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第五章一節

CHANGEー予定外の仲間ー  気絶したクロスが目覚めてから二日経った朝、ワンド達は未だにリックランプの街のアンナの宿に滞在を続けていた。  理由はいくつかあるものの、大きな理由の一つとしてある情報により予定変更を余儀なくされた事があり、一階のカウンター席に座るクロスの隣に座るワンドはややカウンターに身を乗り出し、向かい側で宿の手伝いとして皿を拭いているアミエラと話をする。  そのワンドの表情は驚きと落胆、囲炉裏の方に座るルイとクラブスもやや驚くが、クロスは平然とカードを整理し続ける。 「本当なんですかアミエラさん、その……エンドさんはもう……」 「うん、間違いないよ。エンド・クラッカーって召喚札師(リスナー)がデミトリア軍の上級召喚札師(リスナー)にやられたーってのはここ来る前に聞いたよ。女将さんにも今確認取ってもらってるけど、間違いない、と思う」  驚愕の理由はアミエラと同じくスカウトするつもりだった召喚札師(リスナー)エンドが故人だと言うこと。アミエラの次はエンドを見つけ、それから今後の動きを考えるつもりだったのだが、既にいないとなると別の者を探すかしなければならない。  しゅんとするワンドに対してアミエラの態度は明るく、他人事であるような振る舞いを見せている。それについてルイが癇に障り立ち上がりかけたが、その前にクラブスが話題を切り出し阻止する。 「で、ではコレからの事を改めて考えマショウ。エンドさんが亡くなっているなら別の方を見つけるしかないデスガ……」 「アミエラさん、僕達の旅についてきてくれるような召喚札師(リスナー)を知りませんか?」   「いないよ〜、あたし基本一人で行動するし他の奴と組んでもそのままトンズラしてたから恨みしか買ってないよ〜」  明るく振る舞うアミエラは手慣れた様子で紅茶をティーカップに淹れてワンドに出し、同じものをクロスの前に置きながら彼に目を向けくすくすと笑みを浮かべる。 「あたしとクロスがいれば大体何とかなるんじゃない? どっかの鉄仮面女召喚札師(リスナー)よりは頼りになるしねっ」 「鉄仮面女とはなんだ! 私が力を使えればお前達がいなくともワンド様を守りきれる!」 「あーこわーいムキになってどん引きー、そんなじゃ彼氏できないですよーっと。ま、召喚札師(リスナー)三人いて一人を守るってのは、ちょっと過剰かもね」  アミエラの挑発にルイがすかさず乗ってしまうのはもう見慣れた光景。もちろんアミエラは冗談半分ではあるが、生真面目故にルイは反応せずにはいられないらしい。  そんな会話の中で話を振られるのはクロス、ワンド一人の為に召喚札師(リスナー)が三人というのは過剰と言えば過剰……相場で考えると割に合うとは言えない。 「この前やりあったルードって奴は本気じゃなかった、俺を見逃したバエルって奴はそいつよりもっと強いはずだ。過剰なくらいでないとワンドと、ワンドの持つ契約の断片書は守れない」  呪文(スペル)カードの使用回数を確認してカウンターに並べて整理しつつ、クロスはこの前の戦いで出会った二人の召喚札師(リスナー)の強さを思い出す。直接戦ったのはルードだが、その後に会ったバエルは戦わず済んだことが奇跡と思える強者。    ルードですら本気を出してない、いや、ルイと同じように出せない何らかの理由があったのは直接戦ってわかった。その両名の強さはもちろんだが、主たるデミトリア本人となれば彼らを遥かに上回るのだろう。  アミエラが過剰とした一人に対しての数人の召喚札師(リスナー)というのも、敵の強さを考えれば充分すぎる……あるいは不足かもしれない。 「ま、あたしとクロスは雇われだから、ワンド君の決定には従うけどね」 「でも……嫌な事は言ってくださいね。僕も無茶な事は言いませんから」  笑顔のアミエラにワンドも微笑んで答え、その様子に一定の信頼が築けてるようには見える。  とは言え、オークション会場より持ち出したカードは必要分は手元に残し、それ以外は最も厳重で世界中何処でも引き出し可能なスプリガン銀行の貸金庫に入れるというアイデアは盗賊故の知恵。スプリガン銀行は本人でなければ何者にも情報開示されない為、気密性が高く資産隠しなどにも使われるからだ。
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