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第五章二節

 カードを整理したクロスはそれを種類別に束にし、さらにそれを重ねて一つにしてからカード入れへとセットする。  カウンターには束にせずにいるカードが数枚残っており、それは召喚済みのグレムリンのハントが束にして両手で抱え持つ。 「しししっ!」 「……あぁ、圧縮かけてからだな。クラブス、カード圧縮機はあるか?」  何かを期待して垂れ耳をぱたぱたと動かすハントに答えたクロスはクラブスにカード圧縮機なるものがないかを訊ね、しばし考える様子を見せてからクラブスは機械の身体の腹部より四角形の金属の箱を取り出す。 「クラブス、それは何ですか?」 「携帯型魔力抽出圧縮機、通称カード圧縮機デス。仲間(アセス)以外のカードをセットして圧縮させる事でカードを消滅させる代わりに魔力を抽出シテ結晶化させたものを精製シマス」  カード圧縮機についてワンドに解説しつつクラブスはクロスにそれを手渡し、受け取ったクロスが慣れた手つきで圧縮機を開いて不要なカードを入れて閉じ、両手で抑えてグッと力を込めると箱の面が沈み、同時に下側から赤青緑の宝石のような小さな粒が落ちた。 「ししっ! ししし!」  落ちた粒にハントが興奮した様子で手を伸ばすが、その前にクロスは粒を全て手に取って「お前は後だ」と言って指先で軽くハントの頭を小突き、カード入れより四枚の仲間(アセス)カードを引き抜く。  引き抜いたのはファイアードレイクのエックス、ダンテライガーのダイン、黒豹戦士のギルツ、ケルピーのセレッタ。それぞれ並べてその上に結晶化した魔力の粒を均等に置いていき、残りをハントに手渡す。  置かれた魔力の粒は一瞬発光した後にカードへと吸い込まれて行き消滅、ハントも渡された粒をそのまま口に入れて飲み込み満足した様子を見せ、耳をぱたぱたと激しく動かす。 「何をしたのですか?」 「魔力の分配、だな」  魔力の分配、ワンドはクロスの答えを聞いてもイマイチ実感がわかなかった。  元々仲間(アセス)は契約した召喚札師(リスナー)から魔力を常時供給され、わざわざ結晶化した魔力を分配せずとも供給はできる。  不要とは言えカードを損失してまで魔力の結晶を作り分配した理由、それはワンド以外にはすぐに理解しており一人頭を悩ませるワンドを見兼ねたのか、仲間(アセス)のカードをしまいながらクロスが「真化(ネオリューション)の為だ」と一言答えるものの、ワンドは全く理解できずさらに頭を抱える。 「ワンド様を困らせるな」  少々ムッとした表情でそう告げたルイに目を向けたクロスは渋々真化(ネオリューション)の事について、手にハントを乗せてワンドの肩へと移しつつその事について話し始めた。 「そもそも召喚札師(リスナー)と魔物や精霊が契約するのには、自分達が新たな存在へと変化し昇華するのを魔物や精霊が望むかららしい。真化(ネオリューション)は変化して昇華する事、その状態や現象を指す言葉だ。俺の旅の目的の一つ……強くなるって事にはそれも入っている」  なるほど、とワンドは話を聞いて疑問が解決した。どのようにして真化(ネオリューション)するかはわからないが、少なくともクロスが魔力の結晶を与えていたというのはその手段の一つなのだろう。 「それでカードを魔力にしたのですね」 「単純に魔力与えただけじゃならないけどな。俺もどうすれば真化(ネオリューション)するのかは色々試している。少なくとも、仲間(アセス)との信頼関係をきちっと築けてるかどうか、ってのが鍵なのは間違いない、な」  仲間(アセス)との信頼関係。召喚札師(リスナー)にとって仲間(アセス)はかけがえのない存在だが、中には道具として見ている者も少なくはない。  ワンドも信頼関係を築けてない召喚札師(リスナー)というのは何人も見てきている、だからこそ、クロスがそうした召喚札師(リスナー)ではないのがよくわかる。
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