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第四章五節c

 アラーバードのナギをカードに戻したアミエラの頭上より何かが襲いかかる。刹那の出来事だが、既にアミエラは別のカードを引き抜き素早くその場から身を翻して臨戦態勢となる。 「金庫番にしては、随分物騒なのを置いてるのね」  冷静沈着に現れた存在をそう称したアミエラは小さく息を吐いてカードに魔力を込め始める。  頭上より現れた金庫番の正体は鈍い銀色の重厚な鎧を着た兵士、いや、機械人形。両刃の大剣と身丈ほどの大きな盾、いわゆる重装兵だ。  そして、機械人形がルードの人造仲間(ゲアセス)なのはアミエラにもすぐに理解できた。ただしそれは召喚しておいたものではなく、仲間(アセス)化せず警護として配置したものだ。  機械である故に指示を予めしておけば忠実な護衛となるだけでなく、ルードへの制限もない。 「いつもならこんな物騒な奴の相手なんかしたいでとんずらするけど……白羽の矢を立てられた以上は一応仕事をしなきゃね。切り刻んできて、サスツルギ!」  危険を犯してまで盗みを働くのは本来はしない、それでも戦うのはワンドの事を考えてしまうからか。  いずれにせよ目的を果たす為にアミエラは鈍く光る金属の身体を持つ怪鳥を召喚。サスツルギと呼ばれた怪鳥はゆっくりと羽ばたきながら滞空し、アミエラの指示を待つ。 「正直言って力づくは好きじゃあないけれど……そうしなきゃ倒せそうにないもんね。サスツルギ、一気に仕留めるよ!」  アミエラに甲高い叫びでサスツルギは応え、素早く飛翔し一気に急降下。機械人形の兵士に向かって鋭い爪を開いた脚で蹴りかかり、盾で防がれるも盾ごと押さえつけに行く。  苛烈に蹴りを何度も繰り出して盾に切り傷をつけ、さらに抉って破壊しようとサスツルギは攻め続けるが機械人形は盾から手を離して数歩退き、素早く剣を突き出し盾ごとサスツルギを貫き通す。  が、紙一重でサスツルギは攻撃を避けて盾を蹴りつけつつ飛び上がる。しかし今度は機械人形がアミエラを狙って前進し始め、舌打ちしつつアミエラはカードを引き抜く。 「呪文(スペル)発動、プロテクト!」  力強く振り下ろされた剣がアミエラの眼前で何かに弾かれ、機械人形が大きく退けぞる。対象を物理攻撃より守る呪文(スペル)プロテクト、便利ではあるが使い切りなので多様はできないし無駄遣いもできないカードだ。  姿勢を崩した機械人形に再びサスツルギが襲いかかるも、今度は機械人形もすぐに反応しサスツルギの猛攻を剣で受け防いでみせる。意思を持たぬ機械、召喚札師(リスナー)がいないとは言えそれなりの判断力はあるらしく、やや鈍重ながらも金庫番として相応しい力を備えていた。 (間一髪……あたしがこんなんじゃ、あっちはもっと大変だろうな)  呼吸を整えつつ数歩後退するアミエラはクロスが苦戦しているのを予測する。たかが機械と思ってはまず倒せぬ力を持つ相手、指示を出し支援する召喚札師(リスナー)がいればそう簡単に倒せないだろう。  そしてその予感は正しく、クロスはルード相手に苦戦を強いられ、激しく消耗し表情こそ無表情を貫くが多量の汗を流していた。 (ちっ……エックスを出すに出せないな……)  灰色の絵柄のケルピーのセレッタのカードを戻しながらクロスは目の前に立ちはだかる巨大な存在を改めて見直す。  ルードの従える数メートルはあろうという巨大な鎧兵の人造仲間(ゲアセス)。漆黒の鎧を纏い手足も巨木の如く太く、重圧感のある見た目通りの力を備えている。  人造仲間(ゲアセス)ガイテイオウ。曰く、自分の最高傑作というルードの切り札たる存在。 「仲間(アセス)を三体破壊(ブレイク)されて尚立ち続けるか……だが召喚するだけの力は残っているのか?」  腕を組み余裕を見せつつも、油断をしないルードの言葉にクロスはプレッシャーを感じつつもすぐに振り切る。  本来ならばエックスを出すつもりだったのだが、ガイテイオウに対してルードが武器としてドラゴンキラーを持たせた事で召喚するにできなくなってしまった。  ドラゴンキラーは文字通り竜殺しの剣。武器としても一級品であり、ドラゴンの一角であるファイアードレイクのエックスには天敵と言える武器。  その為、クロスはダンテライガーのダイン、ケルピーのセレッタと繰り出したが、ことごとく返り討ちにあい現在に至っている。
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