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第六章三節a

 死者の苗床。敵味方問わず不死系統の仲間(アセス)破壊(ブレイク)した場合、それによる召喚札師(リスナー)への反射ダメージを無効とし破壊された不死者系統の仲間(アセス)を複製し蘇生するという極めて強力な戦場(ホーム)カード。  戦場カードは呪文(スペル)カードと異なり、必ず敵味方に影響を与え条件次第でメリットを得られる点がある。ただし常に展開される為に召喚札師(リスナー)の魔力消費も激しく、効果によってはそれが発動する度に魔力をさらに使う。  死者の苗床は複製及び蘇生効果を使う程に消費が増す。つまり倒し続ければいずれ息切れはするだろうが、戦場(ホーム)カードを使う以上はそのデメリットをカバーする方法を用いるということ。  悪名高いトリスタンだが、その戦法については全く情報がない。それは彼と対峙して誰一人として生き残った者がいない為であり、辛うじて地属性の使い手というのはわかっている。  が、仲間(アセス)の力を底上げする戦場(ホーム)カードを使うとなると、戦い方を工夫しなければならない。 「死者の苗床に対応できる仲間(アセス)はいないなぁ……二人はなんかある?」 「不死系統に有効な道具(ツール)が少しあるが、焼いた方が早そうだな」 「バカ、この戦場(ホーム)カードには腐敗ガスに誘爆っていう面倒な効果もあるんだぞ。ここは真っ向から、切り捨てるのみ! 我が友にして我が剣、フォトン召喚!」  アミエラの緩い問いに淡々とクロスは答え、それに反論し召喚を真っ先に行ったのはセルト。召喚されたナイトのフォトンは、セルトらと同じようにトリスタンの強さを感じて剣を強く握った。 「ま、やりますかー……可憐に舞え、ナギサ」 「大地を駆けて行け、ダイン」  姿を隠す青紫と新緑の猛禽ネイファルコンのナギサをアミエラは召喚し、クロスは強靭で巨大な身体を誇るダンテライガーのダインを召喚。ダインは召喚されるとクロスに鼻先を寄せてじゃれつくが、軽くクロスが鼻を叩いた事で気を取り直し敵を見据えた。  ふんふんと頷きながらトリスタンもまた召喚すべき仲間(アセス)をカード入れから引き抜く。そしてそれを地面に向かって突き刺し、魔力を送り込んで召喚を行う。 「ポイズングーラーを召喚……さぁ、やろうか」  突き刺さったカードが溶けながら地面に消えると、黒土の地面が複数箇所盛り上がり中から体を腐敗させた様々な人間達……いや、ゾンビが姿を現し、そのヨダレや血液が地面に触れると煙を上げて溶解する。  ポイズングーラー。群体タイプの魔物であり、複数体で一体を成すという特殊な仲間(アセス)。ただし一体一体の力はとても弱く、特殊な力を持つ者もいるがさほど強くはない。  だがポイズングーラーは体内の毒素により攻撃を加えた武器などを腐食させる力があり、当然噛まれるなどすれば毒によって体力を奪われる。無論、囲まれたりしなければその危険はないのだが、死者の苗床という戦場がここに効いてくる。 「なるほどな……だからこの戦場か。フォトン、一気に切り捨てるぞ! 道具(ツール)使用シールブレイク!」  退魔の剣のシールブレイクをフォトンに持たせ、先制攻撃をかけるのはセルト。次いでクロス、アミエラと続く。 「間違ってもあいつらを食うなよ、行け!」 「道具(ツール)使用アンホーリーキラーってね。ナギサ、あたしらはいつも通りのやり方でいつも通り行くよ!」  召喚札師(リスナー)に応えるように仲間(アセス)は吼え、恐るべき異形たるポイズングーラーの群れに襲いかかる。  先陣を切ったフォトンがシールブレイクを用いてグール達を一刀両断し消滅させていくが、その破片が土に取り込まれそこから新たなグールが発生する。ダインは巨躰を活かして前足で薙ぎ払うようにグール達を蹴散らしては円環(サークル)に叩きつけ、それを不死系統への即死効果を持つ爪アンホーリーキラーを装備したナギサが姿を消したまま刈り取っていく。  善戦はしているものの、まとめて不死系統を倒す手段がないのは痛手である。唯一、クロスの持つファイアードレイクのエックスなら焼き尽くせるが、ガスに引火しての誘爆があるとなると使うに使えない。  何より順調に数を減らしているどころか最初よりも数が増え始め、特にフォトンが掴みかかられる場面も増え始める。  死者の苗床による増殖蘇生、倒せば倒すほどに数の暴力が増す。しかも、ポイズングーラーの毒素が徐々にシールブレイク、そしてナギサのアンホーリーキラーを腐食させ始め、効果が弱まることで倒し切れず増殖条件を満たす場面も出てきた。  「やはりまとめて焼き……」 「バカ! お前はともかく僕達まで巻き込むつもりか!」  誘爆などは召喚札師(リスナー)そのものが避けねばならないものであり、召喚札師(リスナー)への攻撃をしないという暗黙の了解の中で例外的に許されるものである。  無論、暗黙の了解なのであって召喚札師(リスナー)本人を狙うのは可能な事。当然ながら召喚札師(リスナー)はそれも頭に入れて戦い抜く。  アミエラは既にその暗黙の了解を破る為にナギサにトリスタン本人への攻撃を実行済みだが、行く手を阻むようにグール達が襲いかかるためにできずにいた。協力してくれと言えばいいのだが、少なくともクロスやセルトはそれをしないと判断し申し出ずにいた。 (セルトはともかく、クロスもだよねぇ……勝ちゃいいっちゃいいんだけど、やっぱ組んでやるのは面倒くさいなー)  召喚札師(リスナー)同士が協力して戦うのはある事だが、個人での戦いが主な為に協力し合える者はそう多くはない。  加えて召喚札師(リスナー)本人の考え方などもあり、それによって生ずる歪みが本来の強さを抑えることもある。まさに今の三人はその状況であり、出だしは良かったが足並みが乱れ始めていた。  戦いを見守るワンド達にはそれが目に見てわかり、トリスタンが気づいているのをワンドが伝えようとするも賢者リムゾンが手を前に出してそれを止めさせる。 「己の危機は己の力で越えるもの……もし彼らが強くなるのであれば、口出しはしてはいけません」  試練……そう思えば黙って見守れるが、誰かが傷つき失われるのは見たくはない。複雑な思いを胸に抱きながら、ワンドは手を強く握り胸の前で合わせクロス達の勝利を願った。
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