法の塊があるんだよ」 「神人の魔法無効化の際に、魔法の塊が無効化空間に格納されるのだ。その魔法塊は、一定の間隔で消滅するようだな。しかしだ、お前が無効化空間の穴に触れると、魔法が発動する」 なんてこった。魔法使えないと思ったらとんでもない方法で魔法が使えるんだな。にしたって、なんで俺がそんなことできるんだ?そもそも魔法の穴とやらが見えたり魔法の穴に触れるって人間離れしてないか。 「おいおっさん、俺になんかやっただろ」 「なんかやったっていうがな!仕方ないだろが!死んでたんだぞお前は!!」 「具体的に何やったか説明してみろおっさん」 「死んでたお前の身体を復元しようとしたがそのままだと完全に死にそうだった。そこで新規に身体を構成した」 「人間って280日くらいお腹の中で作られてんだぞ!それをお前、何作ってんのおっさん」 「それはそうだが、臓器レベルなら作ってんだろが人間ですら。知の神なめんな」 「だったら身体を復元しろよ!」 「復元より作り直した方がマシだったんだぞ!急造品だから不具合だってあるのは仕方ないだろうが!」 そりゃいかんな。どんだけひどい状況だったんだよ俺の身体。にしたって急造だとしても不具合あったら困るんだが。 「んで不具合ってなんだよ不具合って」 「具体的には、魔法の塊やら魔法の穴やらが見えて触れる。もっと平たく言うと、この世界の魔法にはお前にわかりやすくいうならバグがあるんだが、そのバグ触れる」 「……それはいいのか悪いのかわからんな」 「実際のところプログラムのバグも使い方によっては有用なものもあれば、大惨事を引き起こすものもあるだろう。それと同じだ」 つまりなんだ、俺はバグ発生機か?なるほど不具合なのはよくわかった。 「それで、不具合の修正はどうしてくれるんだよ」 「しばらくは待ってくれ。すぐにはムリだ。無茶をしたからな」 「頼むぞ不具合修正をよ。でないとこのままじゃあ……ん?奴らが来やがったか?」 初めてこの世界の家を見つけた。小さな木の家である。みすぼらしい、と言ってもいいだろう。なにやら兵士とおぼしき男が家の前で何かを言っている。見つからないように近づく。 「お願いいたします、娘だけは!娘だけは勘弁してください!」 「何を言うかと思えば……租税の義務も果たせぬ者が娘だと?君主様のお子を孕めるのだぞ?ありがとうございますくらい言うべきではないか」 「遅れはいたしますが税は必ずお納めいたします!お願いいたします!」 「えぇいしつこい!連れて行け!」 西洋風時代劇かよ。しかし租税とな。そりゃまぁ税金を納めないってのは問題ではあるな。 「OK.ミーミル、この国の税率はどのくらいだ」 「酷いぞ、50%だ」 「よし、こいつら殺そう」 「待て待て、そのまま突っ込んでも負けるだけだと言っていたではないか」 「見えてるぞ、魔法の穴とやらがまた」 「まさか!おい待てその中に何が入っているかわからないぞ!やめろ!」 ミーミルの制止も聞かず、俺は兵士たちのそばに近寄った。 「ん?なんだお前は?税金でも払いに来たか?」 「バーカ払うわけねぇだろそんなクソ税金」 「なんだと?我らを愚弄するつもりか?」 「愚弄?してんのはそっちじゃあないかよ!こんな圧政で庶民苦しめて何が君主だぁ?」 啖呵を切った俺に、兵士3人が槍を突きつける。見えるぞ例の光が。今度は緑っぽいな。ニヤリと笑って、緑の魔法陣を殴りつけた。 暴風が兵士たちを包みこむ。これは暴風というより竜巻である。竜巻で吹き飛んでいく兵士3人。俺はよくわからないが竜巻に巻き込まれなかったようである。 「あ……あんたなんてことをしてくれたんだ……」 助けてくれてありがとう、くらいいうかと思った男にいきなり文句を言われる。それはそうか、報復を恐れているからな。 「あんたにひとつ言っておく」 「なんだ」 「今のは、自然現象だ」 「自然現象」 「竜巻で運悪く兵士3人が吹き飛んでしまった。目撃者は俺とあんた、そしてあんたの娘だ」 「竜巻」 娘がおずおずと出て来た。おいまだ中学生くらいだぞ!君主とやらはロリコンか?死ね!むしろ殺そう。そう思った。 「そう、竜巻だ。そして俺は今からそのことを伝えに行こうと思う、君主の城に」 「あんた……なんなんだ」 「俺か?」 俺は胸を張り、高らかにこう告げる。 「通りすがりの、一般人だ」 「この辺通りすがりの人まず来ないよ」 娘に冷たく突っ込まれるが、敢えて無視することにする。 「悪いようにはしないつもりだが、もし運悪く何かあったら、さっき言ったことを守ることだ」 「何をだ?」 「もう一度言うぞ、兵士3人が自然現象の竜巻で吹き飛んでしまった。これは、事故だ」 「……無理があると思う」 出産させられると死ぬのにそんな冷静なツッコミされると、ちょっとだけどうなんだそれと思う。
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