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第六章一節

TRINITYー結束し立ち向かうー  リックランプの街より北方、クライサイ山の中腹にまでやって来たワンド一行。麓まではクロスの仲間(アセス)ダンテライガーのダインに乗り、そこで野宿した後に夜が明けると共に山を登る。  決して標高もなく特別起伏もあるわけでとないが、深い森なのに変わりはないために徒歩で行くのは少々大変であった。先を行くクロスは平然としてるものの、ワンドを始め他の仲間達は少々息が上がっている。 「ちょっとさー、急ぎすぎなんじゃないのー?」 「これでも歩幅は合わせてる」  やや不満なアミエラの言葉にクロスは普段と同じく淡々と答え、振り返って足を止めて一行の速度に合わせる。  それでもクロスの足取りを早く感じてしまうのは、肉体的な体力の差というのもあるからか。 「クロスさんは山道に慣れてるようですね」 「育ちが岩山だからな。急がない限りは仲間(アセス)にも頼らないようにしている、頼りすぎれば基礎体力も落ちる」  歩く合間合間で深呼吸を重ねながら進むワンドの質問にクロスはすぐに答え、それを聞いているアミエラとセルトは心当たりがあるのか苦虫を噛み潰したような表情をし、クロスに悟られる前に気を持ち直す。 「召喚札師(リスナー)としての心構えだけは褒めたい所だが、ワンド様に無理をさせるな」 「僕は大丈夫ですよルイさん。ちゃんと自分の足でしっかりと賢者様の所に行きたいですしね」  クロスに嫌味を言うルイにワンドは純粋な眼差しと微笑みと共に答え、少しだけ歩くペースを上げてクロスのすぐ後ろに追いつく。  そして振り返っている彼と目が合うと笑顔を見せ、やや苦笑するクロスの表情からやり取りを推測したルイは少々顔をしかめ、それを確認したセルトもまたやや大雑把に歩を進めてクロスを追い抜く。 「こ、これくらいの山道はどうって事はないさ!」 「そうだな。どうって事はないな」  そっぽを向いてセルトに答え、唇を噛み締めつつ怒りを抑える彼を尻目にクロスはふと周囲に気を配った。  どうって事はない、確かにその通りだがそれにしては楽に進みすぎている。  深い森故に自然に満ち溢れているにも関わらず、麓からここまでの間に動物を一切見ていなければ鳥のさえずりさえない。不自然、と考えるのが筋だがそれが何かまではわからないし、危機的状況と判断するには早すぎる。 (賢者の防御策……それとも……)  賢者リムゾンがいかなる人物かはわからないが、山一つに魔法による結界なり術をかけるくらいはやってのけるだろう。そう思うと不自然さも納得は行くが、一応の警戒はしておくべきとクロスは感じ取る。  そしてそんなクロスの気の張り方の変化を察したセルトとアミエラ、そしてルイもまたさり気なく警戒心を強め、しかし振る舞いはいつもと変わらぬ様相を呈す。  召喚札師(リスナー)の不思議な直感。優れた召喚札師(リスナー)ほど他の召喚札師(リスナー)の変化等を察知し、それに対し素早く順応する。  一番後ろを歩く機械人形のクラブスはそれを感じ取りつつも同じようにいつもと変わらぬ振る舞いを続け、一同は確実に山頂へと足を進めていく。 ――  ワンドに気取られぬように警戒をしながらも、先を行くセルトの視界が開けて山頂部に辿り着く。 「よぉし、山頂についた!」  セルトの元気な声を聞いて後に続いていたワンド達の足も速くなり、いつの間にか殿を務めているクロスは後方に一度目を向け麓から微かに感じた気配を警戒する。  召喚札師(リスナー)の気配、だがすぐに感じなくなってしまい、それでもその場に留まりカード入れに手をかけようとする。が、その手を自分を呼びにわざわざ戻ってきたワンドに掴まれ、振り返って目が合い彼の笑顔に警戒を解かざるを得なくなる。 「クロスさん、早く行きましょう」 「わかった」  確かに感じたが今はない気配。たまたま近くを通った召喚札師(リスナー)がいただけか…手を引かれながらもクロスは考えを続けたが、ひとまずは賢者リムゾンに会うことを優先とし気持ちを切り替える。
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